FPS『メトロ』シリーズの原作作家、ロシア・モスクワの裁判所より有罪判決を受ける。「ロシア軍についての虚偽を広めた」として懲役8年
ロシア・モスクワの裁判所は8月7日、FPS『メトロ』シリーズ原作小説家のドミトリー・グルホフスキー氏に対し懲役8年の判決を言い渡した。この判決は「SNS上でロシア軍に関する虚偽の情報を故意に広めたため」だとされている。AP通信やTimes of Israel紙が報じている。
ロシア・モスクワの裁判所は以前よりドミトリー・グルホフスキー氏を指名手配犯として逮捕を命じていた。グルホフスキー氏は、モスクワ生まれの作家。17歳にロシアを離れてイスラエルに留学し、ジャーナリストやリポーターとして経験を積み、やがて小説家として才能を開花。核戦争後の荒廃したロシア・モスクワを描く小説「Metro」シリーズを書き上げ大ヒットを記録した。同シリーズはFPSとしてゲーム化され、そちらも人気シリーズとなった。グルホフスキー氏は現在はイスラエルや、フランス、ドイツといったロシア外の国で暮らしているという。
グルホフスキー氏は、イスラエルでの居住歴が長く同国に愛着があると公言しており、ロシアから出たロシア人としての発言を続けている。そうした中で、ロシアがウクライナへ侵攻を始めた時には、各種SNSにてロシア批判を展開。ロシアの侵攻だけでなく、その社会構造やプロパガンダ手法など、国としての歪みを分析し批判し、戦争をやめるべきであると主張し続けてきた。
今回ロシア・モスクワの裁判所は、グルホフスキー氏が保有するSNSアカウントでおこなった「ロシア兵がウクライナにおいて犯罪行為をおこなったとする非難」の投稿が虚偽の情報であるとして、有罪判決を下したという。この判決に対してグルホフスキー氏がおこなった申し立ては検察側より“捏造である”とされて却下。裁判当時のグルホフスキー氏はロシア国外にいたため、懲役8年の有罪判決は欠席裁判を通して下されたそうだ。また、同氏の現在の在所については不明ながら、ロシア国内には居ないものと思われる。
グルホフスキー氏はロシア政府から追及を受け続けている。グルホフスキー氏は、ロシア軍を非難する主張をおこなっていた同国の人気ラッパーOxxxymiron(オキシミロン)氏のほか4人のジャーナリストらとともに、2022年10月の時点でロシア司法省の定める「外国人諜報員」のリストに加えられていたとGuardian紙が報じている。
また、ロシア政府は2023年6月8日より、「誤った情報の流布」を理由として同氏を指名手配していた(関連記事)。こうした一連の動向はロシアにおいて2023年3月4日に成立した「ウクライナ侵攻に関する独自の報道や抗議を非合法化」する法案に関連するものだ。ロシア当局は同法成立以降にロシア国内からのフェイスブックやX(旧:Twitter)へのアクセスを遮断。反戦世論などに対する情報統制の狙いがあったとされている。