Nintendo Switch非公式エミュレーター「yuzu」、米任天堂からの訴訟を受けて配布・開発即座に終了。開発元は任天堂の訴えを受け入れ約3億円支払いへ
米任天堂(Nintendo of America)は先日、Nintendo Switchの非公式エミュレーター「yuzu」の開発元Tropic Hazeを提訴し、同エミュレーターの配布などの恒久的な差し止め、および損害賠償を求めていた(関連記事)。現地時間3月4日、Tropic Haze側が米任天堂の訴えを認め、両社が裁判所に対して和解を申立てたことが明らかになった。またTropic Hazeは、「yuzu」およびニンテンドー3DS向け非公式エミュレーター「Citra」の開発・配布などを終了することを発表している。
「yuzu」は、Nintendo Switchの非公式エミュレーターだ。ニンテンドー3DS向け非公式エミュレーター「Citra」の開発チームにより、2018年1月に開発が発表。オープンソースで開発されており、無料配信されていた。なお利用には基本的にゲームソフトから「吸い出し」したゲームデータなどが必要となる。個人使用でのゲーム機のエミュレーション自体は必ずしも違法とは限らないものの、オンライン上ではそうしたゲームデータの違法配布、いわゆる海賊行為(piracy)が常態化している側面はある。
先日、米任天堂はロードアイランド州の合衆国地方裁判所にて「yuzu」の開発元Tropic Hazeを提訴。米任天堂は、「yuzu」が海賊版のプレイおよび不正コピーを防止する技術的保護措置を迂回する点から、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)に違反するソフトウェアであると主張。さらに「yuzu」の開発・配布は著作権侵害を大きく助長しているといった主張から、Tropic Hazeが著作権侵害行為に対する二次的な責任を負うべきであると訴えていた。
今回、米任天堂およびTropic Hazeが同裁判所に対し、米任天堂に有利な条件で合意するjoint motion(共同申立)をおこなったことが明らかになった(資料PDF1・2)。Tropic Hazeは米任天堂に対し240万ドル(約3億610万円)を支払うほか、「yuzu」の提供・開発を中止。またWebサイトyuzu-emu.orgを米任天堂に引き渡すといった条件で両社が合意に至ったことが明かされている。今後裁判所側の判断が下されたのち、今回の和解が決定される見込みだ。
またTropic Hazeは、「yuzu」のXアカウントにて声明を発表。「yuzu」および先述の「Citra」についてのサポートを即刻終了するとしている。Tropic Hazeは常に海賊行為に反対してきたと主張しており、任天堂やそのゲーム機に危害を加えるつもりはなかったとのこと。一方で「yuzu」や「Citra」は広範な海賊行為の温床になっていたことを認めており、(海賊行為にソフトウェアを用いていたユーザーが)特に発売前のゲームコンテンツを流出させ、正規購入者やファンの体験が台無ししていたことを深く失望しているとした。海賊行為はTropic Hazeの意図するものではなくこのような事態が続くことは許されないとして、同社はPatreonやDiscordサーバー、ウェブサイト、GitHubを閉鎖すると伝えた。
訴訟を受けてTropic Hazeは、速やかに米任天堂側の条件を受け入れ、手がけていたエミュレーターの配布や開発を打ち切るかたちとなったようだ。なお今回の共同申立においても、「yuzu」がDMCAに違反するとの訴えは記載。「yuzu」を含め、暗号化キーが統合された場合(when cryptographic keys are integrated)にのみ動作するソフトウェアを無許可で開発・配布する行為は、DMCAが規定する、効果的な技術的保護措置を迂回するデバイスの売買の禁止に違反していると主張されている。こうした主張に、今後裁判所側がどのような判断を下すかも注目される。