『ファイナルファンタジー IX』プロ達によるUE5非公式リメイク、“完成動画”公開。めちゃくちゃキレイだが遊べはしない

『ファイナルファンタジー IX(FF9)』の世界を最新技術で再構築する有志制作プロジェクト「Final Fantasy IX: Memoria Project」が完成を迎えたようだ。なお本プロジェクトはプレイアブルなかたちで配信される予定はない。

『ファイナルファンタジー IX』(以下、FF9)の世界を最新技術で再構築する有志制作プロジェクト「Final Fantasy IX: Memoria Project」が完成を迎えたようだ。同プロジェクトの制作チームは6月8日、「Full Gameplay Demo」と題された映像を公開した。なお本プロジェクトはプレイアブルなかたちで配信される予定はない。

Image Credit: Memoria Project on YouTube


『FF9』は、『ファイナルファンタジー』(以下、FF)シリーズナンバリングタイトル9作目にあたる作品。主人公は、盗賊団タンタラスの団員ジタンだ。彼はアレクサンドリア王国の王女ガーネットを誘拐しようとしたところ、偶然にもガーネットもまた国を出ることを望んでいた。奇妙な利害の一致により始まった旅は、黒魔道士のビビ、騎士団長スタイナーといったさまざまなキャラを巻き込みながら展開。彼らはクリスタルをめぐるこの星の壮大な運命に巻き込まれていく。

本作『FF9』は2000年7月にPlayStation向けに発売。PC/PS4/Xbox One/Nintendo SwitchおよびiOS/Androidなどに向けて、一部グラフィックの高解像度化や遊びやすくなる新機能追加がほどこされた移植版が展開されている。SFやスチームパンクな設定が取り入れられた『FF7』『FF8』とは異なり、本作は「原点回帰」を掲げて開発。懐かしく牧歌的なファンタジー色の強い世界観が特徴だ。全世界で累計出荷本数600万本以上を記録しているとされ、グローバルに根強い人気があるタイトルといえる。一方で公式によるリメイクは現状おこなわれていない。

PC(Steam)版『FF9』


「Final Fantasy IX: Memoria Project」(以下、Memoria Project)はそんな本作を最新技術でリメイクする有志によるプロジェクト。同プロジェクトは約3年間にわたって制作されてきたそうで、このたびその集大成となる動画「Full Gameplay Demo」が公開された。なおプロジェクトは最終的にUnreal Engine 5(以下、UE 5)にて開発されていたとのこと。

「Full Gameplay Demo」は『FF9』の冒頭のカットシーンやゲームプレイが再現された内容となっている。カットシーンにおいては、精細に描写されたガーネットの髪の毛などが印象的。また劇場艇プリマビスタが王国を訪れるシーンもあり、UE 5によりリッチに表現された光と影も注目したい。ビビの“光る目”が顔周りを照らしている様子も見られ、最新技術の粋をつくして『FF9』の世界が細部まで描き出されている。

冒頭のカットシーンの後は、ビビが城下町を探索するゲームプレイに移行。オリジナル版の固定の俯瞰カメラとは違って、背中越し視点が採用されている。生き生きとした町の様子を、より臨場感のある視点で見て回る映像となっている。チョコボやモーグリといったおなじみのキャラのほか、アレクサンドリアに住まう多種多様な住民たちが再現。滑らかな最新グラフィックとなっている一方で、オリジナル版の牧歌的な雰囲気も尊重されている印象だ。

Image Credit: Memoria Project on YouTube


ゲームプレイ中の会話シーンはフルボイス、イベントシーンでは視点がカットシーン仕様に切り替わるなど、リッチな演出も用意。また縄跳びやストリートピアノの演奏といった細かな要素も再現され、それぞれに専用のアニメーションが用意されているなど、細部までこだわりを感じる作り込みだ。YouTubeに投稿された動画は本稿執筆時点で3万7000回の視聴回数を記録。ツイートにも2.9万いいね・1.1万RTが寄せられており、懐かしさと新しさを備えたハイクオリティなリメイク動画は大きな注目を集めているようだ。

「Memoria Project」を制作したのはその道のプロたちで構成されたチーム。発起人であるDan Eder氏は3Dキャラクターアーティストとして、さまざまなタイトルに携わってきた人物。同氏は現在、格闘ゲーム『MultiVersus』の開発元Player First Gamesにてリードキャラクターアーティストを務めている。

そのほか3D環境アーティストとして「Memoria Project」に参加しているColin Valek氏は、Sucker Punch Productionsに所属し『ゴースト・オブ・ツシマ』の環境制作に従事した人物。同じく3D環境アーティストとして本プロジェクトに参加するKemal Yaralioglu氏は、Rareにてシニア環境アーティストを務め、『Sea of Thieves』のほか最新タイトル『Everwild』にも携わっているクリエイターだ。

そのほか大手会社に所属していなくとも、実績十分の実力派アーティストがチームに名を連ねている。プロジェクト発足から約3年間わたって制作され、最終的にプロジェクトには50人以上のプロ開発者が携わってきたという。今回公開された動画は公式サイトにて「Memoria Project」の“Full Version”と謳われており、これまでの集大成という位置づけだろう。

Image Credit: Memoria Project on YouTube


なお本プロジェクトではスクウェア・エニックスの著作権を侵害するようなことは一切しないとのポリシーが示されており、プレイアブルなかたちで公開される予定はない。『FF9』を愛するクリエイターたちから同作に向けた、非営利目的の“ラブレター”として制作されてきたそうだ。今後本プロジェクトが継続されるか、あるいは制作チームが解散となるのかは明かされておらず、動向が注目されるところだろう。

オリジナル版『ファイナルファンタジー IX』は、PC(Steam)/PS4/Xbox One/Nintendo SwitchおよびiOS/Androidなどに向けて発売中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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