人気FPS開発者、一部のオープンベータテストは「宣伝だけが目的になっている」と指摘。OBTの難しい立ち位置

『GTFO』の開発元10 Chambersの開発者が「OBTがテスト目的ではなくマーケティング手段として実施される」ケースを批判し、注目を集めている。

主にオンライン要素主体のゲームにおいては、リリース前にオープンベータテスト(以下、OBT)が実施されることがある。基本的には対象者を限定せず、無料で実施されるプレイテストだ。

OBTはリリース前の課題点の洗い出しやサーバー負荷テストなどさまざまな目的が想定される。そんなOBTについて、ある開発者が海外メディアのインタビューにて「OBTがテスト目的ではなくマーケティング手段として実施される」ケースを批判し、注目を集めている。

『GTFO』

マーケティング目的のOBTを批判したのはデベロッパー10 ChambersのSimon Viklund氏だ。10 Chambersは協力プレイ対応ホラーFPS『GTFO』の開発元として知られ、同氏はスタジオの共同設立者でありナラティブディレクターを担当している。同スタジオでは現在新作として、近未来を舞台とする協力プレイ対応強盗FPS『Den of Wolves』を開発中。


テストではなく宣伝で実施されるOBT

そんなViklund氏から、海外メディアMP1stのインタビューにてゲームのOBTに関する興味深い見解が示された。同氏はまず質問に答えるかたちで、『Den of Wolves』にバトルパス/シーズンパスといったマネタイズ導入について可能性はあるものの、現時点では計画されていないことを説明。ゲームの良しあしが分からないうちからユーザーに何かを購入させて、小銭稼ぎ(nickel and dime)をしようとは思わないとのスタジオ方針を示した。


つづけてViklund氏は10 Chambersの方針について、発売1週間前にOBTを実施し、テストで確認された不具合を修正しないままリリースするようなスタジオではないと説明。さらにViklund氏はインタビュイーが示した「OBTは本質的には事前販売に等しい」との意見に賛同し、OBTは宣伝の一環のように用いられている実態があると述べている。OBTには発売直前に幅広いプレイヤーを呼び込んで体験させる、期間限定のデモ版のような側面もあるといった見方だろう。

そしてViklund氏は、テスト目的ではなくマーケティング手段として実施され、発覚した課題がリリースまでに修正されないようなOBTは、消費者を騙すような施策であるとの見解を示した。OBTは「ベータテスト」と掲げられていることもあり、ユーザーからは宣伝ではなく作品の課題点の洗い出しが期待されるところだろう。そうした期待を裏切っている点を問題視した発言と見られる。Viklund氏の一連の発言は別の海外メディアRock Paper Shotgunなどに引用されて報じられ、注目を集めている。


直前のOBTは何のため?

マーケティング手段として想定されているかどうかはともかく「OBTが実施される時期」には開発元の方針が垣間見えるところだろう。OBTの実施時期とゲームのリリースまでの期間は作品によってまちまちだ。Viklund氏の述べたように「発売1週間前」のような短期間では、たしかにテストを通してゲーム内の課題が発覚してもリリースまでの調整は難しいかもしれない。

たとえばAmazon Gamesが手がけ、2021年9月29日にリリースされたオープンワールドMMO『New World』では9月9日から9月12日にかけてOBTを実施。テスト期間が短期間である点などからマーケティング目的ではないかといった指摘も投じられていた。また過去には『Call of Duty』シリーズや『Battlefield』シリーズ、『Fallout 76』といった作品に向けて同様の指摘をおこなうユーザーも見られた。


一方で上記のような作品を含め、OBTが実施される作品ではオンライン要素を主体とする場合も多い。かならずしもマーケティングやゲーム内の課題の修正だけが目的ではなく、サーバーテストを主な目的とするケースはあるだろう。昨年2023年9月21日にリリースされた『PAYDAY 3』では、9月8日から9月11日にかけてOBT(open beta)が実施。主にサーバー負荷をテストするためであるとの目的が明かされていた

また開発元によってはOBTとしてゲームを無料開放して多数のプレイヤーを呼び込むことで、リリース時点での課題を早期に見極めようとする狙いもあるかもしれない。リリース時に修正が間に合わなくとも、フィードバックをリリース時点からの開発に利用する目的でOBTが実施される場合も考えられる。

OBTにはさまざまな目的が想定され、開発元によって思惑は違うだろう。マーケティングも含めて、複数の目的で実施される場合もあるかもしれない。いずれにせよ、Viklund氏による「テストではなくマーケティング手段として用いられるケース」への指摘は興味深い。業界人目線で「テストとは名ばかりのマーケティング手段としてOBTを実施している」ように見える作品も実態としてあるのかもしれない。

『Den of Wolves』はPC(Steam)およびコンソール向けに開発中だ。『GTFO』はPC(Steam)向けに配信中。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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