Steamにて突然大量のゲームが削除されたとの報告。“低クオリティ・高価格”な不可解ゲームなどが一網打尽か

 

Steamにて日本時間7月7日、突如として大量のゲームが削除されていたようだ。削除されたゲームには「クオリティの水準に対して高価」「Steamストアページ上の説明やイメージ画像が雑」といった共通点がある。海外マーケティング調査機関GameDiscoverCoのデータ・戦略コーディネイターを務めるAlejandro氏が伝えている。


Alejandro氏は7月7日、SteamDBのスクリーンショットと見られる画像を投稿。大量のゲームがSteam上から削除されていることを報告している。また同氏は、こうしたゲームと共に不審な開発者(suspicious dev)のアカウントもSteamから削除されたと述べている。なお弊誌でSteamDBトップページのSteam登録作品の変更履歴を確認したところ、おおむね同様の状態が確認できた。Steamにおけるゲームの大量削除は、日本時間7月7日7時頃におこなわれたようだ。

削除されたゲームのラインナップはさまざまで、具体的な削除理由は不明。Wayback Machineで削除前のSteamストアページを確認すると、たとえば『Fantasy Adventure』は以下画像のようなページだった。スクリーンショットやトレイラーで確認できるグラフィックなどはクオリティが低めな印象だ。また掲載されているゲームのイメージ画像は、なぜか実写の画像にタイトルロゴを貼り付けただけに見えるもの。価格は39.99ドルとなっており、SteamDBによると日本向けには4100円で販売されていたようだ。


Steamストアページ内の表記を見るに本作は早期アクセスとして配信されていた模様。ゲーム内容の説明や早期アクセス配信中の計画なども見られ、ストアページとしての体裁は整っている。一方で先述のイメージ画像下のゲーム説明文には「Pirate Physics(海賊の物理)」なる言葉が掲げられており、不可解な点もある。

そのほかの削除されたゲームもWayback Machineで確認すると、スクリーンショットやトレイラーにおけるグラフィックが低クオリティであったり、イメージ画像があまり関係のなさそうな実写画像にタイトルロゴを載せてあったりといった共通点が見られる。また価格設定が強気なタイトルも多く、『Special training camp』『Sharpshooter』『lianliankan』『5SPOTS』『Kotori』『pata』などは6500円で販売されていたようだ。

ちなみにこの6作品については、Steamで販売されている強気な値段設定かつクオリティが伴わない印象のゲームとしてGame*Sparkが報じていた。上記6作品のうち『pata』を除く5作品が同時に発売されており、『Kotori』を除く5作品は開発者およびパブリッシャー表記がゲーム名と同じだったという。


なおSteamではかつて、配信権をもつパブリッシャーおよび開発者のみがゲームの配信を認められていた。一方でユーザーたちが、配信されてほしいゲームに投票をおこなう「Steam Greenlight」という仕組みも過去には存在。Valveの判断により、投票の集まったゲームには配信権が与えられていた。いずれにせよ、今回のように“怪しいゲーム”がリリースされる可能性が低かったわけだ。

しかし2017年6月にSteam Greenlightは終了。以降、現在に至るまで「Steam Direct」というプロセスが採用されている。Steam Directでは、本人確認・連絡先情報などの確認や、アプリケーション料として100ドルの支払いが必要となる。ただ、そのうえでValveによる審査でゲームが問題ないと判断されれば、誰でも出品が可能だ。新たなプロセスにより、Steamでのゲーム出品の門戸は大きく広がるかたちとなった。

そして過去には、このプロセスが悪用された例もある。2017年9月には、かつて存在したデベロッパーSilicon Echo Studiosが販売していた173タイトルにものぼるゲームが販売停止。同スタジオはSteamにて短期間に大量にゲームをリリースしており、それらはUnityアセットストアの素材を組み合わせただけで制作されていたという。またそれらは、ゲーム内容が似たような作品がほとんどであったことが報告されていた(関連記事)。

*Silicon Echo Studiosが販売していた『Paper Knights』


なお、あくまで仮説とはなるものの、こうした作品がSteamに多数出品される理由のひとつとして考えられるのが「Steamトレーディングカード」だ。当時Silicon Echo Studiosについて伝えた海外メディアを中心に、「Steamトレーディングカードによる利益獲得が目的だった」との推察がおこなわれていたのだ。Steamトレーディングカードは、ゲームタイトルを一定時間遊ぶとドロップされていくデジタルカード。カードはSteam上でコレクションすることができるが、コミュニティマーケットで売買も可能。カードが売れるとSteamウォレットのクレジット残高として追加される。

売買によるクレジットの一部はValveとゲーム販売者にも手数料として行き渡るとされている。流通するカードおよび取引の回数が多ければ、ゲーム販売者はそれだけ儲かることになるわけだ。Silicon Echo Studiosは自社のゲームを低価格のバンドルで販売したり、無料で配信したりしていたことが伝えられている。ゲームを大量にリリースして無料またはバンドル割引などでユーザーを呼び込み、トレーディングカードの流通を増やす狙いがあったのではないかと考えられていたのである。

一方で今回大量削除にされたゲームについては、販売元の目的や削除に至った理由は現時点で不明。いずれにせよ、意図的に低クオリティかつ高価格のゲームが乱造されているとすれば、健全な状況とはいえない。今回の大量削除は、ValveがSteamストアにおける取り締まりを強化していることが垣間見える一件だろう。


なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。