「数独」の商標権元ニコリ、無断で“Sudoku”を名乗る無関係アプリに注意喚起。名前が浸透したゆえに悪用される悩み

 

株式会社ニコリ(nikoli)は8月29日、「数独/SUDOKU」が同社の登録商標であると強調。「数独」の名称を使用しているアプリ、Webサービスならびにそれらの広告が、同社とは一切関係ないことを注意喚起した。


「数独」とは、海外におけるNumber Place(またはFigure Place)というパズルをもとにしている。Number Placeは9×9マスの正方形に1から9のいずれかの数字を書きこんで解いていくパズルだ。正方形内は3×3マスのブロックに区切られており、基本的なルールにおいては、ブロック内に同じ数字が重複して入ってはいけない。また縦横の各列に同じ数字が重複しないように書きこむ必要もある。

国内外で「数独/SUDOKU」という呼称が親しまれているものの、国内において数独はニコリが登録商標を有するネーミングだ。そのためニコリと関係のない同様のパズルでは、もとのNumber Placeの略称である「ナンプレ」といった名前が用いられている。

一方で今回、ニコリの公式X(旧Twitterアカウント)は同社の無断で数独の名称を使用しているアプリ、Webサービスならびにそれらの広告が見られることを報告。数独は同社の登録商標であることを改めて強調し、同社の書籍やホームページで紹介しているもの以外は同社とは一切関係ないことを注意喚起した。同様のパズルに数独という名称が浸透していることもあり、無断で用いられる例が見られる状況にあるのかもしれない。


なお数独という名称が誕生したのは、株式会社ニコリが手がける雑誌「パズル通信ニコリ」にて、Number Placeが紹介された際のこと。同社の当時の社長である故・鍜治真起氏が国内における名前を考案。1ケタ(シングル)の数字を書きこんでいくルールから「数字は独身に限る」と命名したとされる(朝日新聞)。その略称の「数独」で単行本が打ち出されたほか、のちに海外でも「SUDOKU」として流行。日本に流行が逆輸入されるかたちとなった。そうした経緯もあってか、国内外でNumber Place系統のパズルが数独と呼称・認知されている傾向は見られる。

一方で先述のとおり、国内ではナンプレという呼称も一定の広まりを見せている。ニコリと一切関係がないにもかかわらず、あえて数独という名称が勝手に用いられると誤解を招きかねないだろう。中にはSudokuをタイトル名に含む無関係アプリが「パズルをして脳を放射線から守ろう」といった支離滅裂な主張をおこなう広告を出している事例も報告されている。そうした無関係のアプリやWebサービスが現れている懸念からか、ニコリは数独の登録商標について改めて強調し、注意喚起をおこなっているかたちだろう。


ちなみに、特にパズルやボードゲームにおいては、名称が商標登録されているケースが複数見られる。たとえば「オセロ」については、株式会社メガハウスが専用使用権を所有しており、同社の許諾無く勝手に同商標を使用することはできないとされている(日本オセロ連盟)。そのため同社と関係のない作品などで同様のゲームがテーマになる場合、もとになったボードゲームの名称である「リバーシ」といったネーミングが用いられることも多い。

ほかにも名称が商標登録されているデジタルゲームやアナログゲームは存在。麻雀牌を用いたパズルゲーム『上海』は、ゲームブランド・サンソフトを擁するサン電子株式会社が国内における登録商標およびすべての権利を保有している。また謎解きをしながら脱出や目標達成を目指す体感型イベント「リアル脱出ゲーム」の名称は株式会社SCRAPの登録商標。同社と関係のない類似のイベントは謎解き脱出ゲーム、といった説明がおこなわれていることもある。

そのほか身近なところでいえば「宅急便」はヤマトホールディングス株式会社の登録商標。「ウォシュレット」はTOTO株式会社、「バンドエイド」はジョンソン・エンド・ジョンソンの登録商標である。また「QRコード」という名称は株式会社デンソーウェーブの登録商標である。一方でそうした商品名・登録商標は一般名詞のように用いられることも多く、幅広く浸透した名称といえるだろう。ちなみに国内では、たとえば「正露丸」のようにあまりにも広く浸透したために登録商標が普通名称となったケースもある。

一方で普通名称化した例外を除けば、登録商標の名称を権利元の許可なく商品名などに用いれば、当然ながら商標権侵害となる。「数独」についても、無断で利用しているアプリ・Webサービスには今後しかるべき対応がとられるかもしれない。