ライブ動画配信サービスのTwitchは現地時間6月15日、「パートナープラスプログラム」を発表した。条件を満たして同プログラムに加入した配信者とTwitchとの収益配分率が、12か月間の上限額10万ドル(約1400万円)という条件付きで70:30になる新たな仕組みになるという。
この発表に対して競合サービスであるKick.comが反応。同社は配信者と同プラットフォームとの収益配分率が常に95:5とされていることを改めて強調し、配信者に向けて収益配分率の高さをアピールした。本日6月17日には、人気配信者xQc氏がKick.comとの2年間契約を結び、TwitchからKick.comへと活動プラットフォームを移行したことが伝えられている(The New York Times)。新興のライブ配信サービスKick.comが存在感を見せつけているかたちだ。
Twitchでは、配信者はチャンネルへの視聴者のサブスクライブなどを通じて収益を得ることができる。その収益の配信者とTwitch側との配分率について、同社は50:50を基本としながら、配信者の配信規模によっては70:30として、配信者がより多くの収益を得られるプランを提供してきた。しかし2023年6月1日からは、一律に50:50とするように改められた。
一方このたび発表された「パートナープラスプログラム」は、一定の条件付きで配信者とTwitchとの収益配分率が70:30になる新たな仕組みだ。今年10月1日から開始予定。同プログラムへの参加条件としては、3か月連続で350以上のサブスクライブを維持する必要がある。条件を満たすことで、自動的に翌月から同プログラムに12か月登録されるとのこと。
この12か月間はサブスクライブ数が基準以下に減っても同プログラムへの登録が解消されることはないという。ただし同プログラムにおいて配信者とTwitchとの収益配分率が70:30になるのは、12か月間で上限額10万ドルという条件付きとなっている。
Twitchの「パートナープラスプログラム」発表に対して、競合プラットフォームであるKick.comが反応を示した。Kick.comは昨年12月よりベータ版としてサービス開始されたばかりの新興のライブ配信サービスだ。Kick.comの公式Twitterアカウントは、Twitchの発表を報じる海外メディアDexertoのツイートを引用。「95/5」とだけ書き添えて、Kick.comでの配信者と同プラットフォームとの収益配分率が95:5とされていることを改めて強調した。配信者に向けて同プラットフォームでの収益配分率の高さをアピールしているかたちだ。
また本日6月17日には、xQcことFélix Lengyel氏がKick.comとの2年間契約を結んだことが伝えられた。契約金は約7000万ドル(約100億円)にものぼり、今後のインセンティブで1億ドル(約140億円)になる可能性もあるとされている。同氏はTwitchにて1183万人ものフォロワー数を誇る人気配信者。Twitchにとっては大きな痛手となりそうだ。
Twitchでは先述のとおり、6月1日より収益配分率が50:50 に一律化。個別に70:30の収益配分率契約がおこなわれていたとされる、一部人気配信者にとっては好ましくない変更となった。なおTwitchのマネタイズ責任者Mike Minton氏は昨年10月、収益配分率が50:50 に一律化されることについて説明。70:30の収益配分率については、Twitchの運営のためにかかるコストなどを踏まえて「Twitchでは単純に実現不可能」であると述べていた(関連記事)。
しかし今回、「パートナープラスプログラム」として10月より、条件付きで70:30の収益配分率が“復活”することが発表されたかたち。先述の「実現不可能」であるとの説明を鑑みると、Twitch側としては苦肉の策として打ち出した可能性もありそうだ。
一方でそうした発表に被せるようなかたちで、競合サービスKick.comが配信者に向けて95:5の収益配分率をアピールするなど、存在感を見せつけている。Kick.comでは、今年2月にユーザー数が100万人を突破したことが伝えられており、その勢いがうかがえる。人気配信者xQc氏を抱き込み、今後どのようにライブ配信サービスとしてのシェア拡大をおこなっていくのかも注目されるところだろう。