スクエニ、AI実験版『ポートピア連続殺人事件』をSteam向けに24日無料配信へ。賢くなった“AIヤス”が、プレイヤーの自由文を理解

 

スクウェア・エニックスは4月21日、『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』(以下、本作)を発表し、4月24日に無料配信すると告知した。対応プラットフォームはPC(Steam)。

本作は、『ポートピア連続殺人事件』をベースにした“自然言語理解の体験用ソフトウェア”だという。『ポートピア連続殺人事件』はゲームデザイナーの堀井雄二氏が手がけ、当時のエニックスより1983年に発売された作品だ。プレイヤーは刑事として、相棒のヤスに命令しながら事件を調査。殺人事件の真相に迫っていく。同作をベースにした本作でもゲームの流れは同様。プレイヤーが入力した文字に応じてヤスが行動し、事件の真相を解明していくことになるという。

オリジナル版『ポートピア連続殺人事件』ではプレイヤーが文字列を入力してキャラの行動を決定し、物語を進めるコマンド入力式のシステムが採用されていた。同システムでは自由な文字列を入力してゲームを遊べるものの、すべき行動がわかっているのに適切な文字列がわからないといった事態も起こりえた(ファミリーコンピュータ移植版では、コマンド選択式が採用)。

一方、本作では入力されたテキストの判別に自然言語処理(Natural Language Processing)を採用。自然言語処理とは私たちが日常的に用いるような言語を、コンピューターを用いて扱う技術だ。大量のテキストデータを使ったディープラーニング技術により、複雑なテキストの理解や文章の生成が可能とされる。自然言語処理によって、オリジナル版『ポートピア連続殺人事件』よりもあいまいで、より複雑な文章にも対応できるようになっているそうだ。本作はプレイヤーに自然言語処理という技術への理解を深めさせる、テックプレビューとされている。


本作ではたとえばプレイヤーが「辺りを調査しろ」と入力した場合、「地面を調べろ」「窓を調べろ」といったいくつかの意味の可能性が内部的に処理される様子。ヤスはそれらのなかから、自然言語処理によってもっとも適合すると判断された行動をとってくれるようだ。これにより、シナリオを進めるために必要な文字列の自由度がオリジナル版『ポートピア連続殺人事件』より格段に増えているとのこと。プレイヤー自身の言葉で物語を進められることを目指し、本作の研究開発がおこなわれたそうだ。


なお本作ではSpeech To Text技術も採用。音声を文字列に変換する技術により、プレイヤーの肉声による文字列入力が体験できるそうだ。ただし音声認識について、十分な体験を得るにはCUDA対応のGPUと、大容量のVRAMが必要となるそうだ。

ちなみに本作は当初、自然言語生成(Natural Language Generation)による雑談会話機能を有していたという。しかし、AIの“非倫理的な発言”の可能性を考慮し、NLG機能は削除された状態でリリースされたとのこと。今後の研究によりプレイヤーが安心して楽しめる環境が整った際には提供も予定されているそうだ。


自由に言葉を入力してプレイするゲームの先例のひとつしては、先日公開されていた『ドキドキAI尋問ゲーム』が挙げられる。同作には自然言語処理ツール「ChatGPT」が利用されており、プレイヤーが入力した言葉に応じて回答が生成される仕組みとなっていた(関連記事・本稿執筆時点では公開終了済)。一方で本作はプレイヤーの入力が命令のようなかたちでゲーム内キャラの行動に反映され、物語が進行していくシステム。『ポートピア連続殺人事件』の発展形として、また違ったアプローチでの楽しみ方ができそうだ。

『SQUARE ENIX AI Tech Preview: THE PORTOPIA SERIAL MURDER CASE』はPC(Steam)向けに4月24日無料配信予定だ。