『Apex Legends』にて“0キル0ダメージ”でプレデターに到達したプロ選手現る。逃げるだけでランクが上がる新システムの課題
『Apex Legends』にて、あるプロ選手が「敵に一切攻撃しない」条件のもとランクをブロンズIVからプレデターまで上げるチャレンジを敢行し、1日足らずで達成に至った。そして同氏がこのチャレンジをおこなった背景には、開発元に新たなランクシステムのバランスの課題点を突き付ける狙いがあったという。
『Apex Legends』シーズン17では新レジェンド・バリスティックが実装されるなど、新たな要素が複数登場している。さらに今シーズンでは、ランクマッチの仕様も大幅に変更された。従来のランクポイント(RP)が廃止され、代わりの指標となるラダーポイント(LP)が登場。獲得ポイントのバランスも大きく調整されている。
そんな新ランクシステムにて、“0ダメージ0キル”で最高ランクであるプレデターに上り詰めたプレイヤーが現れた。敵を一切攻撃しないランク上げに挑戦したのは米国のeスポーツチームNRGのsweetdreamsことChristopher Sexton氏だ。同氏は5月10日に、Twitch上で配信しながら今回の挑戦を開始した。
sweetdreams氏の戦略はシンプルだ。ひたすら戦闘を避け、マッチでの到達順位を上げるのみ。極力敵と遭遇しないように、第3収縮まではリングの外で医療キットをクラフトして使いながら体力が尽きないように待機。後半のリングでも隠れたり逃げたりしながら、敵を避けるだけで上位を目指す戦略であった。なお挑戦はフレンドと部隊を組まない、いわゆる野良でおこなわれた。同氏はマッチ開始時にボイスチャットにて、自分が戦わずプレデターを目指すチャレンジ中であると報告しつつ戦略を説明。味方プレイヤーには気にせず好きな場所で戦ってほしいと述べ、死亡した場合はバナーをクラフトしてバックアップする旨を伝えていた。
sweetdreams氏は野良でマッチングしたプレイヤーたちと協力しながら着実にLPを積み重ね、配信開始後約18時間40分でプレデターランクに到達。戦わずして、しかも一度の配信で最高ランクに上り詰めてしまった。同氏はプレデター到達後にさっそくプレイヤーの統計画面を確認。与えたダメージとキル数が0の状態でプレデターに到達したとわかるスクリーンショットを撮影した。一方で同氏にチャレンジ達成を喜ぶ様子は見られず、「このゲーム史上もっとも馬鹿馬鹿しいスクリーンショット」とコメントしている。
その後sweetdreams氏はTwitterアカウントにて『Apex Legends』公式アカウントに向け、“開発元への抗議”として先述のスクリーンショットを送付。高いランク帯でのマッチ参加時の消費LPを増加させる調整を要望している。今回のチャレンジにおける同氏の狙いは娯楽としてパフォーマンスではなく、開発元に現状のLP獲得バランスの課題点を指摘するところにあったようだ。
シーズン17でのランクシステムでは、ランクマッチ参加時の消費ポイントが一律化。従来は自分のランクが高くなるほど増加していた消費ポイントが、一律で35LPとなった。代わりに内部的な指標となるMMR(マッチメイキングレーティング)に基づく新マッチメイキングシステムが導入。より腕前の近いプレイヤー同士でマッチングするようになったとされている。
またランクマッチでのポイント獲得量にも変化が加わり、キル数を増やすのではなく高い順位に到達することで従来以上にポイントを獲得可能となった。たとえばシーズン16では1位/2位/3位入賞時の獲得ポイントがそれぞれ125RP/95RP/70RPであった。対して今シーズンではそれぞれ200LP/175LP/150LPに変更。キルを稼ぐのではなく生き残ることが重要なシステムとなったわけだ。
しかしながらsweetdreams氏のチャレンジが示すとおり、現状ではまったく戦わないプレイでもランクを効果的に上げられるバランスとなっている側面もある。1日足らずでブロンズIVからプレデターに上げきることができる点からも、従来のランクシステムと比べると新ランクシステムが特異であることがうかがえる。こうした点は、sweetdreams氏をはじめ複数のプロ選手やプレイヤーからも指摘されている。
一方でキル数を重ねる必要がなく、かつチャンピオンを目指して生き残ることでランクアップをできるということで、より幅広い戦略でランクアップするチャンスがあるともいえる。Respawn Entertainmentは今シーズンのランクシステムの変更について、競争の公正さの維持と向上を目指す施策の始まりに過ぎないとしている。今回のsweetdreams氏の指摘も含め、フィードバックを受けながら今後の新たなランクシステムのブラッシュアップは続けられていくことだろう。