『FF16』は“簡単すぎる”との人気ストリーマーの発言で議論勃発。『エルデンリング』を引き合いに出して

 

とある人気配信者が「『ファイナルファンタジー XVI』(以下、FF16)は簡単すぎる、高難易度設定を初めからプレイアブルにしてほしい」と発言。複数のユーザーに引用されて議論を巻き起こしている。


『FF16』は、『ファイナルファンタジー』(以下、FF)シリーズ最新作。舞台となるのは、クリスタルの加護を受けし大地ヴァリスゼア。この地では、クリスタルの巨塊“マザークリスタル”によってエーテルが供給され、剣と魔法の世界で人々は安息に暮らしていた。ロザリア公国、ザンブレク皇国、ウォールード王国。それぞれの国がマザークリスタルを保有することで均衡が保たれていたが、世界が“黒の一帯”に蝕まれることで、そのバランスが崩れつつあった。主人公となるのは、クライヴ・ロズフィールド。ロザリア公国の第一王子であるクライヴは弟と共にナイトとして鍛錬を続けていたが、悲劇へと巻き込まれていく。

本作では、本格的なアクション要素が導入されている。たとえば、タイミングよく回避をおこなうと発動するプレシジョンドッジ物理攻撃と魔法攻撃をリズムよく交互におこなうことで発動するマジックバーストといったシステムが存在。アクション性の高いシステムが特徴だ。一方で戦闘の難易度が低下する「ストーリーフォーカス」モードや、装備することで戦闘時の各種操作が容易になるサポートアクセサリーといった仕組みも存在。ボタン配置設定も複数用意されており、高いアクセシビリティが備えられている。


『FF16』は簡単すぎる

そんな本作に向けて「難易度を下げる設定項目は豊富ながら、そもそもの難易度が低すぎる」との意見が投じられ、議論を巻き起こしている。発端となったのは、海外人気ストリーマーのMaximilian Dood氏の配信中の発言だ。


Maximilian氏はまず、視聴者のコメントに同意するかたちで「最初から高難易度設定を選べたらいいのに」と言及。続けて本作にはアクセシビリティに関する設定が多数用意されているものの、それらを使わなくても簡単すぎるとの意見を述べている。またそうした難易度調整となっている理由を、開発元がアクションが苦手な『FF』シリーズのファン層も想定しているからではないかと推察。想定されるプレイヤーのアクションゲームの腕前をもっと信用すべきだとの持論を展開している。

なおMaximilian氏はこうした言及の中で『エルデンリング』を引き合いに出している。同作は世界累計出荷本数2000万本を達成しており、売上に見合うだけの“やりがい”がある作品であったと評価している。同作はソウルシリーズなど同スタジオ過去作のゲームプレイを色濃く継承。広大なオープンワールドなど新要素も盛り込まれている傍らで、戦闘は手強い調整であり、特にボス戦闘ではその傾向が顕著であった。高難易度な人気作『エルデンリング』を、同氏が“簡単すぎる”ことを問題点とする『FF16』の対比として挙げたかたちだろう。


高難易度モードは必要か、簡単すぎるかを巡り議論勃発

Maximilian氏の発言はクリップとして引用され、海外Twitter上で注目を集めている。そうした投稿への反応には、同氏の主張を支持する意見も一定数見られる。中でも、高難易度設定を“最初から”実装してほしかったというユーザーは散見される。『FF16』にはクリア後のモードとして、とあるやりこみ要素が存在。ネタバレとなるので詳細を述べるのは控えるが、ようするに高難易度でプレイできるコンテンツである。

ただしこのコンテンツはクリア後に開放されるため、高難易度化したとはいえ、それぞれの敵の攻略法などが分かった状態でのプレイとなる。そのため同コンテンツでさえ物足りなかったという声も見られ、初めからこうしたコンテンツで遊びたかったという想いに拍車をかけているのだろう。


一方で『FF16』は、ソウルシリーズなどのような高難易度ゲームと比べれば簡単ながら、簡単すぎるというほどではないとの反論もある。トルガルとのコンビネーションを踏まえて操作すると、操作は複雑でシチュエーションによっては苦労することもあるだろう。そのほか、アクション性の高いゲームが苦手なユーザーからすればバランスがいいと評価する声もある。回避行動こそお手軽でリスク少なめものの、被弾によってHPがごっそり削られることもある。回復手段も限られているので、ゴリ押しはやや難しい。また「モブハント」にて戦うリスキーモブなどはなかなか強い。1周目でも、コンテンツによって難易度がやや高いものもあるということだ。


『エルデンリング』との比較は適切か否か

さらに、『エルデンリング』と比較して『FF16』に高難易度モードを求めるのは“フェアではない”とする見方もある。下記ユーザーは「そもそも『FF』シリーズは高難易度を売りにしていない」との見解を説明。『FF』シリーズの魅力を、ストーリー、キャラ、音楽、戦闘システム、カットシーンにあると述べている。そうした持ち味を楽しみ続けられるように、クリア自体には苦労しない難易度調整がおこなわれてきたのではないかと同ユーザーは考えているようだ。そうしたシリーズの最新ナンバリング作品として打ち出された『FF16』と『エルデンリング』は、そもそも難易度の比較対象として適切ではないという考えだろう。


なお『エルデンリング』やソウルシリーズなどでは難易度を下げる項目や要素が基本的には存在しない。しかし高難易度の同シリーズでは、低難易度設定を求めるユーザーもいることだろう。今回の『FF16』の議題とは逆のパターンである。これについてソウルシリーズなどの生みの親である宮崎英高氏はThe New Yorkerのインタビューにて、同シリーズが高難易度ゲームであり続ける理由の一端を語っている。

宮崎氏は「特に自分たちのゲームでは難しさが体験に意味を与える」ように設計されているといい、苦難を乗り越えた喜びをひとりでも多くのプレイヤーに味わってほしいとの想いを述べている。また同氏は「今のところこの設計思想を放棄するつもりはない」と説明。高難易度であることは、同氏の携わるゲームのアイデンティティであると述べていた。ゲームによって開発者も違い、設計思想も違う。ゲーム全体の難易度調整や、難易度設定が用意されるかどうかにも開発者の設計思想が表れていることだろう。

つまり、『エルデンリング』と『FF16』は設計思想が違うということだ。『FF16』ではアクセシビリティは高いほかにも、プレイヤーにスムーズに攻略を進めさせようとする試みが随所に見られる。たとえばボス戦の合間にはコンティニューポイントが用意されており、ゲームオーバーになってもボス戦が一定まで進行した状態で、かつ体力や回復アイテムが補充されて再スタート。苦戦している相手を手早く倒して攻略を進められるわけだ。一連の調整を見るに、まず1周目は滞りなく攻略を進めて物語などを楽しんでほしいという狙いもあるかもしれない。


上記ユーザーは今回の議論に際して、「FF16には初めから遊べる高難易度モードが必要だ」という要望と、「ソウルシリーズに低難易度を追加すべきではない」との主張は、同じ層のユーザーが主張しているに違いない、との見解を述べている。つまり“どんなゲームでも高難易度であるべき”と望む層がいるという見方だろう。

難易度はゲームの楽しさを形作る要素のひとつ。難易度を高くするか低くするか、難易度設定を用意するかどうかにも開発者の狙いが表れている部分。難易度だけを上げてゲームが面白くなるとは限らず、むしろ作品本来の持ち味を楽しみにくくなる可能性はありそうだ。特に『FF16』のような、ストーリーを楽しむゲームならばなおさらだろう。

『ファイナルファンタジーXVI』はPS5向けに発売中だ。