『ポケモンSV』DLCの新技「はやてがえし」を使ったじゃんけん風大会盛りあがる。エビワラーで三種の技を使い分け、“択”を制する

任天堂は12月14日、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の大型DLC「ゼロの秘宝」の「後編・藍の円盤」を配信開始した。新技「はやてがえし」を使った遊びが非公式大会として開催され、注目を集めている。

任天堂は12月14日、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、ポケモンSV)の大型DLC「ゼロの秘宝」の「後編・藍の円盤」を配信開始した。同DLCにて追加された新技「はやてがえし」を使った遊びが非公式大会として開催され、注目を集めている。


「後編・藍の円盤」は『ポケモンSV』のDLCだ。舞台はアカデミーの姉妹校であるブルーベリー学園。主人公はアカデミーからブルーベリー学園に交換留学に行き、そこでは現地の学生と交流を深めたり、パルデア地方には居なかったポケモンと出会ったりすることとなる。

また「後編・藍の円盤」では新たな技も登場。相手のHPが多いほど威力の上がる鋼タイプ技「ハードプレス」や、一定の間、相手のポケモンが回復できない状態にする「サイコノイズ」など、それぞれ特徴的な効果を持った技が追加された。「はやてがえし」もそうした新技のひとつだ。

「はやてがえし」は格闘タイプの技だ。威力65・命中100と平凡ながら、独特なのはその効果だ。この技は、相手が「でんこうせっか」や「マッハパンチ」といった先制技を繰り出そうとすると、さらに先手を取って攻撃し、相手を怯ませる効果がある。一方で相手の技が先制技でなかったり、そもそも攻撃技ではなかったりした場合は失敗してしまう。この「はやてがえし」の仕様を利用した変わった遊びがユーザーの休歌氏により生み出され、さらにその非公式大会が開催されたことが注目を集めているようだ。


国内外で注目される「P1グランプリ」

大会の名は「同族王者ヤバキング!P1グランプリ」(以下、P1グランプリ)だ。休歌氏によって開催されたこのイベントは、すべての出場者が、同じ能力値に調整され、同じ技を覚えたエビワラー1体のみを用いる。エビワラー同士、つまり同族内での王者を決める戦いというわけだ。能力値と技構成が同じため、勝敗を決める要素は主に技選択のみとなる。

本大会のエビワラーが覚えてよい技は「きあいパンチ」・「マッハパンチ」・「はやてがえし」の3つのみ。このうちきあいパンチは威力150の強力な技だが、技の行動順が遅く設定されており、発動前に攻撃を受けると失敗する。そのため本大会においてはマッハパンチに一方的にやられてしまう。しかしそのマッハパンチは先制技のため、先述のとおりはやてがえしに封殺される。そしてはやてがえしは、相手がきあいパンチを選択していると、先制技ではないため封殺に失敗するどころか大ダメージを受けて戦闘不能になってしまう。このように、3種の技を通じてじゃんけんのような三すくみが成立しているのだ。


この大会の様子を収めた投稿がユーザーの注目を集めている。話題となっている投稿は、参加者のたこやき氏視点の動画。互いにマッハパンチを叩きこむ熾烈な“あいこ”が繰り広げられているが、残り一撃で終わろうとしているところで、たこやき氏はきあいパンチを選択した。マッハパンチが選ばれると読んではやてがえしを選択した相手の技は失敗し、見事にたこやき氏のエビワラーのきあいパンチが決まった。

さらに動画は海外ユーザーの目にも留まったようだ。海外ユーザーによるたこやき氏の投稿の引用は、本稿執筆時点で4000回以上リポストされ、2.7万件のいいねを集めている。たこやき氏の投稿そのものも同程度のリポストといいねを集めており、国内外のポケモンユーザーから注目を集めているようだ。


『ポケモン』シリーズの対人戦では行動の選択肢、いわゆる「択」が勝負の分かれ目となることも多い。休歌氏のブログを見るに、最適な択を選びぬき試合を制したときの快感を追求したことが「同族王者ヤバキング!」誕生の理由のひとつとしてあるようだ。上記の海外ユーザーも「(このルールで)みんなと遊んでみたい」とコメントしており、「択」を通して勝った際の楽しさは世界共通のポケモン対戦の醍醐味といえるかもしれない。


きっかけは“マイナーなポケモン”にスポットを当てたい想い

大会の主催者である休歌氏は「P1グランプリ」の以前に、「同族王者ヤバキング!」の第1回として「ティーカップ杯」を開催していた。こちらの大会での使用ポケモンはエビワラーではなく、ヤバチャのみ。使用可能技は「ふいうち/ギガドレイン/からをやぶる」のみであり、こちらもじゃんけんのような三すくみが発生するルールだ。またそのほかにも同氏は「壺構築品評会」として“他人に勧められた際にうさんくさいと感じる構築”を募るイベントなどを実施。

弊誌は今回、興味深い活動を続ける休歌氏に話を伺うことができたため、「同族王者ヤバキング!」開催の経緯などについて詳細を訊いた。以下にその内容を記載する。

――「同族王者ヤバキング!」第1回としてティーカップ杯を開催されていましたが、出場ポケモンがエビワラーとなった今回のP1グランプリではどのような見どころの変化がありましたか?

休歌氏:
一番の変化は「見栄え」です。第1回のティーカップ杯も今回のP1グランプリも、ただのじゃんけんでありながら手ごとの価値に差がある「じゃんけんグリコ」とよく似たものとなっていて、この価値の違いが同族王者ヤバキングの面白さに直結していると考えています。

同族王者ヤバキングではこの手ごとの勝利価値が大きく変わっていて、たとえばヤバチャは「シャドーボール」や「ふいうち」での攻撃を一度打つだけでは相手のヤバチャを倒すことはできません。そこで「からをやぶる」という変化技を使った駆け引きが生まれ、面白い点になっていると言えます。


また今回大会におけるエビワラーの魅力はなんといっても「きあいパンチ」です!溜めのモーションとエフェクトも特徴的で、今回のルールでは、技が成功した時点でどちらかのポケモンが倒されます。多くのポケモンプレイヤーはこのきあいパンチで相手を倒したいという欲望をもっていると言っても過言ではないでしょう。そのことで、参加者の動画が多くの人に拡散されたのだと思います。

――ヤバチャやエビワラーなど「このポケモンは同族大会に使える!」と思いついたきっかけはありましたか。

休歌氏:
ヤバチャに関しては、X(Twitter)の友人たちと、じゃんけんをベースにしたゲーム『甲虫王者ムシキング』について懐かしんでいたことがきっかけでした。「『ムシキング』したいな!じゃんけんしたいな!」と盛り上がり、じゃんけんができるポケモンを探しました。それで「ふいうち」とそれを回避できる変化技を覚えるポケモンとして、ヤバチャが選ばれたかたちです。


「P1グランプリ」については、まず新技の「はやてがえし」を見たときに「この技でじゃんけんができる!」とビビっときたため最適なポケモンを探していました。ティーカップ杯を踏まえて、相手を一撃で倒せる選択肢が欲しかったため、きあいパンチの一撃で倒れ、はやてがえしと先制技を覚えることを条件にポケモンをピックアップしました。

結果パーモット、ゴウカザル、エビワラーが候補になって、インパクト面からエビワラーになりました……と言いたいところですが、前作『ポケットモンスター ソード・シールド』で友人が捕まえた色違いのエビワラーを活かしたかったという理由があります。「使いどころが難しいポケモンも活躍させられるだろう」という友人の無茶振りにも応えられたと思います。

――一風変わった企画をさまざま打ち出されていますが、アイデアやモチベーションのもとになっているものはありますか。

休歌氏:
僕はポケモン対戦において、あまり注目されてないポケモンにしかできない特技を活かして順位などの結果を出し、注目を浴びる瞬間がとても好きです。できれば全てのポケモンを活躍させたいですし、「弱いポケモンなんていないんだぞ!」と声をあげたいです。


しかし対人戦がおこなわれる本作では、活躍が難しいポケモンはたくさんいます。ただランクバトルという場で輝くことがポケモンの全てではないし、勝ちに繋がらない戦術やギミックを考えつくことに意味がないなんて思ってほしくないです。

とはいえもちろん、勝負事である以上勝ちを目指すべきだと思いますし、勝てない勝負事は面白くないと思います。なので、コンテンツとしてポケモン対戦の中で日の目を見ないポケモンに視線が向けられ注目されることと、プレイヤーが楽しめることを目標に企画立案しています。

――ありがとうございました。

今回国内外で話題になった新技「はやてがえし」を用いたじゃんけん風のルールによるP1グランプリ。そこではユーザー発案のユニークなルールにより通常の対戦とはひと味違いつつも、ポケモン対戦につきものな「択」が重要になる熱い戦いが繰り広げられた。普段見られないエビワラー同士の同族決戦や、駆け引きがシンプルで分かりやすい点なども注目を集めた要因かもしれない。休歌氏はランクマッチなどで日の目を見ないポケモンに焦点を当てた企画を考えているとのことで、今後の活動にも注目していきたい。

ポケットモンスター スカーレットバイオレット』はNintendo Switch向けに発売中。『スカーレット』『バイオレット』に向けてそれぞれ有料追加コンテンツ「ゼロの秘宝」が発売されており、現在「前編・碧の仮面」「後編・藍の円盤」が配信されている。また1月11日には「ゼロの秘宝 番外編」が配信される見込みだ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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