Nintendo Switch不正改造販売業者、逮捕後早期釈放されるも“今後一生賠償金を払う人生”に。約20億円

米国任天堂に訴訟されたハッカーグループTeam Xecuterのひとり、Gary Bowser氏が釈放されたという。かなり早い釈放となった一方で、同氏には任天堂に対する1450万ドルもの支払い義務が残っているそうだ。

米国任天堂に訴訟されたハッカーグループTeam Xecuterのひとり、Gary Bowser氏が釈放されたという。40か月の刑期よりかなり早い釈放となった一方で、同氏には任天堂に対する1450万ドル(現在のレートで約19億4800万円)もの支払い義務が残っているそうだ。海外メディアTorrentFreakが伝えている。


Team Xecuterは、Nintendo Switch本体のハックを可能にするSX ProやSX Core、SX Liteといった製品を手がけるハッカーグループ。これらの製品は、Nintendo Switch本体のセキュリティを迂回し、独自OSであるSX OSをインストール・起動させるためのものであり、海賊版ゲームの起動をも可能にする。同種製品のなかではかなりポピュラーな存在だったとされ、米国任天堂は2021年4月、Bowser氏をはじめとするメンバーを相手取り、著作権法違反など訴え裁判を起こしていた。

Gary Bowser氏はカナダ出身の人物であり、2020年米国司法省によりシアトルの連邦地方裁判所にて起訴。当時Bowser氏はドミニカ共和国に潜伏していたが、逮捕され米国に移送された。その後、米国任天堂が訴えたわけだ。同被告はTeam Xecuterの運営面を担当し、関連ウェブサイトの管理や、消費者・販売代理店への製品の宣伝、広告収益の管理などをおこなっていたとされる。なおBowserは、『スーパーマリオ』シリーズに登場するクッパの英語名と同じである。当時の訴訟にあたって、海外の一部メディアでは「任天堂がクッパを訴えた」という見出しが躍ることとなった。

また過去には、GaryOPAというハンドル名にてハック情報サイトの運営にも携わり、第三者を装いTeam Xecuter製品のレビューをするなど、ステルスマーケティングをおこなっていたと裁判にて指摘されていた。司法省との連邦裁判では、Bowser氏は2021年10月に司法取引に応じ、Team Xecuterによる違法行為に関与し、著作権保護されたゲームの海賊版をプレイするためのデバイスの販売などをおこなったことを認めたという(関連記事)。その後Bowser氏は2022年2月、40か月の禁固刑を申し渡された。司法省側は5年の実刑判決を求めていたとされ、司法取引によって減刑されたかたちだろう。

そしてBowser氏は刑期よりもかなり早く釈放されていたことが、ゲーム系YouTuberのNick Moses氏のインタビューにて明らかとなった。Bowser氏は上記判決後、ワシントン州シータックの連邦刑務所に収監。刑務所側から釈放日を早める対応がなされ、現地時間3月28日に釈放に至ったという。今後Bowser氏は米国ICE(移民・関税執行局)により、約1週間後にカナダ・トロントに送還されるそうだ。

司法取引で早期釈放に至った一方で、Bowser氏の前途には任天堂への多額の金銭支払いが待ち受けているという。同氏は司法取引の際に違法行為への関与を認めただけでなく、任天堂側に対しての450万ドルの支払いを承諾。さらに同氏と任天堂の間でおこなわれていた民事裁判も2021年12月に和解に至り、1000万ドルの損害賠償金を支払うという条件受け入れたとされる(関連記事)。同氏は今後の人生で、合計1450万ドル(現在のレートで約19億4800万円)もの支払いを続けることになるわけだ。

なおBowser氏の任天堂への支払いは刑務中からすでに始まっており、刑務所内の仕事での収入から月々25ドルの支払いを続けていたそうだ。釈放時点で175ドル(現在のレートで約2万3500円)を支払い終えているとのこと。約8万3000分の1の金額を支払い終えたことになる。ちなみに任天堂との合意において、Bowser氏は総月収の25~30%を任天堂に支払うことになっているという。ただし支払い開始までは最長6か月の猶予が設けられているとのこと。19億4800万円を完済するまで、今後同氏は任天堂への“罪滅ぼし”を続けることになりそうだ。


ワシントン州西部地区連邦検事局による見解では、Team Xecuterはゲーム会社に6500万ドル(現在のレートで約87億2000万円)以上の損害を与えたと推定。Bowser氏は同組織で組織の“表の顔(public face)”として販売などを担当していたとされている。また、以前TorrentFreakにより公開された司法取引に関する書面によると、月500ドル~1000ドル(現在のレートで約6万7000円~約13万4000円)を受け取り、さらに宣伝を通じて計32万ドル(現在のレートで約4300万円)を得ていたとのこと。違法行為に加担して多額の報酬を得ており、最終的に逮捕。犯した罪を償うために大きな十字架を背負うことになった。

なおTeam Xecuterは10人以上で構成されていたとみられる。首謀者とされるフランスのMax Louarn被告、および中国のYuanning Chen被告も米国司法省により起訴されているものの、逮捕には至っていない。2022年2月時点で、FBIとHSI(国土安全保障捜査局)による合同捜査がおこなわれていることが伝えられていた。Team Xecuterに対しては、今後も追及が続けられることだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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