『Starfield』は「ゲームエンジンのせいで会話シーンが時代遅れ」との主張に『サイバーパンク2077』開発者が反論。そもそも目指す設計の差

『Starfield』と『サイバーパンク2077』の会話シーンを比較し、『Starfield』を批判する投稿が注目を集めている。この主張に対し、『サイバーパンク2077』の開発者が反論する一幕があった。

『Starfield』と『サイバーパンク2077』の会話シーンを比較し、『Starfield』を批判する投稿が注目を集めている。投稿者は『Starfield』の開発に用いられたゲームエンジンに問題があると考えているようだ。一方この主張に対し、『サイバーパンク2077』の開発者が反論する一幕があった。

『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」

『Starfield』は今年9月6日に発売された、宇宙を舞台とするRPGだ。人類が太陽系外に進出した2330年、プレイヤーは希少なアーティファクトを求める宇宙探検家集団コンステレーションの一員として、広大な宇宙の星々を冒険することになる。本作を手がけるのは『The Elder Scrolls』シリーズや『Fallout』シリーズの開発で知られるBethesda Game Studios。ゲームエンジンにはGamebryoをもとにした内製エンジンCreation Engineの改良版Creation Engine 2が用いられている。

一方『サイバーパンク2077』は2020年に発売された、一人称視点のオープンワールドアクションゲームだ。舞台となるのはサイバーウェアと呼ばれる技術による肉体改造が一般的になった近未来。欲望渦巻く都市ナイトシティにて、主人公Vが陰謀に巻き込まれていく様が描かれる。先日9月26日には大型拡張パック「仮初めの自由」が配信された。なお本作の開発はCD PROJEKT RED(以下、CDPR)が手がけ、ゲームエンジンには内製エンジンであるREDengine 4が用いられている。

https://twitter.com/SynthPotato/status/1708481847074672692

そんな両作について、海外メディアRockstarINTELなどでライターを務めるSynth Potato氏が会話シーンの比較をおこない、注目を集めている。まず『サイバーパンク2077』では、基本的に会話シーンにおいてカメラを自由に動かせる。その分キャラが大きく動き回ることもあり、臨場感あふれるシステムとなっている。同氏はたとえばジュディとの会話シーンにおいて、座っているときに貧乏ゆすりするシーンがあると紹介。会話だけでなく細かな動きでも、キャラの置かれた状況や人物像を描き出していると称賛している。

一方でSynth Potato氏は『Starfield』の会話シーンのアニメーションが時代遅れであると批判。特にカメラアングルが「逆戻り」した点を指摘している。というのもBethesda作品では、『Fallout 4』にてキャラを斜め前から捉えるカメラアングルが採用されていた。会話中のキャラの身振りも確認できるため、同作以前のBethesda作品よりも生き生きとした会話シーンが展開された。

しかし『Starfield』では、『Fallout 4』以前のBethesda作品と同じく、一人称視点でキャラの肩から上あたりを正面から捉えるカメラアングルを採用。会話中のキャラの身振りもあまり見られず、『Fallout 4』と比べてシンプルな会話シーンに逆戻りしたかたちだ。またSynth Potato氏は『Starfield』にて、建物に入る際などに頻繁にロード画面が挟まれる点なども課題として指摘。『Starfield』はCreation Engine(2)をゲームエンジンに使い続けているため、そうした設計を余儀なくされているのではないかとの考えを伝えている。

https://twitter.com/PKernaghan/status/1708822633825849547

一方でSynth Potato氏の見解には『サイバーパンク2077』の開発者Patrick K. Mills氏が反論している。Mills氏は『サイバーパンク2077』にてシニアクエストデザイナーを務め、現在CDPRの臨時フランチャイズコンテンツ戦略リーダーを担当している人物だ。

Mills氏によると、両作における会話を含むシネマティックシーンの違いは、主に開発ツールやゲームデザインに起因しているという。ゲームエンジンと関連性はあるものの、ゲームエンジン自体の問題というわけではないとの反論だ。なお同氏は続くポストで、自身がゲームエンジンの専門家ではなく、Bethesda作品のMod制作ツール「Creation Kit」も少ししか利用したことがないと断っている。あくまでクエストデザイナーなどの立場で、開発現場を見てきた経験からの意見と見られる。

Mills氏は『サイバーパンク2077』では、Synth Potato氏が比較映像に用いていた屋上でのジュディとの会話シーンについて言及。同氏はこのシーンのような『サイバーパンク2077』における主要なカットシーンは、すべて何年もかけて作られていると説明している。またキャラが大きな動きを伴うこともあり、それぞれゲーム内の場所や時間にあわせて作られているかもしれない。

『サイバーパンク2077』拡張パック「仮初めの自由」

一方で『Starfield』では、多くの会話シーンがゲーム内時間や場所を問わずに展開される。たとえばプレイヤーは多数のNPCにプロポーズ可能。重要な会話シーンをプレイヤーの好きなタイミングで惑星やロケーションに関わらず見ることができる。そうした会話シーンに『サイバーパンク2077』と同様のカットシーンを設けるためには、あらゆるロケーションにアニメーションを用意する、あるいはあらゆる場所で違和感のないようなアニメーションを用意する必要があり、現実的ではない。

Mills氏は、『Starfield』ではプレイヤーの自由度を高めることに重点が置かれていると考えているそうだ。そのため会話シーンにおいて、ゲーム内の場所や時間の制約を設けないデザインなのだろうといった見方を説明している。あらゆるシチュエーションに対応できるように、通常の会話シーンはあえてシンプルにする開発方針があるのかもしれない。また同氏は、『Starfield』にもコンステレーションと初めて対面するシーンなど、要所には通常の会話よりも手の込んだ演出が用いられているシーンがあることにも言及している。

なおMills氏は、プレイヤーが『Starfield』に映画的な会話シーンを望むのは、各人の自由でありフェアなことであるとも伝えている。一連の反論は、あくまでSynth Potato氏の「Creation Engineが原因なのでゲームエンジンを変えるべき」といった指摘に向けられているようだ。ただし同氏は最後に、ゲームエンジンに関わらず、すべての要素が最高レベルの品質のゲームなど作ることはできないとも綴っている。ゲームが何に重点を置くかによって割かれる開発リソースも変わり、優先度が低くなる要素も出てくるのは避けられないのだろう。

https://twitter.com/PKernaghan/status/1708826543454085412

『Starfield』の発売からまもなくして『サイバーパンク2077』のアップデート・拡張パックが配信されたこともあり、思いがけず遊び比べることになったユーザーも多い様子だ。いずれも自由度の高い大作RPGであり、会話シーンだけでなくエリアがシームレスに繋がっているかどうかなど、さまざまな側面から比較されている状況にある。そうした中で『サイバーパンク2077』の開発者が『Starfield』の設計思想を推察し、『Starfield』に向けられた批判の一部に反論するという珍しい事態が巻き起こったかたちだ。Mills氏の見解を踏まえて改めて両作を遊び比べ、どこが重視され、どこが効率化されたのかを推察してみるのもいいだろう。

『Starfield』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Xbox Series X|S向けに発売中。Xbox/PC Game Pass向けにも提供されている。

『サイバーパンク2077』の大型拡張パック「仮初めの自由」はPC/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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