ゲーム開発者やユーザーが“泣くなよ、たかがゲームだろ”というフレーズ共に「泣かされたゲームのシーン」を続々紹介しあうムーブメント発生

 

X(旧Twitter)上で、「ゲームの感動シーン」を紹介しあう動きが広まりを見せている。開発者や業界人も含めさまざまなユーザーが参加しており、それぞれの選りすぐりの名場面(あるいは迷場面)が寄せられている。海外メディアGamesRadar+が伝えている。

最近X上で広まりを見せているのは「Don’t cry, it’s just a game(泣くなよ、たかがゲームだろ)」というフレーズだ。ユーザーたちはこのフレーズに続けて、自分が泣かざるを得ないようなゲームのスクリーンショットや映像を添付。前フリとしての“ただのゲーム扱い”を返り討ちにするかのようなかたちで、選りすぐりの感動シーンなどが紹介されている。開発者も含めさまざまなユーザーが参加し、誰かのポストを引用するかたちで数珠つなぎのように展開。多種多様な作品の名場面(あるいは迷場面)が投じられており、本稿ではその一部を見ていこう。

たとえば『The Last of Us』シリーズなどの開発元Naughty Dogで人材コーディネーターを務めるRay Hayse氏は、下記のポストにて『ファイナルファンタジーX』のエンディングを紹介。ティーダとジェクトがタッチを交わすシーンであり、作中で描かれてきた二人の複雑な親子関係も相まって心を打たれる場面だ。ちなみに同氏が引用元にしたユーザーは、『ファイナルファンタジーVIII』のエンディングシーンを紹介している。今回のムーブメントではほかの『ファイナルファンタジー』シリーズからも、名場面が数多く投じられている。各シリーズ作品それぞれの根強い人気がうかがえるだろう。

上記の投稿を引用したのはWildflower Interactiveにてコミュニケーションマネージャーを務めるDinah Bakeer氏。先ほどと打って変わってニワトリが目を引くシュールな画像だ。こちらは『龍が如く0』におけるとあるサブストーリーのシーン。同作主人公の一人・桐生一馬が「コケ太郎」と出会う場面だ。

こちらのサブストーリーで桐生はボーリング店の店員に「ターキーをプレゼントする」と焚きつけられ、ボーリングでターキー(3連続ストライク)に挑むことに。見事ターキーを出した桐生を待ち受けていたのはターキー(七面鳥)ではなく、なぜかニワトリのコケ太郎であった。肉を食べる気満々であった桐生ながら、元気なコケ太郎を前にためらいが生じ、コケ太郎を飼うことを決心。以降は桐生の不動産事業において頼れるマネージャーとして活躍してくれる。給料は30万円である。

どんな想いでこのシーンが挙げられたかは同氏のみが知るところ。泣けるかどうかは別として、記憶に残るシーンなのは間違いないだろう。

そんなDinah氏の投稿を引用したのは、Riot Gamesにて『VALORANT』のQA(品質保証)エンジニアを務めるDrew Wilson氏。同氏が挙げたのは『The Last of Us Part II』における、ジョエルとエリーが博物館を探索するシーンを写したスクリーンショットだ。前作も含め、親子とも相棒とも言い切れない微妙な関係が描かれてきた二人。そんな二人の心の距離が縮まる様子も垣間見えるシーンであり、思い出深い場面として挙げられたのだろう。

なおWilson氏は過去にNaughty DogでQAリードなどを務めており、開発に携わったという点でも思い入れのある作品なのかもしれない。同氏のほかにも同作のシーンを紹介する投稿は散見され、ジョエルとエリーの関係性や退廃的な同作のビジュアルはプレイヤーの胸に残っているようだ。

ほかにもユーザーたちは多種多様なゲームのスクリーンショットや動画などを名場面として投稿。中には本日発売された『Marvel’s Spider-Man 2』の前作『Marvel’s Spider-Man』のワンシーンを挙げるユーザーも見られる。葛藤の末ヒーローとして「大いなる責任」を果たそうとするピーターの姿は、プレイヤーの心に刻まれた様子だ。

そのほか投稿のなかには、あえてスクリーンショットや映像を示さず作品のキーアートを投稿するユーザーも見られる。ネタバレに配慮してか、作品だけを紹介して自分の目で「泣けるシーン」を見てほしいといった配慮かもしれない。あるいは「ファンはこの1枚で、問答無用で泣ける」という意図もあるだろう。

さまざまな作品が紹介されている「Don’t cry, it’s just a game」のムーブメント。ちなみに同様の意味のフランス語フレーズ「Ne pleure pas c’est qu’un jeu」が用いられ、フランス語ユーザー間でも広まりを見せている。こうしたフレーズでユーザーたちがゲームの名場面を紹介する動きは過去にも見られ、SNS上で断続的に続いてきた文化といえそうだ。発端は不明ながら、今回も改めてさまざまなユーザーを巻き込んだ名場面紹介が広まっているかたち。ユーザーに人気の名場面や、開発者たち選りすぐりの感動シーンなどを知る機会となっており、興味のある人は引用ポストを辿ってみるのもいいだろう。