インディー開発者のAntti Leinonen氏は9月28日、現在開発中のサバイバルFPS『Road to Vostok』で使用しているゲームエンジンを、UnityからGodot Engineに変更すると発表した。
『Road to Vostok』は、文明崩壊後のフィンランドとロシアの国境地帯を舞台にする、シングルプレイのサバイバルFPSだ。実在の土地をモチーフにしたマップが用意され、プレイヤーは点在するシェルターから探索に出かけては、武器やツール、その他各種物資を入手。また、素材をもとにアイテムをクラフトしながらサバイバルをおこなう。
探索するなかでは、アイテムを売買したり武器をメンテナンスしてくれたりする商人と出会えるほか、敵となるNPC勢力も存在。本作は、武器システムにリアルな表現を取り入れていることが特徴のひとつだという。このほか、さまざまなイベントがランダムで発生すする。
本作のマップは国境で物理的に区切られており、Crossingポイントと呼ばれるものを使うことで国境を越えることができる。国境を超えた東側に広がるのはVostokという謎めいたエリア。より貴重な物資を獲得できる一方で、非常に危険で生存難易度が高く、さらにこのエリア内ではパーマデスが適用される。すなわち、Vostok内で死ぬと手持ちのアイテムもシェルターに保管したアイテムもすべて失い、セーブデータも削除されるそうだ。
本作は2022年2月に発表され、そのコンセプトなどから大きな注目を集めた。その後、折に触れて開発の進捗状況が動画にて公開されてきたところ、9月28日公開の動画では「New Beginning」と題し、使用ゲームエンジンをUnityからGodot Engineに変更することが報告された。
開発者のAntti Leinonen氏はフィンランド在住で、同国ではゲーム開発を学べる学校から業界の現場まで、Unityが広く浸透しているという。そのため同氏もUnityを学び、学校で使い方を教え、本作の開発にも使用してきた。しかし、先日Unityに新料金システム「Unity Runtime Fee」が導入されることが発表され、開発者から大きな反発が相次ぎUnityへの信頼が揺らいだ出来事に、思うところがあったそうだ(関連記事)。
Leinonen氏は、Unityのようなソフトウェアにおいては、その開発企業を頂点に、利用者である企業や個人、教育機関などがぶら下がるかたちでエコシステムが構築されており、エコシステムが健全であれば成長を続けるが、そうでなければ破綻してしまうと指摘。そしてUnity Runtime Feeの一件により、新たにゲーム開発を目指す人がUnityのネガティブな情報に触れその利用を避ける流れになれば、エコシステムに長期にわたってダメージが蓄積していくと危惧したとのこと。
Unityエコシステムの将来に不安を覚え、それに対しLeinonen氏個人でできることは何もないとして、『Road to Vostok』のゲームエンジン変更を決断したそうだ。そしてUnreal Engine 5とGodot Engineを試し、後者を選んだとのこと。同氏はGodot Engineの第一印象として、UIやワークフローがUnityに似ており、すぐに使い始めることができたと語っている。
同氏にとって、Godot Engineの3Dレンダリングのパフォーマンスがどうであるのかは、もっとも気になる点だったそうだ。実際同エンジンで、リアルな3Dグラフィックを採用した作品はまだあまり多くない。そこで初期的なテストをおこなったところ、良い意味で驚いたという。『Road to Vostok』のようなゲームを十分扱える性能があるとし、動画内ではテスト映像も公開している。
なおLeinonen氏は、Unityはゲームエンジンとしてはもちろん、そのコミュニティやリソースの面でも優れた製品であるとし、学ぶ価値があるとコメント。本作におけるゲームエンジン変更はあくまで個人的な理由によるものであり、他者に勧めるために動画公開したわけではないとした。
Leinonen氏はすでに本作のUnityからGodot Engineへの移植作業に取りかかっており、現時点ではその準備を進めているところ。実作業は2〜3か月かかるだろうとし、今後毎週進捗を報告するとした。また今年12月以降には、Godot Engine版の体験版を配信する計画も示している。
『Road to Vostok』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信予定。配信時期は未定だ。