『VALORANT』のレイナは「ゲームに悪影響を与える」との主張が議論呼ぶ。チームゲームにおける“個人技”キャラの難しい立ち位置
Riot Gamesが手がけるFPSゲーム『VALORANT』に登場するプレイアブルキャラクター「レイナ」。彼女の存在について、海外掲示板Redditで「スマーフを助長し、プレイヤーたちの上達も阻害する“不健全なエージェント”だ」との主張がなされ、議論が巻き起こっている。
『VALORANT』はRiot Gamesが手がける、基本プレイ無料FPSだ。プレイヤーらはエージェントと呼ばれる、それぞれの能力と役割をもったキャラを選択。5人1組のチームで攻守に分かれ、アタッカー側はスパイクと呼ばれるアイテムを指定されたエリアに設置し、一定時間防衛。一方のディフェンダー側はそれを防ぐことを目的とする。
今回、プレイアブルキャラのひとりであるレイナが海外プレイヤーを中心とした議論の的となっている。レイナにはデュエリストの役割が与えられており、スキルを駆使してキルを重ねていくことを得意とする。そのためゲーム内では、先陣を切って目的地にエントリーしたり、クリアリングしたりといった立ち回りを中心におこなうこととなる。
レイナのスキルはキルをトリガーとして発動するものが多い。レイナがキルかアシストを取った際、敵はソウルオーブと呼ばれるものを落とす。それを使うことで、Qスキル「デバウアー」とEスキル「ディスミス」が使用可能になる。デバウアーは体力回復、ディスミスは武器が使えなくなるものの2秒ほど無敵になれる。Cスキル「リーア」は相手の視界を奪うことができ、アルティメット「エンプレス」は本作には珍しい自己強化型のスキルだ。総じて、プレイヤー自身の“撃ち合いの強さ”が活躍度合いに大きく影響する、自己完結型のエージェントとなっているわけだ。
そんなレイナが、Redditで議論を呼んでいる。「Reyna is unhealthy for Valorant(レイナは『VALORANT』にとって不健全だ)」とのタイトルの投稿を発端に、レイナがゲームに悪影響を与えているかどうかとの議論が紛糾しているのだ。スレッド投稿者は、「レイナは個人技によって真価を発揮するタイプのエージェントであるため、個人技の強いプレイヤーによるスマーフ行為を助長している」と主張。さらにキルに偏ったスキル構成から、レイナがいると、有害(Toxic)かつデスマッチのようにキルばかり重視するゲームになることが多い、と意見を述べた。
投稿者は、初中級者が撃ち負けを恐れ、レイナに対してチームメイトと連携して打って出ることさえためらうようになるとしている。また、レイナのスキルは銃撃戦に強く、プレイヤーが不必要なファイトを挑みがちになってしまうと言及。そのためレイナを使う側、使われる側双方のプレイヤーらの上達を阻害する、といった見解を示した。投稿者はそうした考察をもとに、レイナはゲーム全体に悪影響を与える“不健全”なエージェントだと主張しているわけだ。Reddit上ではこの投稿に対して、賛否問わず多くの意見が集まっている。
投稿者に賛同する意見には、スキルについて変更を入れるべきだという声がある。たとえば、レイナのデバウアーは、制限時間つきかつキル(ソウルオーブの出現)が必要とはいえ、発動すれば体力を最大で150まで積めることもある。ピストルラウンドなどで発動できれば、その後に繋がるアドバンテージを獲得でき、試合で大きく優位に立てるだろう。ただキルをトリガーとして発動するため、使おうと思ったタイミングでいつでも使用できるわけではない。こうしたプレイヤーのキル能力に依存する不安定なスキルを、安定して利用できるチームプレイ向けのスキルに変えるべきだとする意見だ。
またリーアは相手の視界を奪うスキルのうち、味方や自分に影響を及ぼさない数少ないスキルであるため、リーアの射出と同時にピークすることが出来る。このことからリーアを“強すぎる”エントリーツールと位置付け、レイナのスキルは“不健全だ”と主張する者もいる。
しかしレイナが不健全であるとの主張には、反対意見も存在している。まずレイナのスキルは、銃撃戦を主体として作られており、エイムや撃ちあいが上手ければ、その分スキルを活用できる機会も増える。レイナはそういった銃撃戦や個人技に向いたエージェントとしての立ち位置を確立しており、それこそがレイナの“特色”だとする意見がある。さらに別のユーザーからは、そもそもレイナによるスマーフをどうにかしたところで、ジェットやレイズを使ったスマーフが増えるだけだ、と本作の対戦環境そのものに問題点を見出す意見などもあった。
こうして「健全である・不健全である」との両意見に晒されているレイナには、本作のサービス開始以来、何度か調整がおこなわれている。デバウアー・ディスミスについては、パッチ2.03にてチャージ数と価格が上昇し、レイナがダメージを与えてから3秒以内に倒された敵がソウルオーブを落とすようになった。このことでピストルラウンドなどのクレジットが少ないラウンドでは、武器かリーア、デバウアー(ディスミス)をすべて揃えることはできなくなり、どれにクレジットを使うか考える必要ができた。しかしアシストでもスキルの発動が可能になったため、ある程度チームプレイができる余地も生まれており、「個人技依存度」を緩和したといえる調整だっただろう。
また2022年10月のパッチ5.07にて、開発陣いわく「利己的なプレイ」ができるツールとしてリーアが調整されている。Riot Gamesが、レイナに対して「個人技中心のエージェント」として調整をおこなっている様子がうかがえる。パッチノート上でも同スキルは「高スキルレベル帯で伸び悩んでいる」と記載されている。同スキルはチームプレイの比重が高まる傾向の上級者帯では活かしにくいとされ、レイナ自体にもプロシーン含めそうした傾向が見られる。
本作の非公式統計サイトBlitzでは、レイナのピック率は総じて高いものの、初中級者帯におけるデュエリストとして支配的なピック率だといえる。一方イモータルやレディアントといった上級者帯ではジェットやレイズに取って代わられている。また本作プロシーンの非公式統計サイトVLR.GGでは、レイナがほとんどピックされていないことがわかる。
開発元の調整の内容からも、チームプレイをさせるエージェントというよりは、個人技に重きを置き、パフォーマンス次第で状況を打開しうるデザインをレイナの“特色”とさせているようにも見受けられる。そうした傾向もあり、たしかに初中級者がプレイするランク帯では特に活躍を目にする機会が多いのだろう。
スマーフの道具にされているという指摘についても、活躍したレイナがすべてスマーフとする根拠はないだろう。ただ、キルをトリガーとするスキル含め“個人技”中心にデザインされていることもあり、スマーフに利用されやすい性質のエージェントなのは確かであり、活躍した場合は極端な結果になりやすいともいえる。なお、Riot Gamesは「自動スマーフ検知システム」を導入するなど、スマーフ対策を継続的におこなっているという(関連記事)。スマーフ対策については、エージェント性能調整ではなく別のレイヤーで取り組まれている問題でもあるだろう。
特徴的なスキルによって“不健全”との議論を巻き起こすまでに至ったレイナ。チームプレイが重要となるゲームにおいて、個人技が色濃く反映されるキャラは、良くも悪くも目立ちやすいということなのだろう。