株式会社ポケモンの韓国支社Pokémon Koreaは6月3日、「Pokémon Trainers Cup 2023 Final Round」マスターカテゴリの開催中止を発表した。インサイドが国内向けに伝えている。
「Pokémon Trainers Cup 2023」(以下、PTC)は『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』(以下、ポケモンSV)の韓国での公式大会だ。マスターカテゴリのFinal Round開催中止の理由としては、出場選手4名全員の出場権がはく奪された結果だと説明されている。一方、出場選手らは大会運営姿勢への抗議をおこなった結果失格となったことを明かしており、この選択に「後悔はない」とコメントしている。
「ゆびをふる」パーティで全員失格
「PTC 2023 Final Round」は、韓国での『ポケモンSV』公式大会の決勝戦。今回中止されたのはマスターカテゴリでの大会であり、2006年以前生まれのプレイヤーが対象となる。本大会においては、事前に大会にて使用するパーティを登録する方式がとられていたと見られる。そして出場選手4名は、すべてのポケモンに技をひとつしか覚えさせていないパーティを登録していたとされている。運営側により正常な対戦および大会運営ができないと判断。さらにそうしたパーティ登録が公式大会にて禁止行為として定められている行為とみなされたため、本大会の出場権がはく奪されたとのこと。
なぜ選手たちがそうした行為に及んだのか。出場権をはく奪された選手のひとりであるBingha氏は本件についての声明を明かしている。同氏は、出場選手ら4人が本大会およびPokémon Koreaに対する抗議をおこなって出場権をはく奪されたと説明。自分の選択を決して後悔しないと伝えている。声明には同氏が本大会に事前登録したパーティの画像が添付。Pokémon Korea側の説明どおり、すべてのポケモンの技がひとつだけであることが確認できる。
問題になったポケモンたちの技構成としては、グレイシアを除く全ポケモンが「ゆびをふる(손가락흔들기)」だけを覚えている。ゆびをふるは、ゲーム内に存在するほぼすべての技の中からどれかひとつをランダムで繰り出す技。つまりこのパーティで大会参加した場合、ランダムな技しか出せない状態となりまともな戦いがほぼ不可能なわけだ。少なくとも大会決勝戦に期待されるような、戦略性のあるバトルは展開されないだろう。なおグレイシアについては「ねがいごと(희망사항)」を覚えており、ポケモンたちの技構成で運営側に訴えかける狙いもありそうだ。
『ポケモンSV』公式オンライン大会での問題点
『ポケモンSV』では世界各地の公式大会において、決勝予選となるオンライン大会でさまざまな問題が発生していたことが伝えられている。なお各地のオンライン大会では結果に応じて、地域ごとの決勝戦だけでなく本作の世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」(以下、WCS 2023)への出場権も付与。きわめて重要な立ち位置の大会であったものの、問題の発生により混乱が生じていた。
国内においては「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2023 本戦」が5月16日にオンライン開催された。同大会では、一度対戦した相手とレートが近しい場合に再度マッチングされる点や、続けて戦うかどうかを選択できるメッセージが表示されず対戦中断ができない点、対戦中断ができないために自分が対戦した回数やレートの確認をおこなう画面が見られない点などが問題点として指摘されていた。
これを受けてか、「本来意図していない挙動が発生した」として、上述の問題への対応と見られるアップデートが配信。「ポケモンジャパンチャンピオンシップス2023 本戦」については、5月28日より大会が追加開催された。5月16日の開催での上位64名に、5月28日の追加開催での上位64名を加えて、計128名に決勝への出場権が付与された(関連記事)。
韓国では「再開催」に
上記のような問題は、韓国のプレイヤー向けに5月14日にオンライン開催された「PTC 2023」の決勝予選でも起こっていたと見られる。一方で同大会においては問題を受けた対応として、大会の追加開催ではなく、5月28日に大会が「再開催」となったことが伝えられている。つまり5月14日に獲得された決勝への出場権は帳消しになっていたと見られ、5月28日の大会結果だけに基づいて決勝や「WCS 2023」への進出者が選ばれる対応がおこなわれていたようだ。なお同大会では上位4名が決勝に進出し、上位16名が「WCS 2023」への出場権を獲得するかたちとなっていた。
同大会に5月14日に参加し、5位に入賞していたlupang氏もこうした対応の影響を受けたひとり。同氏は5月28日の再開催には時間の都合で参加不可能であると伝えている。そのため5月14日に獲得していた「WCS 2023」への出場権を取り戻す機会がないまま手放すかたちになったわけだ。一方的に決定された開催スケジュールにより、なすすべなく決勝戦や「WCS 2023」への道を閉ざされたプレイヤーはほかにもいるかもしれない。
「PTC 2023 Final Round」マスターカテゴリ決勝の出場選手すべてが抗議をおこなった背景には、大会運営側のそうした対応の影響を受けたプレイヤーたちの無念を代弁する狙いもあるのだろう。またそもそも複数の不具合などで混乱を招いた運営状態にも問題はあり、そうした点を批判する思惑もありそうだ。上記のBingha氏のツイートには韓国のユーザーや競技プレイヤーなどから同氏を支持する声が寄せられている。
なお運営側は出場選手ら4名に付与される予定であった「WCS 2023」への出場権の取り扱いと同選手らの今後の公式大会参加については後日案内予定であるとしている。韓国内の本作競技者コミュニティとPokémon Koreaの間に深まった溝が修復されることはあるのか。今後の動向が注目されるところだろう。