ゲームクリエイター桜井政博氏の「宣伝ではゲームプレイ映像を重視すべき」との発信が世界中で共感されネットミームに。しかし広まりすぎて誤解している人もいる可能性

 
Image Credit: 「桜井政博のゲーム作るには」 on YouTube

ゲームクリエイターの桜井政博氏は1月30日、自身のYouTubeチャンネル上に新たな動画を投稿。このなかで、特に知名度の低い新作ゲームは宣伝において「ゲームプレイ映像を重視すべき」といった同氏の見解が伝えられた。同氏の考えを支持する反応が数多く寄せられ、ネットミームのように話題を博している。

Image Credit: 「桜井政博のゲーム作るには」 on YouTube

桜井政博氏は、『星のカービィ』シリーズや『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズを手がけてきたゲームクリエイターだ。現在は有限会社ソラの代表取締役として活動、直近では『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』のディレクターを務めていた。人気ゲームのプロジェクトを総指揮する立場や自身がゲーマーで数多くのゲームをこなすこともあり、領域にかかわらずゲームや開発の知識に極めて長けている。

そうした背景もあってか同氏は2022年にYouTubeチャンネル「桜井政博のゲーム作るには」を開設し、ゲーム業界や開発に関するさまざまなノウハウ・情報を紹介してきた。ちなみに各動画は【グラフィック】【サウンド】【雑談】といったかたちで、トピックがカテゴリ分けされている。


そんな同チャンネルに1月30日、「ゲーム画面を見せてくれ!」と題した動画が投稿された。カテゴリは【広報】となっており、ゲームを広報する際の注意点に関して桜井氏が自身の見解を説明。ゲームを売り込む際における、実際にゲームが動いているところ(いわゆるゲームプレイ)を確認できるムービーの重要性を示している。桜井氏個人としては(宣伝上で)こうしたムービーがないゲームは、よほどのことがない限りは買わないという。

つづけて桜井氏はこうしたムービーの作り方についても、自身の考える注意点を紹介している。同氏は、オープニングムービーやキャラクター説明を先に流してなかなかゲームプレイ映像に移らない、あるいはゲームプレイ映像を含まないムービーについて「やめましょう」とアドバイス。ムービーの早い段階でゲーム画面を入れた方が、製品の訴求点であるゲーム内容を伝えるのに効果的であるといった考えを述べている。大作・注目のシリーズ作品や著名な制作者の作品など例外はあるものの、特にインディーゲームや初開発作品ではゲームプレイ映像をすぐさま紹介するムービーを用意する方が広報としては効果的なようだ。

こうした桜井氏の考えは多くのユーザーの共感を呼んでいる様子だ。「Movie Footage<Actual Gameplay(ムービー<ゲーム本体)」とのテロップを含むスクリーンショットと共にSNS上で注目を集めネットミームのようになっている。


また桜井氏は上記の考えを特に小規模作品へのアドバイスとして紹介していたものの、ユーザー反応を見るに作品の規模に関わらず新作紹介では「ムービーよりもゲームプレイ映像を見たい」といった意見はあるようだ。ゲームにとって製品の訴求点であるゲームプレイ映像は、ユーザーからしても品質や作風を判断する際の主要な情報源となる。早めに知っておきたいと考えるユーザーも多いのだろう。

なかでも下記のユーザーは先述のスクリーンショットと共にゲームイベント「The Game Awards」を皮肉るポストを投稿。同イベントではさまざまな新作の情報が発表され、なかにはゲームプレイを含まないティザー映像のみでお披露目された作品も複数あった。


ユーザーからすれば、ティザー映像ではなくゲームプレイ映像を用意してから発表してほしいといった見方もあるのかもしれない。近年、特に大規模開発ゲームでは数年の開発期間が設けられることも多い。ティザー映像からゲームプレイのお披露目まで長らく“お預け”を食らう場合がある状況に不満を抱くユーザーも一部いるようだ。

そうしたユーザー反応もある一方で、先述のとおり桜井氏は大作・注目のシリーズ作品や著名な制作者の作品などを例外として挙げていた。もともとの注目度の高さがあれば、ティザー映像でも広報としては成立するという考えだろう。ユーザー目線では早くゲームプレイ映像を知りたい想いもあるかもしれないものの、ネームバリューのある作品では先にティザー映像を公開することで期待を高めるといった戦略も考えられる。上記の画像は同氏の意図から離れた受け取られ方をしている可能性もありそうだ。

*先述のThe Game Awards 2023で披露されたKOJIMA PRODUCTIONSの新作『OD』のティザー映像は、さまざまな考察がおこなわれるなど話題を博している。

ゲームの広報においてどのような映像が使われるかは作品によってまちまち。ゲームプレイ映像がいきなり披露されるか、ティザー映像を公開してから本格的な開発が始まるかは、開発元や経営元の方針によっても変わってくると見られる。

販促においては「徐々に情報を見せていく」という手法は定番化しており、最初からゲームプレイを見せてしまうと、その後PRとして見せるものがなく息切れしてしまうという考えもあるだろう。とはいえ、そうした事情はあくまで企業側のもの。ゲーマーとしては、そのゲームのイメージムービーではなく、そのゲームのゲームプレイを見たいものかもしれない。

いずれにせよゲームプレイ映像はゲームの品質や作風を紹介する手段であり、公開タイミングに関わらず広報上重要な役割を果たすだろう。特に知名度の低い作品においては、ゲームプレイ映像でのアピールは広報上大きな武器となるようだ。


なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。