「『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』開発者がインタビューで一本道ゲームを過去のゲーム扱いした」との情報広まる。そういう意図じゃなさそう

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のプロデューサー青沼英二氏のインタビューにおける発言が、海外ユーザー間で物議を醸している。同氏の意図とは違った受け取られ方をしている可能性がありそうだ。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のプロデューサー青沼英二氏のインタビューにおける発言が、海外ユーザー間で物議を醸している。海外メディアにて発言の一部が見出しとして報じられており、同氏の意図とは違った受け取られ方をしている可能性がありそうだ。


『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、ティアーズ オブ ザ キングダム)は、Nintendo Switch向けに発売中のアクションアドベンチャーゲームだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)の続編にあたる。新作においては、ハイラルの地が突如として天変地異に見舞われる。城は宙へと浮かび上がり、空からは謎の遺跡群が降り注ぐ。大地と大空が広がった世界にて、“右手”に力を宿したリンクがハイラルの異変に立ち向かう。


独り歩きする“一本道のゲーム批判”

今回、IGNのインタビューにおける本作のプロデューサー青沼英二氏の発言が誤って解釈され拡散されているのではないかと指摘されている。警鐘を鳴らしたのはXユーザーの@CartridgeGamesだ。同ユーザーはとある動画のサムネイルを紹介しつつ「この動画は絶対に見ない」とコメント。サムネイルでは青沼氏の写真が加工されており、「OPEN=GOOD」「LINEAR=BAD」とのテキストが書き添えられている。つまり青沼氏が「一本道(リニア進行)のゲームは悪い」と考えているような印象をもたせる内容だ。


そのほか海外メディアEurogamerも「『ゼルダの伝説』プロデューサー青沼英二氏は一本道のゲームを“過去のゲーム”と考えている(Zelda producer Eiji Aonuma thinks linear games are “games of the past”)」との見出しで記事を掲載。記事のXポストでは見出しからか「一本道のゲーム全般を批判する発言」と捉えたと見られるユーザーからの反論も寄せられている。またRedditユーザーによって記事を引用したスレッドも投じられておりこちらでも同様の反応は多く見られる。


実際の発言内容

では、青沼氏がおこなった元の発言はどのような内容だったのか。IGNのインタビューでは、まず本作のディレクター藤林秀麿氏が本作の開発方針について「(開発側がその場所に)行かれたくないから(プレイヤーが)行けないようにしておくのはNGであった」と言及。『ティアーズ オブ ザ キングダム』では、終盤に関わる攻略目標であっても、プレイヤーに気づかれないようにしているだけでいつでも達することが可能なように設計されていると明かした。

藤林氏の開発方針を支持するかたちで、青沼氏は「とにかく手順どおりに遊ばないとダメっていうゲームはもう過去のゲーム」と発言。開発コストを考慮する必要はあるものの、どのように攻略しても柔軟に対応できるように考えて作る方針に大賛成だとした。

その後インタビュイーは「昔ながらの一本道のゼルダが恋しいとのファンの意見もある」傍らで、シリーズが自由度の高い方向性に進んでいる点について青沼氏の考えを訊いていた。同氏は『ティアーズ オブ ザ キングダム』においても、誰かに与えられるか自分で見つけ出すかの違いはあれど、結局一本道で攻略が進むことになると説明。過去作のようにあらかじめ一本道が決められている“縛り”に戻ろうとする心理を不思議に思っているようだ。一方で人間の心理としてなくなったものが欲しくなったり、懐かしく思ったりする気持ちもわかるとして、こうした意見に一定の理解を示している。


ニュアンスの違い

“一本道のゲーム”に関連するトピックについて言及されたのは上記の部分であり、インタビューのほかの部分も含めて、青沼氏は「一本道のゲームは過去のゲーム」とは発言していない。また米IGNのインタビュー記事でも「とにかく手順どおりに遊ばないとダメなゲーム」は「games where you need to follow a specific set of steps or complete tasks in a very set order」と翻訳されている。一方「昔ながらの一本道のゼルダ」については「the more traditional linear Zelda」と訳されており、こちらの表現と混同されて広まっているかたちだ。

一方、インタビューにおいて青沼氏は「手順どおりに遊ぶ必要のあるゲーム」と「一本道(リニア進行)のゲーム」というふたつの表現を微妙に違うニュアンスで使い分けていた可能性がある。その場合、同氏が過去のゲームと表現した前者は、攻略手順が完全に定まっており遊びの幅がまったくないといった極端な例として挙げられたのだろう。またこの発言が『ゼルダの伝説』シリーズ作品の進化やそれをもたらした開発方針の文脈で述べられた点にも留意したい。すべてのジャンルのゲームについての言及ではないと見られる。


なお、青沼氏は過去のGame Informerのインタビューで、シリーズ新作開発の際には「それまで確立されてきたものをどのように継承しつつ、新たな要素を取り入れてシリーズを前進させるか」が重視されてきたと説明していた。『ブレス オブ ザ ワイルド』にてリニア進行をやめてオープンエアーというデザインが採用された際にも、“いかにしてシリーズを前進させるか”が念頭にあり、取捨選択があったのだろう。

そうした背景を見ても、青沼氏による手順どおりに遊ぶ必要のあるゲームは過去のゲームといった発言は、特に『ゼルダの伝説』シリーズの過去作品に向けられた表現かもしれない。いずれにせよ表現の使い分けもあるなかで、ニュアンスの違いを考慮せずまとめられ強調されて広まったことが誤解を招いている可能性はありそうだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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