『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の“よく見るといちいちアイテム拾ってない”挙動がいま称賛される。無駄を省く“引き算”の実装いろいろ
任天堂より2017年3月に発売された『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)。そのアイテムを拾った際の挙動について、あるゲーム開発者が称賛。その投稿はX上で話題となっているようだ。
『ブレス オブ ザ ワイルド』は2017年3月にWii UおよびNintendo Switch向けに発売されたシリーズ作品。シリーズのエッセンスを継承しつつも、オープンエアーと呼ばれる広大なフィールドを導入している。自然あふれるハイラルの世界を自由に攻略できる大作として、高い評価を獲得。数々のゲーム・オブ・ザ・イヤーのアワードを総なめするなど、2017年を代表する作品となった。
また本作は続編として、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』がNintendo Switch向けに発売されている。同作も発売後3日間で世界累計販売本数が1000万本を突破するなど大ヒットを記録。「もっとも早く売れた任天堂ゲーム」のギネス世界記録を更新するなどした。
そんな『ブレス オブ ザ ワイルド』について、アイテムを拾う際の挙動を再評価する声がある。今回X上にそうした投稿をおこなったのはゲーム開発者のJakob Wahlberg氏。同氏はゲームデベロッパーWhale Peak Gamesのクリエイティブディレクターとして、ツインスティックシューティング『Go Mecha Ball』を手がけている。
Jakob氏は、『ブレス オブ ザ ワイルド』のアイテムなどを入手した際の動きに言及。ランダムにモーションが再生されるものの、実のところこまかいモーションでアイテムを拾ってはおらず、その場からなんのエフェクトもなく消失しているだけであるとの実装を紹介した。そして「Nintendo is incredibly based when it comes to things like this.(任天堂はこういったことになると、信じられないほど既成概念に囚われない)」と評価した。そしてJakob氏はゲーム開発において、問題を難しく解決しようとしてしまったときには、一度「任天堂がどうやって解決したか」を確認してみるといいだろうと結んだ。
同作では、移動中にアイテムを拾ったり、散らばった多くのアイテムを拾ったりするシーンも多い。そうしたときに、ものを拾うアニメーションがたまに挟まることはあるものの、基本的には動きながらアイテムを集められる。「実はアイテムが消えるだけ」にすることで操作を妨げないそんなシステムが、ゲームのプレイ感向上に役立っている、との意見だろう。
このJakob氏の主張には多くの開発者・ユーザーらから同意の反応が集まっている。本作では崖に捕まったり、水中にいたりするなどさまざまな状況でアイテムを拾う可能性がある。「リンクがいちいち腰を曲げてものを拾うのを待たされたら、ゲーム体験が損なわれていただろう」との声もある。
また、ほかにも同様の“引き算の実装”例が寄せられている。武器の抜刀/納刀モーションも、同様にわかりやすく最小限で実装されているとする声もある。リンクの登攀モーションについても、「一見間抜けにすら見えるがリアルすぎない」ために、どんな場所を登ろうとも同じモーションで機能する、とする意見もある。同作はトゥーンレンダリングを採用し、ややアニメ的なデザインも盛り込んで展開されており、拾う・泳ぐ・登る・斬る・射るなど、どこでも自由な行動をおこなうこととなる。そうした設計を通じて、さまざまな状況にあわせた大量のリアルなアニメーションの実装を避け、レスポンスの早さなどといった、操作感の方が優先されているのだろう。
今回のJakob氏の投稿についてとある別の開発者は「常に任天堂の真似をすればいいわけではない」との旨をコメント。ゲームの内容と自分自身の目標によって、ゲームに実装する要素の取捨選択をおこなっていく必要がある、とした。
ゲームにはさまざまな要素が実装されている。そのため、実装においては思わぬ壁に突き当たってしまうこともあるだろう。それを解決しようと、複雑な実装をしても、ゲームとしてうまく機能しない可能性もある。そうしたとき、ゲーム開発の先人やプロが手がけた作品を参考にすることで、思いもよらぬ解決法が見つかることもあるかもしれない。
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』はWii UおよびNintendo Switch向けに発売中だ。