『FFCC』の生みの親・河津秋敏氏、20周年記念コメントに「ファンへの謝罪と悔しさ」を綴る。シリーズ新作がない現状を受けて

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』は8月8日に発売から20周年を迎えた。これを受けて同作プロデューサー河津秋敏氏が、新作展開ができていない点への悔しさやファンへの謝罪を綴っている。

ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル』(以下、FFCC)は昨日8月8日、第1作発売から20周年を迎えた。これを受けて、第1作にてプロデューサーを務め、シリーズ作品を総括してきた河津秋敏氏がコメント。新作展開ができていない点への悔しさをにじませ、ファンへの謝罪を綴っている。

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』


『FFCC』はニンテンドーゲームキューブ向けに2003年8月8日に発売された作品だ。『ファイナルファンタジー』(以下、FF)シリーズのエッセンスを備えつつ、マルチプレイに対応するアクションRPGとなっていた。舞台となるのは、住民たちの生活をむしばむ「瘴気」が広がりつつある世界。村を瘴気から防ぐための手段である「ミルラのしずく」を採取すべく、村の人々に見送られ、キャラバンたちは旅に出る。

2020年8月にはPS4/Nintendo Switch向けに本作のリマスター版が発売。現世代機向けの解像度に対応しているほか、リクエストの多かったという最大4人でのオンラインマルチプレイに対応。さらに、クロスプラットフォームプレイに対応し、ハードの垣根を越えたマルチプレイを実現している。追加要素も導入されており、各種族の新たなキャラクターバリエーションや、新たな装備・強化アイテム、本編クリア後にプレイできる「高難度ダンジョン&ボス」も追加。そのほかキャラクターボイスが新規収録されるなど演出面も強化されている。


本作オリジナル版は昨日8月8日に発売後20周年を迎え、『FF』シリーズ公式ポータルサイトには特集記事が掲載。オリジナル版にてアートディレクションを担当した板鼻利幸氏による記念イラストと共に、プロデューサーを務めた河津秋敏氏がコメントを寄せている。河津氏のコメントには、新作を開発できていないことへの悔しさやファンへの謝罪が綴られている。

河津氏はまずコメントにて「新しい『FFCC』を待ち望んでいるファンに応えられていないことが申し訳ない」と謝罪。さらに、やりたいことは沢山あるのに手が回らないといった悔しさを伝えている。さらに同氏は、『FFCC』内のキャラたちに新たに活躍や冒険の場を用意できない点も残念に感じているようだ。そうして河津氏は「旅の日記に新たな1ページが書き加えられる日を、信じて」として、コメントを締めくくっている。記念コメントに際して、プロデューサーが祝福よりも悔しさやファンへの謝罪を述べるのは珍しいケースといえる。

『FF』シリーズは当時、1994年4月発売の『ファイナルファンタジー6』以来長らく任天堂の据え置きハード向けには発売されていなかった。そのため『FFCC』は、任天堂の据え置きハード向けに9年以上ぶりに発売されたタイトルであったわけだ。発売元としてスクウェア・エニックスと任天堂が共に名を連ねていた点でも印象的なタイトルだったといえる。

『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リマスター』


その後『FFCC』シリーズは先述の第1作のリマスター版を除き、これまで計6作品に渡って展開されてきた。河津氏はすべての作品にエグゼクティブプロデューサーなどの立場で関わっており、シリーズには特別な思い入れがあるのだろう。一方現状では、2009年11月発売の『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル クリスタルベアラー』が最後のシリーズ作品となっている。約14年の間、新作の展開がおこなわれていないわけだ。

そうした中で2020年8月に発売された『FFCC』リマスター版は、発売当初マルチプレイ周りのテンポの悪さや進行不能バグといった課題を抱えていた。アップデートによる改善が図られていったものの、初動での躓きを見せていた。その後『FFCC』シリーズにはおもだった新展開は見られず、昨日20周年を迎えたかたちとなった。

河津氏はというと、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』の台頭や近年の『サガ』シリーズのリマスター展開もあり、同シリーズに熱心に携わっていることが垣間見える。そうした背景もあってか、20周年に際して河津氏が寄せたコメントからは、『FFCC』シリーズの新作展開ができていない現状に対する並々ならぬ悔しさがうかがえる。


これまで『FFCC』は、マルチプレイやアクションといった要素を『FF』シリーズに始めて取り入れた第1作を皮切りに、『FF』ナンバリングシリーズとは違ったアプローチや遊びが盛り込まれてきたシリーズであった。また『FFCC』シリーズは主に任天堂の据え置きハード向けに展開されてきた点にも、ナンバリングシリーズとの違いがあるだろう。

ナンバリングシリーズ新作は、6月22日にPS5専用タイトルとして『ファイナルファンタジーXVI』が発売されたばかり。対する任天堂の据え置き機向けの『FF』シリーズ作品として、今後新たな『FFCC』シリーズ作品の開発が検討されていく可能性はあるかもしれない。しかし、河津氏のコメントを見る限り、それらはしばらく先になりそうである。





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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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