UbisoftのNPCセリフAI生成ツール「Ghostwriter」発表。“その他大勢”のセリフ作成をAIに任せる時短ツール
ユービーアイソフトは3月22日、「Ghostwriter」を開発中であると発表した。ゲーム内NPCのセリフをAIによって生成する、開発者向けの社内ツールになるという。
「Ghostwriter」は、ゲーム内のNPCが発するセリフや声を、AIを用いて生成するツールだという。一般的にオープンワールドゲームにおいては、主要なキャラとは別に雑多なNPCが配置される。雑多なNPCといえどもゲーム内世界にリアリティをもたせる存在であり、状況に応じてさまざまなセリフが用意されることも多い。従来は、そうしたセリフもシナリオチームが手がける必要があった。「Ghostwriter」はその手間を省くツールとなるわけだ。
「Ghostwriter」を用いる際にはキャラを作成し、そのキャラが置かれた状況や経験する出来事といった変数とともに入力。すると、AIによってさまざまなセリフが生成されるという。シナリオチームは生成されたセリフを草案にして、雑多なNPCのセリフを仕上げることが可能になるそうだ。
動画の30秒ごろでは、実際に「Ghostwriter」を用いている様子も確認できる。ユーザーは“Arrowintheknee(膝に矢を受けた人)”とされるキャラを設定し、「I used to be an adventurer like you(昔はお前のような冒険者だった)」とのセリフを手動で入力。変数としては「Motivate Me(励まし)」が選択されている。そうした設定でツールを使用すると、似た内容のセリフがいくつも生成される様子がみられる。生成されたセリフはそのまま採用できるほか、一部を書き換えることも可能となるようだ。また生成したテキストは機械学習され、ほかのテキスト生成の参考にされるとのこと。
「Ghostwriter」を手がけるのはユービーアイソフトの研究開発部門Ubisoft La Forge。同部門はこれまで、ゲーム開発の効率化を促すさまざまな技術を研究・開発してきた。今回の「Ghostwriter」にも、雑多なNPCのセリフ作成という単純作業を、迅速かつ効率的におこなえるようにする狙いがあるそうだ。またNPCとのリアルなやりとりを実現するために、シナリオチームと共同で開発されてきたとのこと。本ツールの利用により、シナリオチームが本筋となるシナリオやカットシーン、キャラクターの制作に取り組む時間をより多く確保できるようになることが期待されているという。
なおUbisoft La Forgeは昨年11月に、Riot Gamesと共同で「Zero Harm in Comms」リサーチプロジェクトを発足させたことを発表していた(関連記事)。同プロジェクトでは、AIを活用したツールを利用してゲームチャットにおける悪質な言動を検知し、プレイヤー間の有害な交流を防ぐ狙いがあるという。今回の「Ghostwriter」も含め、Ubisoft La Forgeでは今後もゲーム開発・運営のさまざまな分野にAIを活用する研究が進められていくことだろう。