『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の“マルチプレイ化Mod”などの動画が削除される。人気“改造系”YouTuberが報告

YouTuberのPointCrow氏は4月7日、自身が投稿した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の複数のゲームプレイ映像について、任天堂からの著作権違反の申し立てを受けたと報告した。

YouTuberのPointCrow氏は4月7日、自身が投稿した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の複数のゲームプレイ映像について、任天堂からの著作権違反の申し立てを受けたと報告した。PointCrow氏は先日、本作の“マルチプレイ化Mod”を配布し注目を集めていた。海外メディアKotakuなどが報じている。

PointCrow氏は、YouTubeにて約159万人、Twitchでは約54万人のフォロワーをもつゲーム実況配信者。スピードラン動画などで人気を得ている人物だ。任天堂タイトルのゲームプレイ動画やリアクション動画なども数多く投稿しているが、同氏によると『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』に関する複数の動画について、任天堂によって“ブロック”されたという。

同氏は、当該動画はまだ視聴可能だが、収益化については無効にされたと述べている。ただ、上のツイートの画像にて示された動画を確認してみると、本稿執筆時点では視聴できない状態となっており、「この動画は、任天堂株式会社から著作権の申し立てがあったため削除されました」とのメッセージが表示される。YouTube側は任天堂からの申し立てを受けて、まず当該動画からの収益化を無効にし、その後削除対応をおこなったようだ。

削除された動画は、半年以上前に投稿されたものがほとんどだった模様。それがなぜ今になって任天堂に問題視されたのかについては、PointCrow氏が4月5日に配布した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』向けのModが関係しているかもしれない。同氏はかねてより本作のマルチプレイ化に取り組んでおり、それがModとして配布開始されたのだ。

本作は任天堂の人気タイトルであることはもちろん、本来はシングルプレイゲームであり、またPCほどModの導入が一般的でないコンソール向けゲームであることもあってか、同Modの配布開始には大きな注目が集まった。それによって、任天堂が同氏の動画について知ることとなった可能性がありそうだ。

削除された動画は、上述したマルチプレイ化Modを適用したゲームプレイや、実況配信中に視聴者がチャットを通じてゲームに干渉できるよう改造された本作のゲームプレイが中心だったようだ。任天堂は、自社の著作物を用いた動画投稿などについてのガイドラインにて、“改造されたゲームソフト”による投稿を認めておらず、法的措置を講じる可能性を示唆している。海外向けのガイドラインにおいては、そうした具体的な例は挙げられていないものの、任天堂の著作権を侵害するものはやはり認められていない。PointCrow氏の動画はガイドライン違反だと判断され、任天堂が著作権侵害の申し立てをおこなったのだろう。
【UPDATE 2023/4/11 1:25】
海外向けガイドラインについて追記。あわせてPointCrow氏のチャンネル登録者数を修正。

*今回の一件を受けPointCrow氏は、Twitterアカウントのバナー画像を変更。Nintendo Directのデザインをもじり、暗に任天堂への抗議の意を示している。

PointCrow氏の動画が、任天堂が定めたガイドラインに違反していることは明白だろう。にもかかわらず、任天堂からの申し立てを受けたという同氏の報告ツイートに対しては、むしろ任天堂を批判する意見が多く寄せられている。作品を楽しむファンを、メーカーが一方的に拒否する構図に違和感を覚える海外ユーザーが多いようで、そもそも任天堂のガイドライン自体が時代遅れだとする意見もみられる。また著作権侵害について指摘する声はほとんどなく、それはフェアユースが認められるのではないかとの考えが根底にあるようだ。PointCrow氏自身も、動画の内容はフェアユースに該当すると主張している。こうした声は、PointCrow氏自身が人気インフルエンサーでありファンが多いという背景も関係していそうだ。

一方で、任天堂の対応について予想された展開だと意見を述べる人も少なくない。もともと任天堂は、著作権侵害に対して厳しい態度で臨む企業として知られており、YouTubeなどに投稿された権利侵害系の動画が削除される例はこれまでにもたびたび発生していた。またModに関していうと、独自のバランス調整を施すModが導入された『大乱闘スマッシュブラザーズX』が、任天堂からの指摘によりeスポーツ大会での採用が急遽中止されたこともある(関連記事)。客観的に見れば、権利者である任天堂の対応は、法に則り権利を行使しているのみ。PointCrow氏は改造コンテンツを用いて動画を含めた収益化をしていたこともあり、ガイドラインに基づいて取り締まるスタンスは、正当といえる。

今回『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の動画が削除されたPointCrow氏は、YouTubeに再審査請求をおこなったとのこと。また、先述のとおりフェアユースを主張したうえで、任天堂が申し立てを取り下げることを期待すると述べている。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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