Steam人気スーパーマーケット経営シムのストア用画像が「AI生成っぽい」として議論巻き起こる。AI生成物かそうじゃないのか
デベロッパーのNokta Gamesは2月21日、『Supermarket Simulator』を早期アクセス配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)で、ゲーム内は日本語表示に対応。本作は高い評価を獲得し、多くのプレイヤーを集めるヒット作となっている。そんな本作について、バナーにAI生成画像を利用しているのではないかとの指摘がおこなわれ、議論を呼んでいる。海外メディアDualShockersが報じている。
『Supermarket Simulator』は一人称視点でプレイする、スーパーマーケット経営シミュレーションゲームだ。プレイヤーは開業したばかりのスーパーの経営者となり、発注やレジ打ち、棚の補充などの業務をおこなう。商品の販売価格は自由に設定が可能。高すぎると客の満足度が下がるため、利益率と満足度のバランスを考えて値段を決めていく。売上が伸びれば店を拡大し、商品の数や種類を増やしていくことができる。また店員を雇い、レジ打ちを任せることも可能。そうしてお店を繁盛させ、立派なスーパーに育てていく。
本作は2月21日にSteamにて早期アクセス配信が開始され、Steamユーザーレビューでは本稿執筆時点で約1万1000件中94%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。忙しいものの覚えることは少なめで、楽しく働けるゲームとして好評を得ている。また同時接続プレイヤー数はピーク時に約4万8000人を記録(SteamDB)。非常に多くのプレイヤーを集めるヒット作となっている。
そんな本作について、バナー画像にAI生成を利用しているようなのに、そのことがストアページに明記されていないのはおかしいのでは、との声がとあるユーザーよりあげられ、議論を呼んでいる。議論の場となったのは、海外掲示板Redditのスレッドである。
Redditユーザーのpantolix氏は、『Supermarket Simulator』のバナー画像はAI生成によるものだと思うと投稿。ゲームの雰囲気とは異なった内装の店内や、レジのディスプレイに大きく表示されている97という無意味な数字、画像の右側にポツンと置かれた椅子などはどれも奇妙であり、人間のアーティストが描いたとは考えにくいと指摘。AI生成で作られた画像を商品広告となるバナーに使うのは「非倫理的」であるとの見解を示している。pantolix氏のスレッドには本稿執筆時点で約350件のコメントが寄せられており、賛否を含んだ議論となっている。
スレッド内ではたしかにAI生成画像のように見えるとしながらも、専属のアーティストがいない小規模なデベロッパーにとってはバナー画像の制作も負担であり、AIを利用するのは理解できるといった意見も見られる。一方でpantolix氏と同じく「非倫理的」との意見も散見され、ゲーム内容を適切に反映していないAI生成画像をバナーに使うのは不誠実だとするユーザーや、アーティストの仕事を奪っている点への批判的な見方もある。仮にバナー画像がAI生成によるものだったとして、それが問題となるのかという点で、意見が分かれているかたちだ。
なお『Supermarket Simulator』のバナー画像がAI生成かどうかについてはユーザーによる推測の域を出ない。また仮にAIにより生成された画像であったとして、訓練用に権利上適切なデータが用いられている可能性がある点にも留意したい。
バナー画像への生成AI使用について問題視された背景には、同作のストアページ上にAI生成コンテンツの使用が記載されていないことも一因としてあるだろう。Steamを運営するValveは、今年1月10日に「Steam上のAIコンテンツについて」と題して公式ニュースを発表。Steamで配信されるゲームのAI生成コンテンツに対して、暫定的な決定を案内している(関連記事)。発表によると、審査にあたってはゲームの開発(事前生成)および実行(ライブ生成)において、どのようにAI生成を利用しているか開発者からValveへの説明が要求され、開示された情報の多くは、ストアページに掲載されることになるという。現在、Steamのストアページには「AI生成コンテンツの開示」という項目が存在しており、生成AIを利用しているゲームでは、AIをどのように使用したか説明がおこなわれている(関連記事)。
Steamの開発者向けの案内では、AIにより事前生成されたコンテンツについては「開発中にAIツールを使用して作成されたあらゆる種類のコンテンツ(アート/コード/サウンドなど)」が含まれるとされる。一方で『Supermarket Simulator』について生成AIの使用が疑われているのはバナー画像であり、Valveがバナー画像をAI生成コンテンツとしての申告やストアページ上での記載が必要な要素と見なしているかどうかは不明だ。
AIにまつわる法整備や権利問題などは、各国で議論の只中にある。先述のValveの発表も暫定的なものであるといい、Steamに提出されるゲームや、AI関連の法律の整備状況から今後も学びながら、必要に応じて方針を再検討する予定だとしている。今後もユーザー・クリエイターの意見や専門的なリサーチを踏まえながら、AI利用についての規約などは整理されていくことだろう。今回議論を呼んでいるバナーにおけるAI生成画像の利用の可否についても、どのような扱いになっていくかは注目される。
『Supermarket Simulator』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。