近年オープンワールドゲームの「窓の内側」は2D画像を立体的に見せている。『Marvel’s スパイダーマン』など採用例増える“だまし絵”風開発テクニック

ゲームにおける建物の窓の内部を、“3Dで構築せずに”立体的に表現できる手法が注目を集めている。『Marvel’s Spider-Man』など、近年のオープンワールドゲームでは採用例が増えているようだ。

ゲームにおける建物の窓の内部を、“3Dで構築せずに”立体的に表現できる手法が注目を集めている。『Marvel’s Spider-Man』など、近年のオープンワールドゲームでは採用例が増えているようだ。

Image Credit: Mat Bratko on YouTube

今回注目を集めているのは「fake interior」あるいは「interior mapping」などと呼ばれる手法だ。interior mappingは主に、ゲーム中の建物の窓などに用いられている。オープンワールドゲームなど、多数の建造物が登場するゲームにおいては、それらが備える窓も無数に存在。それぞれの窓の内側を描く、あるいは誤魔化す必要がある。窓の内側の空間を3Dで構築するとなると途方もない作業が必要になり、また描画する際の負荷も大きくなる。そのため2D画像をそのまま貼り付けたり、あるいはカーテンが閉まった画像を用意したり黒塗りにしたりといった施策が伝統的におこなわれてきた。一方で奥行きのない2D画像や、黒塗りなどで多数の窓を表現すると不自然さも生じていた。

そうしたなかで、近年採用例が増えていると見られるのがinterior mappingだ。この手法でも、窓の内側を2D画像で表現する点は同様。一方で、計算に基づき、視点の角度に応じて2D画像が適切に変形される仕組みになっている。これによって、2D画像を貼り付けた窓を奥行きのある3D空間のように錯覚させることが可能となる。すべてを3Dで構築するよりもはるかに低い負荷で、建物の窓の内側を自然な奥行きある見え方にできるようだ。


interior mapping自体はやや昔の作品でも利用されており、2013年発売の『SimCity』などでも採用されていた。シティビルダーである同作ではさまざまな建物が立ち並ぶことになるため、その窓の内側がinterior mappingにて描かれていたわけだ。また『アサシン クリード 3』や『セインツロウ ザ・サード』『バイオショック インフィニット』でも視点の角度に応じて窓の内側に奥行きがあるように見せる工夫が採用されていることが報告されている。interior mappingあるいは類似の手法は、10年以上前から利用されてきたようだ。

その後、interior mappingは2018年に発売された『Marvel’s Spider-Man』にて、海外を中心に多くのユーザーに周知されることになった。同作はオープンワールドとして構築されたニューヨークが舞台。スパイダーマンとして張り付く高層ビルの無数の窓の内側に、奥行きのある空間が広がっていることが発見され、注目されたかたちだ。


そして同作の続編として先月10月20日に発売された『Marvel’s Spider-Man 2』でも、窓の内側は注目を集めた要素のひとつ。窓の内側に市民がいるなど、より自然に表現されている点が話題を呼んでいた。前作から引き続きinterior mappingが採用されつつ、ほかの手法と組み合わせられてさらに窓の内部の表現がパワーアップしているようだ。

そのほか直近では開発者Galupeno氏が『Ghostwire: Tokyo』や『サイバーパンク2077』にてinterior mappingが利用された窓が存在することを報告。一連の投稿は国内ユーザーからも注目を集めている。近年のオープンワールドゲームで見られる「奥行きのある窓の内側」がどのように実現されたのか気になっていたユーザーも多いのだろう。


なおさまざまな作品で採用されているinterior mappingながら“弱点”もあるようだ。実際に3Dで構築されているわけではなくあくまで2D画像がもとになっているため、画像内の細かな凹凸には立体感をもたせにくいとみられる。近づいて観察されると違和感が生じるからか、ガラスを汚したり曇らせたりといった工夫で誤魔化される場合も見られる。

またinterior mappingで「角部屋の2つの窓」を表現する場合には不自然な描画になってしまう様子。『Ghostwire: Tokyo』や『Marvel’s Spider-Man』では、正面の窓と側面の窓で、中に見える部屋の様子がまったく同じ、あるいはまったく異なっているといった例も見られる。作業にかかる手間からか、正面と側面の窓から見える内部に整合性をもたせる点は妥協されているようである。

ちなみにゲーム開発では、視点の角度によって見え方を変えて立体的に錯覚させる手法がほかにも存在。たとえば2Dテクスチャで描かれた凹凸を、視点の角度に応じてより立体的に表現できる視差マッピングなどが挙げられる。今回注目を集めているinterior mappingもそうした手法と同じく、3Dモデルをわざわざ構築することなく限られたリソースで世界を自然に表現する工夫のひとつといえそうだ。




※The English version of this article is available here.

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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