『FF』シリーズ作曲家・植松伸夫氏、「もうゲームの楽曲全部は作曲できない」と海外インタビューで明かす

『ファイナルファンタジー』シリーズの作曲家として知られる植松伸夫氏が、海外メディアに対して「ゲーム全体の楽曲を作曲することはもうない」との意向を明かした。別のプロジェクトを主軸に活動していきたい想いがあるそうだ。

『ファイナルファンタジー』シリーズの作曲家として知られる植松伸夫氏が海外メディアに対して「ゲーム全体の楽曲を作曲することはもうない」との意向を明かした。今後はゲームに限らず、バンド活動や別のプロジェクトを主軸に活動していきたい想いがあるそうだ。

植松伸夫氏は、『ファイナルファンタジー』シリーズをはじめさまざまな楽曲を手がけてきた作曲家だ。スクウェア・エニックスにてさまざまなゲーム音楽を担当したのち、2004年に同社を退職。同年にSMILE PLEASEを設立し、2006年からはレーベル「DOG EAR RECORDS」からゲームに限らない音楽出版やコンサートの企画をおこなってきた。また2月29日発売の『ファイナルファンタジーVII リバース』のテーマソング「No Promises to Keep」の作曲を手がけるなど、引き続きゲーム関係の楽曲も手がけている。


今回、ドイツのメディアZEIT ONLINEが植松氏へのインタビューを実施。このなかで同氏は「ich glaube nicht, dass ich noch einmal die Musik für ein ganzes Spiel komponieren werde(ゲーム全体の楽曲を作曲することはもうないと思う)」と明かしている。つまりゲーム中のすべての楽曲をサウンドトラックとして手がけるつもりはもうないのだろう。

植松氏によれば、ゲームのサウンドトラック作曲には「2~3年全力で取り組み続ける」必要があるそうで、現在ではもう体力的にも精神的にも無理だとしている。また今後は同氏の率いるバンドconTIKIでの活動や、オリジナルのファンタジー物語をベースとするオーケストラ作品「Merregnon」などほかのプロジェクトに時間を使っていきたいという。

なお本稿執筆時点で植松氏がゲーム全体のサウンドトラックを最後に担当したのは、2021年にApple Arcade向けにリリースされた『FANTASIAN』だ。同作は『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親である坂口博信氏がスクウェア・エニックス退職後に設立した、ミストウォーカーが手がけたゲーム。坂口氏と植松氏が再びタッグを組んで打ち出された作品だ。植松氏は同作完成時にも、米IGNに向けて『FANTASIAN』がサウンドトラックをすべて制作する最後のゲームになる可能性があり、ゲーム楽曲だけでなく人前で演奏する機会をもっと増やしたいと伝えていた。今回のZEIT ONLINEのインタビューにて、植松氏は改めてそうした活動方針を明確にしたかたちだ。


なお植松氏は2018年9月から同年末まで、健康上の理由などにより心身の休息のために活動を停止していたことがある。過去の海外メディアVGCのインタビューによると、坂口氏は『FANTASIAN』の作曲を打診する際にも、植松氏の当時の状況からサウンドトラックをすべて手がけられるのかに懸念も抱いていたそうだ。とはいえ植松氏はその後活動を再開し、同作のサウンドトラックを完成させたうえで、精力的に活躍を続けている。

今回のZEIT ONLINEのインタビューでもゲームのサウンドトラック制作とは違ったプロジェクトに軸足を移したいという想いが伝えられており、今後もさまざまなかたちで植松氏の新たな楽曲は生み出されていくのだろう。またゲーム全体のサウンドトラックではないかたちで、『ファイナルファンタジーVII リバース』の「No Promises to Keep」のようなゲームへの楽曲提供も続いていくかもしれない。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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