『Marvel’s Spider-Man 2』では、過去作に引き続きヒロインであるMJを操作するパートが存在。過去作と違ってやたらと戦闘能力が向上している点が注目を集めている。一方で開発者によると、新作でMJパートをなくしてしまうことも選択肢として検討されていたそうだ。なお本稿では『Marvel’s Spider-Man 2』のゲーム中盤に関する情報を記載しているので留意してほしい。
『Marvel’s Spider-Man 2』は、マーベル・コミックのヒーロー「スパイダーマン」が主役のオープンワールドアクションゲームだ。『Marvel’s Spider-Man』および『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』の続編となる。本作でも舞台はニューヨークながら、マップの規模は前作の約2倍に拡大。スパイダーマンの活動範囲はマンハッタンだけでなくブルックリンやクイーンズ地区にも広がっている。また本作では、ピーター・パーカーとマイルズ・モラレスの2人のスパイダーマンが主人公。メインストーリーなどを除くほとんどの場面で、2人を切り替えながら遊ぶことも可能となっている。
本作には前作の登場人物も多数登場。そのなかでMJことメリー・ジェーン・ワトソンがひときわ注目を集めていた。前作に引き続き、本作でもMJを操作するミッションが用意されている。一方で本作のMJは、一般人にしてはやたらと戦闘能力が向上している点がユーザーらを驚かせていたのだ(関連記事)。
米IGNのインタビューにて、本作シニアクリエイティブディレクターBryan Intihar氏が「MJを強化した」意図を明かしている。まず同氏によると、スタジオは『Marvel’s Spider-Man』においてMJのミッションがプレイヤーから好まれていなかったことを認識していたという。同作でのMJは敵を陽動しつつ、見つからずにスタンガンで敵を倒していくステルスプレイが要求された。スパイダーマンを使用する基本のゲームプレイとは大きく異なるほか、攻略法が限定的な点などから一部批判も寄せられていた。
そうした背景もあり、『Marvel’s Spider-Man 2』の開発にあたっては「MJを操作するミッション自体をなくしてしまう」という選択肢も検討されたという。しかし結果として、MJのミッションをより良い体験に仕上げて、プレイヤーにもっと気に入ってもらうという選択が取られることになった。前作とは違うアプローチとして、MJにさらなる能力をもたせ、積極的なプレイが可能なキャラにすることを目指したそうだ。「ちょっと強すぎるキャラになっても気にしない」といった考えもあったという。
なおIntihar氏はインタビューにて、前作や今作でボツになったMJにまつわる要素を紹介。まず『Marvel’s Spider-Man』の開発最初期においては、大怪我を負ったピーターをMJが安全な場所まで運ぶといったミッションが構想されていたという。その際MJがピーターのウェブ・シューターを装着して、近づいてくる敵に放つゲームプレイが考えられていたとのこと。
なおスパイダーマンは作品によって糸を放つ方法がまちまちのキャラだ。ウェブ・シューターを用いる場合もあれば、直接手首から糸を放つ設定の場合もある。Intihar氏は、本作でウェブ・シューターを用いる設定が採用されたのは、MJがウェブ・シューターを使うという開発初期のアイデアの名残だと考えているそうだ。
そのほかIntihar氏は『Marvel’s Spider-Man 2』にてバイクに乗ったMJを操作するシーンが検討されていたものの、ほかのコンテンツ開発を優先してボツになったことも明かしている。前作でのMJパートに不評が寄せられたこともあり、さまざまな側面からMJパートに変化をもたらすことが試みられたようだ。
結果として『Marvel’s Spider-Man 2』では、シルバー・セーブルによる訓練を受けたという設定のもと、格闘技術に長けたMJが誕生したかたち。ステルス主体という前作でのMJパートを踏襲しつつ、敵に見つかっても戦闘で切り抜けることも可能になっている。一般人であるはずのMJがやたらと強化された点は注目を集めているだけでなく、遊びの幅が広がった点には称賛も見られる。批判を受けた要素を削るのではなく“パワーアップ”させるという選択により、MJパートの名誉は挽回されたといえるかもしれない。
『Marvel’s Spider-Man 2』はPS5向けに発売中だ。