個人デベロッパーのalbertnez氏は10月4日、2Dパズルゲーム『Trolley Delayma』をPC(Steam/itch.io)向けに無料で配信開始した。本作には高評価がじわじわと寄せられている。
『Trolley Delayma』は見下ろし型のパズルゲームだ。本作は「トロッコ問題(Trolley Dilemma)」をモチーフとしている。トロッコ問題とは、1967年に哲学者Philippa Ruth Foot氏によって提起された、人命の数や重さについて扱った道徳的な思考実験のひとつだ。トロッコ問題では、制御不能になったトロッコ(電車)が、そのまま進めば前方の5人を轢いてしまうといったトラブルが想定される。この際に当事者はポイント(路線)を切り替えることが可能ながら、その場合でも切り替えた先にいる1人を轢いてしまうとされる。
被害に遭う人数を抑えたければポイントを切り替える必要がある。しかしポイントを切り替えることは間接的にその人に対して手を下したともいえる。そのためポイントを切り替えるか否かで、道徳的なジレンマを抱える問題といえるわけだ。そうした葛藤が人によって異なった判断を生み出したり、またさまざまなケースの想定が派生として考案されたりと、現在でも議論の対象となっている。自動運転車が衝突を避けられない状況などになったとき、AIにどういった判断をさせるか、という“AIの倫理観”などにも関わる問題でもある。
そして本作でも、トロッコ問題と同様に、線路上にはどちらも人がおり、電車が迫ってくる。そのままでは人が轢かれてしまうので、線路のポイントを切り替えるか、そのまま電車を進ませることとなる。本来のトロッコ問題ではそれでも犠牲が出てしまうものの、本作では線路のポイントをいくつも切り替えることが可能。ステージ上には複数の線路が敷かれており、ポイントを切り替え、人のいない線路に誘導することができる。ただし電車は止まってくれないため、人を轢かないためには、脱線する前に誘導する必要がある。そうして電車を線路のループの中に閉じ込め、本来解決できなかったはずのトロッコ問題の犠牲者を0に抑え、むりやり“解決”することを目指すわけだ。
収録ステージは全部で20。なかには多くの人が線路上に同時にいたり、2台同時に電車が迫ってきたりするものもある。手際よく、素早く判断して線路を切り替えることが重要となるだろう。
そんな本作は、本稿執筆時点でSteamストアレビューにおいて39件中97%が高評価とする「好評」ステータスを獲得している。無料で気軽にプレイできる作品ながら、パズルそのものは頭を捻る場面もあり、やりごたえがあるといった評価が見られる。またほかにも、『Baba is You』に影響を受けたとされるグラフィックがかわいらしいと好評だ。シリアスなテーマであるトロッコ問題を緩いアートワークのもとで解決してしまう作風も注目されている様子である。
本作を手がけるalbertnez氏はスイス・チューリッヒ在住の個人デベロッパーだ。同氏はitch.ioにて複数の作品を公開しており、最大4人プレイで1画面の『テトリス』を遊ぶ『Cotris』といった、さまざまなアイデアが活かされた手軽遊べるゲームを手がけている。本作でもalbertnez氏の閃きが活かされたかたちだろう。
『Trolley Delayma』はPC(Steam/itch.io)向けに無料配信中だ。