『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』青沼P&藤林D、「ウルトラハンド」は今後のシリーズで一切登場しないと明言。DLCなしと再強調、設定裏話などいろいろ海外メディアに明かす

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』に登場した「ウルトラハンド」は今後のシリーズでは一切登場しない見込みだという。海外メディアに向けて開発者が明かしている。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』(以下、ティアーズ オブ ザ キングダム)に登場した「ウルトラハンド」は今後のシリーズでは一切登場しない見込みだという。海外メディアGame Informerのインタビューにて、ディレクター藤林秀麿氏とプロデューサー青沼英二氏が本作やシリーズ作品についてさまざまな内容を伝えている。


『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、Nintendo Switch向けに発売中のアクションアドベンチャーゲームだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)の続編にあたる。新作においては、ハイラルの地が突如として天変地異に見舞われる。城は宙へと浮かび上がり、空からは謎の遺跡群が降り注ぐ。大地と大空が広がった世界にて、“右手”に力を宿したリンクがハイラルの異変に立ち向かう。

『ティアーズ オブ ザ キングダム』は、5月12日の発売後3日間で世界累計販売本数が1000万本を突破するなど大ヒットを記録。「もっとも早く売れた任天堂ゲーム」のギネス世界記録を更新するに至った。


継続的な盛り上がり

このたび海外メディアGame Informerが本作のディレクター藤林秀麿氏とプロデューサー青沼英二氏にインタビューを実施。開発を率いた両氏により、本作やシリーズ作品に関する興味深い内容が伝えられた。

インタビューではまず、発売から半年以上を経た本作の反響についての印象が両氏に質問された。青沼氏によると、同氏が携わった過去の『ゼルダの伝説』シリーズ作品では発売直後はファンコミュニティが大きな盛り上がりを見せたものの、そうした反応は比較的早めに落ち着く傾向があったという。


一方で『ブレス オブ ザ ワイルド』では発売後もファンの盛り上がりが維持され、オンライン上での交流が続くといった新たな傾向が見られたという。この傾向は『ティアーズ オブ ザ キングダム』でも続いており、思いもつかなかった乗り物やさまざまな作品がWeb上で共有されていることを非常に嬉しく思っているそうだ。

また藤林氏はこれまでの『ゼルダの伝説』シリーズは、比較的コアなゲーマーに親しまれている印象をもっていたという。一方『ティアーズ オブ ザ キングダム』では年齢層を問わず、幅広いユーザーが楽しめるようになったと考えているそうだ。幅広いユーザー層へのアプローチは『ブレス オブ ザ ワイルド』からの目標とのことで、これを達成できた手ごたえを感じているという。


「ウルトラハンド」は本作のみ

なお『ティアーズ オブ ザ キングダム』においては、さまざまなオブジェクトを組み合わせてもの作りが可能な新能力「ウルトラハンド」が登場。青沼氏の述べるように、多彩な作品がSNSなどで共有されている。今回のインタビューにおいても藤林氏は、自由な創造をもたらすウルトラハンドは『ティアーズ オブ ザ キングダム』の体験の核心を担っていると言及。一方で『ゼルダの伝説』シリーズでは毎回新しいものを作りたいという方針があるそうで、ウルトラハンドは今後のシリーズ作品には一切登場しないだろうと明言された。


青沼氏も同様の見解を述べており、ウルトラハンドには開発陣のアイデアがすべて注ぎ込まれたうえで、無駄な要素がすべて削ぎ落されて作られたと説明。作品単位で理想とするかたちで完成されており、今後のシリーズ作品で登場することもないそうだ。また本作に向けたDLCについても、これまでのメディア向けインタビューで語られたように予定されていないとのこと。『ティアーズ オブ ザ キングダム』では、『ブレス オブ ザ ワイルド』で作り上げられた世界における可能性が徹底的に追及されたそうで、両作にとっての終着点であり完成形だと考えているそうだ。


シリーズ間の輪廻転生観

またインタビューでは、『ティアーズ オブ ザ キングダム』には、ガノンドロフを巡る作中での設定やシーンなど各所に『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(以下、時のオカリナ)を彷彿とさせる要素が見られる点についても言及された。いくつかの要素は『時のオカリナ』をもとにセルフオマージュしているのではないか、といったユーザー間の推察について訊かれた青沼氏は「(そうした考えは)初耳だ」と返答。『時のオカリナ』をモチーフにする意図があったわけではないようだ。

藤林氏によると、ファンが独自の理論を考えて、楽しんでくれることについては認識しているとのこと。ファンが作品からどんな理論を思いつくかも視野に入れているものの、ファンの考える理論を先回りして想定しているわけではないという。一方で同氏は、ゼルダとリンクは(シリーズ作品において)「輪廻転生」しているとの考えがあると言及。ゼルダとリンクは異なるシリーズ作品にそれぞれ別の人物として登場するものの、根源にある魂のようなものは受け継がれていると説明している。

そのためシリーズがもつ精神はさまざまなかたちで表れ、過去作品と似たシーンが出てくる可能性はあるそうだ。また藤林氏はファンがそうしたシーンを見つけて注目してくれることを嬉しく思っているそうで、『ゼルダの伝説』シリーズの神話性を作り上げる助けにもなっていると述べている。


そのほかインタビューでは『ティアーズ オブ ザ キングダム』の回想シーンが、シリーズ作品の時系列のどこに位置しているのかについても訊かれた。藤林氏によれば、開発陣の中では比較的明確な時系列が想定されているとのこと。一方で現実の歴史と同じように、ユーザーには作中の証拠や情報から時系列を考えてほしいという。作中の情報から開発陣の考える時系列にたどり着けるかもしれないし、異なる答えを導き出せる可能性もあるとのこと。そして同氏は、それらはいずれも「ありえる」考察であるとしている。

藤林氏と青沼氏により、『ティアーズ オブ ザ キングダム』や『ゼルダの伝説』シリーズに関するさまざまな考えや方針が伝えられた今回のインタビュー。なおシリーズ作品の転機ともなった『時のオカリナ』は11月21日に発売後25周年を迎えた。青沼氏も同作の開発に参加しており、『時のオカリナ』のプロデューサーでありディレクションも兼ねていたという宮本茂氏から『ゼルダの伝説 4つの剣+』にてシリーズの総合プロデューサーの任を託され現在に至る。

青沼氏はインタビューにて、「クリエイターからクリエイターへ、そしてクリエイターからゲームへ」という流れで、新しいものを作り出しつつ伝統はシリーズに継承されてきたと述べている。そうした方針は今後のタイトルにも受け継がれていくと考えているそうだ。ちなみに『時のオカリナ』のリメイクの可能性について青沼氏は「ノーコメント」と伝えている。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はNintendo Switch向けに発売中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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