『Portal』で“最速デス”を目指すRTA競争が激化の気配。マグカップに射出され、テストもせずにわずか0.825秒でこの世を去る

Valveが2007年に発売したパズルFPS『Portal』で、ゲーム開始から最速で死亡(デス)をしようとするスピードランがにわかに話題になっている。

Valveが2007年に発売したパズルFPS『Portal』で、ゲーム開始から最速で死亡(デス)をしようとするスピードランがにわかに話題になっている。それには、部屋に存在するあるオブジェクトの力を借りているのだという。


Speedrun(スピードラン)とは、日本ではRTA(リアルタイムアタック)とも呼ばれる、ゲームクリアなどの目標を達成するまでの時間を競いあう競技だ。スピードランの対象となっているゲームやレギュレーション、世界記録ランキングなどはSpeedrun.comで確認することができる。

今回スピードランの対象となった『Portal』は一人称視点で進むアクションパズルゲームだ。プレイヤーは「ポータルガン」を壁や床に撃つことでふたつの地点をワープできる「ポータル」を作り出し、それを活用してステージをクリアすることとなる。ポータルを作って移動したり、物を通したり、シンプルなルールながら頭を捻ってしまう奥深いゲームプレイなどによって高い評価を獲得した。

本作のスピードランカテゴリーとしては、マップ外に出る壁抜けテクニックなども利用しつつ最速でのクリアを目指す「Out of Bounds」のほかに、そうしたバグなどを用いない「Glitchless」といった複数のレギュレーションがある。しかしそれだけに留まらず、ジャンプ禁止や最小のポータル数でのクリアなど、さまざまなレギュレーションが「Portal Category Extensions」としてまとめられている。「Death%」もそのひとつだ。

「Death%」は最速でデスすることを目標とする。「Out of Bounds」など他レギュレーションの走者でもあるFloorbことNick氏が記録した最速タイムの動画では、プレイヤーが動き出せるようになった瞬間に、一目散にラジオの方に駆けだし命を散らしている様子が確認できる。デスまでの時間は、なんと0.825秒だ。

どうしてプレイヤーの命が奪われてしまうのか。Nick氏と同じくDeath%の記録を残しているPr0tal氏と、本作のスピードランコミュニティーが推察したところ、部屋に置いてあるカップの上に乗ると、どういったわけか加速してしまい、ラジオに激突して死んでしまったのではないか、との結論に落ち着いたようだ。カップによる加速の原理はわかっていないが、このことによって1秒未満でのデスを達成している。

このカップによる加速が発見されたのは1年前で、それ以前にもDeath%は走られていた。以前は、プレイヤーの入っていたカプセルにクリップボードやラジオを固定し、挟まれるようにしてデスをしたり、ラジオを頭上に置き激突するようにしてデスを狙ったりする手法が用いられ、最速記録は1.32だった。しかしカップでの加速を利用したデスが発見されて以降はその記録を約0.5秒も縮め、0.885秒と大幅に更新したのだ。いずれにせよ、物理演算のいわゆる“荒ぶり”を上手に使った死に方と見られる。

Death%はここ数日で記録の更新が複数回おこなわれ、にわかに競争の激化をみせることとなった。Pr0tal氏が今年10月7日に、1年前の記録を0.05秒更新し世界記録を0.855秒とした。この更新を皮切りに、10月10日にはNick氏が、10月11日にはKorgus氏がそれぞれ0.840秒と続いた。そして同日、ふたたび Nick氏によってタイムは塗り替えられ、0.825秒という世界記録が残されたわけだ。

Image Credit: Nick on YouTube


ちなみにこのDeath%については、レベル(マップ)ごとの最速デスを競うレギュレーションも存在している。いったい何が走者をデスへと誘うのかは不明ながら、ありとあらゆる場所で最速デスを目指す奇妙な光景を見ることができる。

謎のレギュレーションでの記録更新によって盛り上がる『Portal』。今後もこの記録更新合戦が続いていくのか、見どころでもあるだろう。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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