『GTA』のRockstarと『Alan Wake』のRemedy、会社の「Rのロゴ」をめぐって商標バトル

 

Remedy Entertainment(以下、Remedy)が2023年4月に発表した新たなロゴの商標権に対して、Rockstar Gamesの親会社Take-Two Interactive(以下、Take-Two)が異議を申し立てていたという。海外メディアRespawnFirstなどが報じており、注目を集めている。

『Alan Wake 2』

Remedyは1995年に設立された、フィンランドを本拠地とするゲーム会社だ。Take-Twoがパブリッシングを手がける『Max Payne』シリーズの初期2作品を開発。近年では『Alan Wake』シリーズなどの開発元として知られている。2023年11月に発売された新作『Alan Wake 2』は、ゲームの祭典「The Game Awards 2023」にてBest Game Direction部門などで3冠を獲得するなど、高い評価を受けている。

一方Rockstar Gamesは、Take-Twoの子会社だ。傘下には『Grand Theft Auto』シリーズの開発元Rockstar Northなど、「Rockstar」の名を冠する複数のスタジオを擁している。


今回、海外メディアRespawnFirstのJake氏により、Remedyの新たな「ロゴ」の商標に対して、Take-TwoがEUおよび英国において異議を申し立てていたことが報告され注目を集めている。というのもRemedyでは2023年4月にスタジオのロゴを刷新。それまで用いられていた、弾丸のシルエットをあしらったアルファベットのRの上部分が楕円形の枠内に描かれたロゴを撤廃。ガラスを通して屈折したように見えるRが描かれた新たなロゴが採用された。

左:Remedyの旧ロゴ、右:Remedyの新ロゴ

新たなロゴへの刷新にあたってはRemedyの公式サイトにてその意図も説明されていた。説明によると、旧ロゴはかつての同スタジオの代表作であった『Max Payne』を表していたとのこと。一方で近年では『Control』や『Alan Wake』シリーズなどのさまざまな作品を手がけているほか、スウェーデンのストックホルムに新たな拠点を構えるなどスタジオ規模も拡大。そうしたスタジオの進化をアピールし、最近のRemedyがもつビジョンをよりよく表現できるように、ロゴが刷新されたそうだ。

このロゴについてRemedyは2023年4月にEUにて、同年5月に英国にて商標を出願。これらに対してTake-Two側が異議を申し立てていたことが報告されている。EUでの商標に対しては同年7月に、英国での商標に対しては同年9月に異議が申し立てられていたようだ。EUでの異議は、欧州連合知的財産庁の商標ガイドライン第8条第4項に基づく「Likelihood of confusion(混同の可能性)」「Unfair advantage /detriment to distinctiveness or repute(不当な利益/識別または評判の毀損)」が根拠とされている。なおRemedyは米国でも同年5月に商標を出願していたものの、こちらは「awaiting examination(審査待ち)」となっている。

左:Remedyの新ロゴ、右:Rockstarのロゴ

Remedyの新ロゴは、旧ロゴと違ってアルファベットのRがすべて表現されている。この点がアルファベットのRと星のマークを組み合わせたRockstarのロゴと混同される懸念などから、商標への異義が申し立てられたかたちだろう。

Take-Twoは先述のとおり『Max Payne』シリーズのパブリッシャーを務めており、RemedyはTake-Twoに『Max Payne』の知的財産権を売却している(Screen Rant)。『Max Payne 2』の開発は引き続きRemedyが担当したものの、その続編となる『Max Payne 3』の開発はRockstarの内部スタジオが手がけていた。つまりRemedyとRockstarは『Max Payne』シリーズを手がけた点で共通しており、これもTake-Two側がRemedyの新ロゴに「混同の可能性」から異議を申し立てた原因のひとつかもしれない。

なおRemedyの新ロゴを巡るTake-Twoとの争いは、少なくともEUでは昨年10月に冷却期間(cooling-off period)の延長が実施されており、最大約2年間は“停戦状態”となる見込みだ。先述のとおりRemedyは『Max Payne』シリーズを象徴する旧ロゴから脱却して新ロゴを採用した背景もあるだけに、Remedyの新ロゴの行方は注目されるところだろう。