幻のRPG『Dream』の“任天堂初心会向け”映像を、レア社創業者がチラ見せ。後に『バンカズ』に生まれ変わったゲーム

Image Credit: Tim Stamper on Twitter

レア社の共同創業者であり、元レア社クリエイティブディレクターのTim Stamper氏が4月10日に『Dream』の映像を公開して話題を呼んでいる。同作は後に変更を加えられ『バンジョーとカズーイの大冒険』として世に送り出されたゲームだ。

Tim Stamper氏は兄のChris氏と共に1985年にレア社を創業したゲームクリエイター。レア社は1982年に同兄弟が創業したAshby Computers and Graphics社を前身とし、『スーパードンキーコング』『バンジョーとカズーイの大冒険』『ゴールデンアイ 007』などの作品で知られる企業。任天堂との関係は深く、創業から2002年にマイクロソフトに買収されるまで傘下ゲームスタジオとして活躍した。現在でもデベロッパーとして活躍しており、2020年にPC(Steam)/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売した『Sea of Theives』はSteamで23万件以上のユーザーレビューを集め「非常に好評」ステータスとなっている。なおTim氏とChris氏は2007年にレア社を退社しており、現在は2013年に創業したFortuneFish社でゲーム開発をしている。

そんなTim氏は3月頃から古い資料の整理を始めたようで、その過程で見つかった珍しい資料や映像を時折Twitterにて公開している。中でも人々の目を引いたのが4月10日にTwitterに投稿された『Dream』の映像。『Dream』は開発途中から方針転換がなされ、後に『バンジョーとカズーイの大冒険』として世に送り出されたゲームだ。同作を紹介したツイートは本稿執筆現在で約1800RT、約8000いいねと大きな反響を呼んでいる。

「おそらく1996年の、任天堂初心会の展示会のためのものだった」というコメントと共に15秒の映像が投稿された。南国の島と思しき場所で、宝箱の横の海賊が「NINTENDO64の宝が存在するというのは本当だったのか!ガハハ、すべて私のものだ!」と高笑いするという内容だ。映像が流れているブラウン管テレビの手前には、開発用カートリッジが挿し込まれ電源がついたNINTENDO64が置かれている。カセットが残っているだけでなく、ゲームが動作もするのには驚きだ。

『Dream』はレア社がかつて開発していたスーパーファミコン向けRPG。同作については、レア社が当時の関係者に話を訊いたインタビュー映像が2015年に公開されている。そちらによると、赤髪の少年Edsonと相棒の犬DingerがFloatyと呼ばれる資源を悪用する海賊を止めようとする、というファンタジー色の強い内容だったそうだ。『Dream』は開発もある程度進んでいたようで、『スーパードンキーコング』シリーズを彷彿とさせる色鮮やかな3D風のグラフィックを見ることができる。

Image Credit: Rare on YouTube


ところが、開発が進むなかで当時の次世代ハードであったNINTENDO64が発表された。『Dream』もNINTENDO64に対応できるよう作り直されることとなったが、この際にキャラクターやゲーム性、世界観についてより良い方向性が模索されるようになった。そうした試行錯誤の末にクマの主人公のバンジョーが生まれ、彼を主人公とした新たなゲームとして生まれたのが『バンジョーとカズーイの大冒険』だったという。同作に向けて『Dream』からは、開発段階で見られた南国風の島や、悪役のキャプテン・ブラックアイが『バンジョーとカズーイの大冒険2』にNPCとして登場するなど、要素としてところどころに痕跡は残されている。しかし、全体としてはまったくの別物に生まれ変わったことになる。『Dream』は新たな主人公にバトンタッチをして、消えてしまった幻のゲームだったのだ。

Image Credit: Rare on YouTube


そうした事情を鑑みれば、「幻の映像」に反響が集まるのも頷ける。実際に遊べる状態なのか展示用カセットであったのかは定かではないが、嬉しい掘り出し物なのは間違いない。Tim氏はほかにも『Conker’s Bad Fur Day』のプロトタイプの映像や、『スーパードンキーコング』の本体付きセット(いずれも日本未発売)の写真も公開している。今後レア社作品のどんな歴史が発掘されるのか、楽しみにしながら見守りたい。