デベロッパーのRusty Lakeは5月19日、コミュニケーションツールのDiscordにて「“rustylake”とのユーザー名が取られてしまった」と報告し、注意喚起した。この出来事の背景には、Discordにおけるユーザー名の仕様変更があった。
Rusty Lakeは、オランダ・アムステルダムを拠点とするデベロッパー。同スタジオは『Cube Escape』シリーズや『Rusty Lake』シリーズなど、いわゆる「脱出系」の謎解きゲームで高い評価を得ている。同スタジオ設立者のRobin Ras氏とMaarten Looise氏は、スタジオ設立前よりFlashを利用してブラウザ向けゲームを開発。現在に至るまで独特の世界観を貫くゲームを送り出し、ファンから根強い支持を受けている開発元だ。
そんなRusty Lakeの名称が、Discord上で第三者に取得されてしまったという。同スタジオは5月19日、公式Twitterアカウントを通じて投稿。インディーデベロッパーに向けての注意喚起として、「Discordの新しい形式のユーザー名を取ろうとしたところ“rustylake”が取得されていた」と報告した。
この背景としては、現在Discordが推し進めるユーザー名の仕様変更がある。同ツールでは、ユーザーは同じ一言一句おなじ名前を取得可能な仕様だ。同一の名前を有するユーザーの区別については、名前に付随する4桁の数字「識別タグ」でなされていた。同一名称のユーザーについては「○○#0001」と「○○#0002」といったように、数字で区別される仕組みとなっているのだ。
しかし今月、Discordはこの仕様の変更を発表した。新たな仕様では、識別タグが廃止となる。そして、複数のユーザーが同じユーザー名を利用することが不可能となるのだ。新たな仕様では、ユーザー名がかぶった場合TwitterのIDなどと同様に、末尾にアンダーバーをつけたり、数字をつけたりといったユーザー名重複を避ける工夫が必要となる。なお、このユーザー名とは別に表示されるニックネームも設定可能で、こちらは別ユーザーとの重複も可能となる。この新仕様は、今後数か月にわたって一部ユーザーから順次適用予定。Rusty LakeのDiscordアカウントも、その新仕様を利用できる対象ユーザーとなったのだろう。
しかし、ユーザー名の重複を許さない新仕様では、「rustylake」は取得済み。こうなると、Rusty Lake公式アカウントは「rustylake1」や「rustylake_」といった、いかにも“公式っぽくない”名前を利用するしかないだろう。この状況について同スタジオは「なりすましの被害にあうリスクが生じるほか、商標権侵害が起きれば対策コストも生じる」と問題提起している。なお、同スタジオのDiscordサーバー利用者は24万人を突破する大規模だ。そうした規模のコミュニティオーナーだとしても、“自分たちの名前”を取得できない状況にも不服なようだ。
なお「Rusty Lake」という2語の組み合わせはかなり独特であり、一般的な言葉ではない。ゲームシリーズや同スタジオ以外のことを指して使われることはほとんどないだろう。すでに同名を取得していたユーザーは、悪意の有無などは別として、Rusty Lakeの存在を認識していた可能性も高いだろう。なお、Rusty Lakeは解決策を求めてDiscord側に問い合わせを送っているという。しかし、同スタジオは日本時間5月22日夜時点では「Discordからはなんの助けも得られていない」とコメントしている。
Rusty Lakeによる、なりすましへの懸念は組織であれば気にかかる点だろう。また、“公式っぽくない”ユーザー名を強いられることになれば、偽物と疑われるなどの不利益に繋がる可能性も存在する。Discordがこうした組織アカウントとしての事情を汲むかどうか、注目されるところだ。また、一般ユーザーレベルでも、愛用のユーザー名が別のユーザーに取られる可能性はある。ユーザー名やIDにこだわりのある方は、Discordの仕様変更を念頭に入れておいた方がよいだろう。