農業ゲーム『牧場物語』をきっかけに、酪農家になった青年現る。ゲーム内の牛をさわるうちに、本当にさわりたくなった

 

牧場物語』シリーズ開発元のマーベラスは10月10日、牧場物語シリーズ公式ブログにて、北海道別海町にある「道東あさひ農業協同組合」から、感謝状が送られたという旨の投稿を行った。


この感謝状は、『牧場物語』シリーズのプレイ体験をきっかけに、酪農家に新規就農した青年がいたという感謝の気持ちを込めて、道東あさひ農業協同組合から、マーベラスに送られたもの。

『牧場物語』シリーズは、マーベラスが手がける農業ゲームである。できることは作品によって異なるが、プレイヤーは酪農や農業をしながら1日を過ごす。冒険や恋愛などの楽しむことができ、思い思いの生活をできるゲームなのだ。農業や酪農要素はある程度は簡略化されているが、それでも管理は重要である。作物や動物の状態を見たり、状態にあわせ適切に飼育していく。生命や自然の大切さを学べるゲームである。


そんな『牧場物語』シリーズをきっかけ、農家を目指した人が道東あさひ農業協同組合から出たようだ。道東あさひ農業協同組合とは、北海道別海町にある農業組合。北海道別海町は、日本有数の酪農地域として知られており、年間地域生乳生産量は約41万トン、日本の生乳生産量の約5%を占めているという。そんな北海道別海町から、事業主の親族や従業員ではない相手によって事業を引き継ぐ「第三者継承」によって新規就農したのが、和田農場の和田有平さんと和田悠未さんだ。

道東あさひ農業協同組合の会報誌「まきばの風 ぽかぽか」では、『牧場物語』シリーズに影響を受け、新規就農した経緯が語られている。元々和田さんは『牧場物語』のプレイヤーで、遊んでいるうちに本当の牛で牧場をやってみたいという気持ちが強くなっていったという。その後、研究者として農業に携わるということを考え、大学院に進学したものの、幼いときの気持ちが湧き上がり、新規就農を決断。道東あさひ農業協同組合では、第三者継承による新規就農が可能なことや、3年の研修を経て就農できるというところから、故郷ではない北海道別海町で就農したようだ。

牛は『牧場物語』シリーズを象徴する動物だ。ゲームのパッケージに牛がいる作品も見られるほか、公式サイトにも神出鬼没。シリーズとしては長らく登場を続けている伝統とも言える動物。和田さんがどの作品で牛をさわったかは不明であるが、牛はどの作品でもかわいいので、納得である。ちなみに、『牧場物語』の生みの親であるクリエイターの名前は、和田康宏氏である(現在はトイボックス代表取締役)。まったく関係はないが、なんとなく縁を感じるかもしれない。


なお現在、日本の農業従事者は著しく減少しているようだ。農林水産省のデータによれば、2005年には約224万人いた基幹農業従事者は、2020年には約136万人となっており、39%減少している。農業従事者全体でも、65歳以上の従事者が70%、49歳以下の割合が11%と、いわゆる「若者の農業離れ」が進んでいるといえるだろう。しかし、和田牧場のケースのような「第三者継承」による新規就農支援や、助成金による支援もここ近年盛んに行われている模様(minorasu)。そういった取り組みもあってか、2020年の農業従事者全体の20~49歳層は、2015年と比べ、2万2000人増加したようだ。

農林水産省より基幹的農業従事者のデータ


『牧場物語』シリーズは、1作目がリリースされて今年で27年を迎えるご長寿シリーズ。長年牧場ゲームを作り続けた本シリーズをきっかけに農業に対して興味を持ったプレイヤーも少なくはないはず。今後も、ゲームがきっかけでこういった専門職に就いたというケースが増えるかもしれない。





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