『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』にて「水中」観察テクニックが次々登場、考案者にいろいろ訊いた。水中スコープと“潜水艦”が見せる水中世界の広がり

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』にて「水中を主観視点で見ることができる」仕組みや“潜水艦”などがユーザーにより考案されている。弊誌は考案者らに話を訊いた。

ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』にて「水中を主観視点で見ることができる」仕組みがユーザーにより考案された。さらにその仕組みは、別のユーザーによる“潜水艦”づくりに応用されている。


『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』、Nintendo Switch向けに発売中のアクションアドベンチャーゲームだ。『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編である。本作ではリンクの新たな能力「ウルトラハンド」によって、さまざまなものをビルド可能。攻略に役立つメカからなんの役にも立たない装置まで、プレイヤーたちが多彩なもの作りに励んでいる。国内外のSNSやコミュニティで、プレイヤーたちはお互いの創造物を共有しており、多彩な発明が日夜投じられている。

そんな本作にて“水中を主観視点で見る”ことを可能にする「水中スコープ」が発明された。発明者はTwitterユーザー/動画投稿者のゼルダねこ氏。同氏は前作からさまざまな研究・検証を続けてきた人物だ。


ゼルダねこ氏が6月17日に投稿したのは、水中を主観視点で見回すことができる装置。この装置に入り込むとカメラ位置が移動してリンクの頭と被り、疑似的な主観視点で水中を見回せるようだ。本作で普段見ることができない、水中世界の広がりやそこに住む生物たちを観察できる手段となっている。

なお上記の動画では水中スコープの作り方も解説されている。水中スコープは、浮遊石や木の板などで構成されているそうだ。なお浮遊石は重しの役割となっており、起動させる必要はないという。リンクが水面ギリギリにいる状態で天井となる木の板が傾くことで、本来リンクの後ろに設定されたカメラ位置がリンクの頭あたりに移動する仕組みとなっている。さらにゼルダねこ氏はこちらの装置を改良。杭のゾナウギアを付け岸辺に固定可能にして、水の流れがある場所でも水中を見られる装置を作り上げている。


今回の装置は、前作にてゼルダねこ氏が報告していた方法がもとになっているという。前作ではリンクが水中を歩けるようになるグリッチが存在。同氏は「アイスメーカー」でリンクの頭上に氷を作り、水中を主観視点で観察するテクニックを報告していた。水面でリンクの頭の上を障害物で塞ぐという手法が、本作にも応用されたかたちだ。

なお弊誌でゼルダねこ氏に訊いたところ、前作の水中観察テクニックを本作で再現するだけであれば、それほど苦労を要しなかったという。これは今作では道具がたくさんあるためだそうで、先述のYouTube動画の最後のシーンのように、短い時間であれば、リンクが水に沈む瞬間に氷の実を投げるだけで水中観察を再現可能。ただし、継続して水中を見続ける仕組みづくりには困難が伴ったそうだ。というのも、本作では水中で身動きがとれないままだと、たとえがんばりゲージが満タンでも溺れる仕様があるという。それを回避しつつ水中を見られるバランスを実現するために、何度もリンクを溺れさせる羽目になったと同氏は振り返っている。

試行錯誤の末に誕生した水中スコープ。この発明を応用して、潜水艦を作り上げたユーザーも現れている。Twitterユーザーのスモグリ氏は7月23日、水中を主観視点で観察しながら航行可能な乗り物を紹介。水中を見たまま移動できるため、さながら潜水艦の操縦席視点のような映像を楽しめる様子だ。


船体にはジョンサウの祠にある浮力の大きい板が用いられており、そのほか木の板や扇風機、おきあがりこぼしや大きなタイヤなどで構成されている。船体前方には2つのライトとフリザゲイラの大アゴと見られる飾りもある。潜水艦の操縦桿を握ると、大きなタイヤに付いた板がリンクの頭上まで下がり、ゼルダねこ氏の水中スコープと同様の仕組みで疑似主観視点に移行できるようだ。

弊誌からスモグリ氏に訊いたところ、この潜水艦が作成されたきっかけは、ゼルダねこ氏の水中スコープだったとのこと。スモグリ氏は、水中スコープを用いて潜水艦を操縦できるロールプレイを実現できないか検討していたと述べている。そしてスモグリ氏によれば、結果として潜水艦は考案されてから約1時間半で作成されたという。内訳としては、基本となる「移動可能な操縦席付き水中スコープ」の作成に1時間、外観と操縦の安定性の調整に約30分をかけたそうだ。

スモグリ氏は過去のもの作りにおいて「カメラ位置を操縦中のリンクの顔より下かつ一人称視点にする方法」を発見しており、これが今回の潜水艦づくりにも応用されているという。一方で同氏は、リンクの顔を水面に入らないギリギリまで近づける調整にはもっとも苦労したと振り返っている。ゼルダねこ氏と同じく、水中で身動きがとれない状態が続くと問答無用で溺れる仕様を回避すべく、細やかな調整がおこなわれたのだろう。

なおゼルダねこ氏とスモグリ氏は弊誌に対して、自身の発明の中でお気に入りのものをそれぞれ教えてくれた。ゼルダねこ氏は「発明とはちょっと違うかも」と前置きしつつ、ゲルドの大化石を使ったマシンを紹介。こうした素材の活用を発見をしたおかげで「こんなものまで使えるんだ」という気づきを得られたそうだ。同氏の中で、本作のもの作りにおける世界が広がったと述べている。


一方スモグリ氏は、水平飛行から垂直降下、上昇へ切り替え可能な航空機をお気に入りとして挙げている。この機体では飛行中に翼を回転させ、扇風機の推進力によって水平から垂直に進行方向を切り替えることが可能だという。スピード感のある降下から再上昇する様子を撮影できたことからも、愛着が湧いているそうだ。ちなみに推進力を方向転換する方法が似ていることから、「スター・ウォーズ」シリーズに登場するコムルク級ファイター/トランスポート(ガントレット)のような形状で組み立てられたのもお気に入りポイントだという。


前作のグリッチがきっかけで生まれた「水中スコープ」と、それをもとに発明された潜水艦。ユーザー間で共有された発明・テクニックが、さらなる発明を生んだ好例といえるだろう。発明が折り重なり、ゲームシステムとして用意されていない「主観視点の水中移動」を疑似的に実現している点も興味深い。

本作では国内外のプレイヤーがもの作りに励んでおり、時には海を越えてユーザー間の知恵が広まる、あるいは流入する例も見られる。“もの作り”で結びつく国内外のユーザーコミュニティの動向が今後も注目されるところだ。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はNintendo Switch向けに発売中だ。





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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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