『サブノーティカ』開発元スタッフが若年層向けホスピスにゲームソフト寄付を呼びかけ、業界関係者の支援の手がどんどん集まる

 
『サブノーティカ』

『サブノーティカ』開発元スタッフが、オーストラリアの若年層向けホスピスへ、ゲームソフトの寄付をTwitterで呼びかけ。ゲーム開発者たちを中心に多くの反響を集め、ゲーム引き換えコードなどが続々と贈られているようだ。GamesRadar+が報じている。

『サブノーティカ:ビロウゼロ』


今回の出来事の発端は、『サブノーティカ(Subnautica)』シリーズなどを手がけたUnknown Worlds Entertainmentスタッフによる、あるTwitter投稿だった。同スタジオリリースマネージャーのJess Damerst氏は7月10日、自身のTwitterアカウントに投稿。最近ある看護師に会う機会があったといい、その際聞いたという悩みを伝えた。

Damerst氏が会った看護師は、Manly Adolescent and Young Adult Hospice(AYAH)で勤務しているという。AYAHは今年2月、オーストラリアに初めて設立された若年者向けのホスピス。行政によって設立された施設で、治療の見込みがなく余命幾ばくもない、難病に苦しむ15歳から24歳の若者たちに緩和ケアなどを提供している。そのAYAHには患者のためのゲーミングルームが存在し、3台のPS5が設置されているとのこと。しかし、そのPS5には肝心のゲームソフトがほとんどインストールされていないというのだ。ホスピスが提供する娯楽の中でもゲームは大きな割合を占めているが、多忙を極めるホスピスのスタッフはゲームソフトのラインアップまで手が回らないという。

話を聞いたDamerst氏は『サブノーティカ』のコードをAYAHに向けて提供。さらにTwitterにて、「AYAH向けにゲームを提供したい人がいれば、連絡してほしい」と呼びかけた。すると多くのゲーム開発者や業界関係者たちが、続々とこれに反応・協力し始めたのだ。

たとえば、『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』を開発したSanta Monica Studioからは複数の同作キーが提供。同スタジオアニメーションディレクターDavid Gibson氏が寄せたツイートによれば、同スタジオスタッフ一同からの支援として贈られたそうだ。数多くの業界人から協力の手が差し伸べられており、System Era SoftworksのCOOであるVeronica Peshterianu氏は「『ASTRONEER』のコードは使えるかな?」とリプライしている。ほかにも、『Cloudpunk』を開発したION LANDSのトップMarko Dieckmann氏、『Moving Out』開発のSMG Studioなど、人気作を手がけた開発者やスタジオたちが次々と名乗り出て、自社タイトルの提供を打診している。

『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』

『ASTRONEER』


Damerst氏によると、公にされたもののほかにも、一般の人も含めた多くの支援が寄せられており、計25タイトルほどのコードが集まっているという。さらに複数のストリーマーやHumble Gamesから支援があったほか、入院している子どもにゲームを届けている慈善団体Gamers Outreachからも反応があったといい、反響の大きさに驚いているという。

『Cloudpunk』


同氏は後のツイートにて、支援について感謝の意を表明。また、本件を報じたGamesRadar+に向けてコメントを寄せている。そちらによれば、同氏は「Twitterなどもう誰も見ていないだろう」と期待せず投稿したとのこと。しかし、実際には多くの人たちから支援の手が差し伸べられることになった。しかし、受け入れ側のAYAHは多くの支援が寄せられたことに喜びながらも、現在はコードの確認と最適な分配方法を検討している最中で、まだソフトのインストールには至っていないという。3台のPS5に25本分のコードを入力するのは時間と手間のかかる作業であるため、Damerst氏は近日ホスピスに赴いてセットアップの手助けをする予定であると話している。また、現在は1台のPS5に1つのコントローラーしか用意されていないため、家族が集まってローカルマルチプレイを楽しむために複数のコントローラーが提供されることを望んでいるとのこと。これについてはゲームパッドメーカーのScuf Gamingが支援の意思を示しているようだ。

病気の子どもにゲームを届ける慈善団体は先述のGamers OutreachやChild’s Play Charityなどが存在している。ガンの化学療法をおこなっている子どもに対してビデオゲームがもたらす鎮痛効果の研究などもあり、特定の疾病において有意な鎮痛効果を認めるとされている。今回はゲーム業界の著名人たちが、難病と懸命に戦う若者のため立ち上がり、支援をおこなうことになった。彼らが提供されたゲームをプレイすることで、ひとときでも痛みを忘れて楽しい時間を過ごしてくれることを祈るばかりだ。なお、AYAHは一般からの寄付も受け付けている。募金などで協力したい方は、同施設公式サイトを確認してほしい。