「ゲームの銃の作り方」をベテラン開発者が解説。『Fallout: New Vegas』にも活かされた、使っていて楽しい銃性能デザインの鉄則とは

『Fallout: New Vegas』のディレクター/リードデザイナーを務めた人物が「ゲームデザインにおける“銃づくり”で大事な考え」について持論を説明している。

『Fallout: New Vegas』のディレクター/リードデザイナーを務めた人物が「ゲームデザインにおける“銃づくり”で大事な考え」について持論を説明している。シングルプレイゲームであっても、反動や発射レートといった銃の基本性能の調整は重要な要素となるそうだ。


Josh Sawyer氏はObsidian Entertainmentにてディレクターなどとして活躍する人物だ。同スタジオの最新作『Pentiment』ではゲームディレクターおよびナラティブディレクターを兼任。過去の実績としては『Pillars of Eternity』シリーズや『Fallout: New Vegas』などでディレクターやリードデザイナーなどを担当してきたベテランだ。『Fallout: New Vegas』におけるゲームデザインでは、武器やパークの開発に携わっていたという。

Josh氏は先日、ユーザーからの要望を受けて「ゲームデザインにおける“武器づくり(Weapon design)”の際に大事な考え」をツイートにて説明した。同氏は自分の意見が最適解とは思わないといった前提を述べ「アニメーション/VFXやサウンドも極めて重要である」としつつ、持論を述べている。なお一連のツイートでは、武器のなかでも主に銃器にまつわる設計がトピックとなっている。

まずJosh氏は、ゲームの銃にまつわるデザイン(設計・性能調整)では、端々の細かな調整ではなく武器の基本性能を考えることに帰結すると述べている。同氏は以下に示すような基本性能の違いによって銃ごとの差別化が可能だと説明している:

  • ダメージ(Damage)
  • 銃弾の拡散(Base Spread)
  • 発射レート(Rate of Fire)
  • 垂直/水平方向の反動と減衰(V/H Recoil & Decay)
  • 照準覗き込みに移行するまでの時間と視野角(ADS Time & FoV)
  • 銃弾の種類分け/(銃弾の)さらなる種類分け/装填数(Ammo types/subtypes/capacities)
  • リロードの種類/リロード時間(Reload type/duration)

Josh氏は「シングルプレイゲームであっても」こうした項目の数値の違いで銃の差別化が可能だと述べる。たとえばオンラインシューターであれば、上記のような指標は武器選びの際に大いに精査されるデータだろう。数値がわずかでも違えば、その銃の強さや、プレイヤーにとっての使いやすさに大きな影響を与えうる。一方でシングルプレイゲームでは銃の性能が勝ち負けに直結しない場合も多く、銃の性能数値を精査するようなプレイヤーは比較的少ないかもしれない。またシングルプレイゲームでは上のような指標とは違う部分で、武器に大げさな個性をもたせている場合もあるだろう。そんなシングルプレイゲームでも、ごく基本的な性能を調整するだけで、ユーザーに与える印象は大きく変化するということかもしれない。

しかし少なくともJosh氏の考えでは、上記の基本性能で差別化する前にほかの性能に手を付けると「さわり心地がぐちゃぐちゃ」になってしまうとのこと。基本性能がおぼつかないままこまかい性能を調整した銃は用途が不明確になり、プレイヤーが使っても満足感が得られなくなるという。どんな特徴があって、何ができる銃なのか、といった設計は同氏の挙げた基本性能によって大きく左右されるのだろう。またプレイヤーからゲーム内の武器への不満があった際の対処においても同様。基本性能に手を加えず、たとえばダメージの距離減衰だけを調整しても不満は解消されないだろうとの見解を述べている。

そのほかJosh氏は開発者へのアドバイスとして、特定のゲームで好きな銃があり、それを真似してみたいなら銃の基本性能となる数値を調べることを薦めている。人気作品であれば特に、攻略Wikiにユーザー検証などによるデータとして載っていることも多いだろう。同氏はそうした基本性能もとにして、自分で調整していってほしいとアドバイスしている。

またそうした方法で作った銃がユーザーから“パクリ”と言われる可能性についても言及。これについては「誰が気にすんだ?(Who gives a shit ?)」とする動画を添えて、そうした指摘を気にしないよう開発者に助言した。あくまで銃のステータスを決める数値を参考にするだけであり、それをもとに調整を加えるのであれば問題ないとの説明だろう。

ユーザーからはJosh氏の銃のゲームデザイン哲学に賛同する声が散見される。また一部ユーザーはゲームにおける自分の好きな銃を挙げており、中には同氏が携わった『Fallout: New Vegas』における「ライオットショットガン(Riot Shotgun)」の使い心地を称賛するユーザーも見られる。いずれにせよ同氏の今回の解説は、どのような意図のもとで“使っていて満足できる銃”が作られたのかをユーザーたちが垣間見る機会となったようだ。

オンラインシューターにおいて、銃の基本性能のバランス調整はアップデートを重ねて長期にわたって調整されていくことも多い重要な要素のひとつだろう。一方でJosh氏の武器デザイン論では、シングルプレイゲームでも銃の基本性能がプレイヤーの印象を大きく左右することが語られた。同氏の作品においては、一見個性の際立つ銃であっても、基本性能を堅実に調整するところからデザインされているのかもしれない。なおObsidian Entertainmentが今後新たなシューター作品を手がけるかは現時点では不明。Josh氏のゲームデザイン哲学が活かされたシューター作品がこれから登場するかどうかも注目されるところだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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