“Unity新料金システムの影響”として、新作家づくりゲームが基本プレイ無料配信を断念。配信開始直前の新料金発表で“苦渋の決断”

Hometopia Inc.は9月19日、『Hometopia』の基本プレイ無料での提供予定をとりやめると発表。DLCを本編に組み込むかたちで、19.99ドルで販売すると告知した。

Hometopia Inc.は9月19日、『Hometopia』の基本プレイ無料での提供予定をとりやめると発表。当初予定されていたDLCを本編に組み込むかたちで、19.99ドルで販売すると告知した。同作はPC(Steam)向けに9月27日に早期アクセス配信開始予定。同スタジオは、この決定の背景にはUnityの新料金システム「Unity Runtime Fee」があるといい、苦渋の計画変更であったと説明している。


『Hometopia』は建築シミュレーションゲームだ。本作でプレイヤーは建築家となり、とある街でキャリアをスタートさせる。依頼を受けて、住宅の改修や設計などをこなしていくのだ。そして仕事の報酬で得たお金を用いて、夢のマイホームを自分で建築することもできる。なお本作は最大4人でのオンラインマルチプレイに対応するほか、制限なしに建築を楽しむサンドボックスモードも用意される。

本作は9月27日の早期アクセス配信開始が見込まれており、基本プレイ無料タイトルとして提供予定であった。しかし9月19日、本作公式Xアカウントにて、本作の基本プレイ無料での提供が中止されることが明かされた。当初有料DLCとして予定されていた「Builder’s Pass」が本編に組み込まれるかたちで、同DLCの予定販売価格であった19.99米ドル(約3000円・現在の為替レート)で発売されるという。「Builder’s Pass」所有者向けに提供予定であった、1000種類の新アイテムと特別なバイオームがアップデートにより随時追加されていくそうだ。なお発売記念として15%割引が実施されるとのこと。

発売を間近にしての提供形態変更の背景には、本作のゲームエンジンにUnityが採用されていることがあるそうだ。Unityの開発元Unity Technologiesは9月12日、新たな料金システム「Unity Runtime Fee」を2024年1月1日から導入すると表明。本システムは、Unity利用者が開発したゲームの累計インストール数および過去12か月間の収益を参照して、しきい値を超えていた場合に適用される予定。対象となる作品は同日以降、インストールされるたびに規定の料金の支払いが求められる。

Unity Runtime Feeは発表後、適用基準・運用方法などを巡って批判や混乱が渦巻く結果となった。そして基本プレイ無料作品への影響の大きさも、懸念として挙げられている点のひとつ。基本プレイ無料作品では、基本的にはゲームのインストール後にマネタイズがおこなわれる。そのためインストールして課金せずに遊ぶ、あるいは試しに遊んでみて気に入らなかったのでやめる、といったプレイヤーも発生する。Unity Runtime Feeでは累計インストール数・収益のしきい値を超えるゲームとなった場合、そうしたプレイヤーのインストールに対しても支払いが発生するわけだ。

なおUnity Runtime Feeでは、同一デバイスでは初回のインストールのみに支払いが発生することが明言されているため、いわゆる“リセマラ”により都度開発者に支払いが発生する心配はない。とはいえ通常の販売形態よりもインストール数がかさみやすい基本プレイ無料作品の開発者にとっては、さらに強い懸念を招いている仕組みだろう。


『Hometopia』開発元にとって、同作の早期アクセス配信開始直前に発表されたUnity Runtime Feeの導入は寝耳に水だったという。リリース予定日を遅らせたくないと考えた末、苦渋の決断として同作の基本プレイ無料での提供を断念するかたちがとられたそうだ。また基本プレイ無料提供の中止は、本作に今後数年にわたってサポートを続けるための唯一の方法であったとされている。なお今回の決定に際して、ユーザーから直接質問を受け付けるためのオープンな場として、本作公式Discordサーバー上でAMA(Ask Me Anything・なんでも聞いて)も実施されるそうだ。

Unity Runtime Feeの導入については、Unity側から利用者に事前の案内が一切なかったことが伝えられており、その点も信頼性を欠く行為であると強い批判を受けている。開発元にとって“不可抗力”のように導入が決定されたシステムであり、『Hometopia』開発元のように販売戦略の見直しを余儀なくされる場合もあるわけだ。同スタジオの声明に対しては、基本プレイ無料でなくなったことを残念がる反応がある傍ら、開発元の決定に理解を示す声も散見される。Unity側の決定に振り回されながらも、DLCをゲームに組み込むかたちで予定どおりの早期アクセス配信を開始する決断には多くのユーザーが納得している様子だ。


Unity Runtime Feeの発表を受けて、Unityでの開発を断念するといった変更を選ぶ開発元は続出している。さらにUnityはスマートフォン向けゲームにも幅広く用いられているエンジンであり、今回の『Hometopia』のように販売形態の変更を検討する基本プレイ無料作品は今後も出てくるかもしれない。

『Hometopia』はPC(Steam)向けに9月27日早期アクセス配信開始予定。19.99米ドルで販売される見込みだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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