Steamトップページの「おすすめゲーム表示」欄は、他ストアとは違って売り物・広告じゃない。プレイヤーの興味を狙い撃ちする仕組みとは


Steamの開発者公式サポートグループSteamworks Developmentは10月6日、「Steamストアでのおすすめゲーム表示を選ぶ仕組み」について説明する動画を公開した。Steamストアでは、ゲームをトップページなどにおすすめ表示するために「プレイヤーの関心」が最優先されているという。


Steamのおすすめ表示は売り物じゃない

今回Steamworks Development公式YouTubeチャンネルにて公開された動画では、Valveの事業開発部門所属のErik Peterson氏が出演。Steamストアページにおけるおすすめ表示などの仕組みを解説している。まず同氏によると、Steamではおすすめ表示やストアページトップにゲームを載せる広告枠の販売がおこなわれていないという。

Peterson氏は、広告としてゲーム表示をおこなわないことで、ユーザーに対しより精度の高いおすすめ表示が可能になるとしている。さらに同氏は、販売元は広告費用が必要なく、特集されるための担当者とのやりとりなどの手間も発生しないといったメリットを説明。またそうしたユーザーから見えない裏方のやりとりがなくなることは、自然と透明性にも繋がると述べている。

ではSteamにおいて、トップページやおすすめに表示されるゲームがどういった基準・仕組みで選ばれているのか。Peterson氏によると表示はユーザーの関心に基づいているといい、表示項目によって「Algorithmic visibility」と「Curated featuring」の2つが使い分けられているという。


おすすめ表示を決める2つの分類

「Algorithmic visibility」は、アルゴリズムを用いてそれぞれのユーザーが関心をもつゲームが自動で選定される仕組みだ。たとえばSteamストアのトップページにおける「注目&おすすめ」や「ディスカバリーキュー」「キュレーターのおすすめ」などが該当する。そうした欄に表示されるゲームはそれぞれ、遊んでいるゲームやそのタグ、フォローしているキュレーターなどによって変化。パーソナライズされたおすすめゲームが表示される仕組みとされている。

さらにリストアップ形式で表示される「話題の新作」「売上トップ」についても、表示にアルゴリズムが用いられているという。ここでは個人ではなく地域(リージョン)ごとにタイトルが選定される。たとえば「売上トップ」には、総売上に基づいてゲームやDLCが選定される。その際には地域も考慮され、地域ごとのユーザーの関心の高いゲームが表示される仕組みになっているという。なお、ローカライズの有無も選定基準に関わり、ユーザーが用いている言語に対応言語が含まれるかどうかもおすすめ表示される基準になるそうだ。

Steamの公式チャートページでは各国の売上上位リストを確認可能

一方の「Curated featuring」もユーザーの関心に基づいているものの、自動ではなくValveの判断に基づいて選定される分類のようだ。Steamストアにおいてはトップページ上部のバナーや、「スペシャル」として表示される期間限定セールなどがこれに基づいているという。そして、選ばれたゲームは個別のユーザーではなく、すべてのSteamユーザーに表示される。そのためValveが多くのユーザーにアピールできると強く確信できたタイトルだけが選定されているとのこと。非常に競争率が高く、Steam内のすべてのゲームのうち、売上が上位数百位以内にランクインする必要があるという。


おすすめ選定に関わらない要素

またPeterson氏は動画において「選定基準に関わらない要素」も挙げている。たとえばゲームごとのストアページへのアクセス数は基準に関わらないという。またユーザーレビューステータスも基本的には選定基準とならないとのこと。ただし好評率が40%を下回る場合、ユーザーにおすすめされにくくなる傾向はあるそうだ。

さらにPeterson氏は、ウィッシュリスト数についても“直接は”おすすめ表示には関係ないと説明している。ウィッシュリストに登録したユーザーは、ゲーム発売時やセール時にユーザーにメールを受け取ることになる。そのため売上と密接に繋がる重要な機能ではあるものの、ウィッシュリスト数自体はおすすめ表示の基準とならないそうだ。

ほか、早期アクセスかどうかは一部を除きおすすめ表示には関係しないという。「話題の新作」欄などに表示されないほか、設定で早期アクセスのゲームを除外可能といった例外は存在。そのほかではおすすめ表示の選定基準にはならないとのことだ。

Steamでのおすすめ表示でこうした基準が採用されている理由は、Valveが理念として「ユーザーが気に入るようなゲームを引き合わせること」を目標に掲げているからだそうだ。そのためユーザーから、興味や関心があるゲームが表示されるという信頼を得ることに重点を置いているという。またValveにはユーザーと開発者の双方と長期的に良好な関係性を構築する狙いもあるとのこと。


他社の「おすすめ表示戦略」

では、Steamのほかのプラットフォームではストアページ上のおすすめはどのような基準で選ばれているのか。たとえばニンテンドーeショップにおいては、トップページなどのおすすめ商品表示は広告枠としては販売されていないようだ。一方でおすすめ表示は任天堂側の判断で選ばれていると見られ、自社タイトルを優先的に押し出す傾向も垣間見える。またMicrosoft Storeでも広告枠の販売はないそうで、ユーザーの関心に基づくSteamと類似の仕組みが用いられているようである。ただし同ストアのトップページを見るに自社や傘下スタジオのほか、Xbox Game Passの提供作品などを押し出す方針もうかがえる。

そしてPlayStation Storeにおいては、ホーム画面やストアページ内でのおすすめ表示が広告枠として販売されているほか、セールごとの広告枠も用意されているという。おすすめ表示を商品として打ち出す戦略がとられているようだ。

Steamでは「ユーザーの関心」という選定基準が採用されているというおすすめゲーム表示。ほかのプラットフォームでは、広告枠として自社商品を打ち出したり、販売元向けに売り出したりと、さまざまなかたちで利用されている様子だ。プラットフォームごとに仕様は異なると見られ、各社の理念や戦略が垣間見える点は興味深い。