チラズアートのホラーゲーム『地獄銭湯』提供中止。進行不能バグの原因を突き止められなかったため

チラズアート(Chilla's Art)は3月17日、『地獄銭湯(The Bathhouse)』を提供中止すると発表した。記事執筆時点で、同作のSteamストアページ自体は残っているものの、新規購入はできない状態となっている。

チラズアート(Chilla’s Art)は3月17日、『地獄銭湯(The Bathhouse)』を提供中止すると発表した。記事執筆時点で、同作のSteamストアページ自体は残っているものの、新規購入はできない状態となっている。2022年12月頃よりプレイヤーから報告されていた「203号室へ入れない」バグにより、最終的に提供を中止することになったという。

チラズアートは、兄弟でホラーゲームを作っているという国内のゲーム制作チームだ。過去作としては『閉店事件』や『事故物件』、『例外配達』など多数の短編ホラー作品をリリース。ゲーム実況者やVTuberによる動画/生配信を中心に、注目を集めてきた。

本作『地獄銭湯』は、そんなチラズアートがPC(Steam)向けとして2022年10月1日に配信開始した、ある銭湯を中心としたホラーゲームだ。本作のメインキャラクターである秋村舞伊奈は、会社で働く毎日に疲れ果てていた。会社を辞めて田舎へ行きたいが、実行するにはお金が足りない。そんな風に考えていたところ、「銭湯で働いてくれたら家賃タダ」と書かれたチラシを発見。早速田舎へ向かった彼女は、古びた銭湯へ住み込みで働くこととなる。そして、銭湯を中心に起こる怪事件へと巻き込まれていく。2種類のエンディングが用意されている点や、雰囲気を重視した恐怖なども本作の特徴だろう。

本作は2022年10月のリリース時点において、エンディングまでプレイ可能であった。いくつかのバグは存在していたものの、少なくとも最後までゲームを遊べる状態であった。チラズアートの報告によれば、10月8日のバグ修正から1月30日までの間、アップデートはおこなわれていなかったそうだ。しかし2022年12月頃より多数のプレイヤーから、ゲーム開始直後の箇所で進行不能になるという不具合が報告され始める。本作ではゲーム開始直後、秋村舞伊奈は大家からカギを手渡され、アパートの203号室へ荷物を運び込む。その際、プレイヤーは203号室へカギを使って入る必要があるものの、バグにより203号室への入室が不可能となっていたようだ。

事態を受けて、チラズアートは2023年1月30日に修正対応をおこなうと発表する。1月30日時点でチラズアートは、WindowsまたはNVIDIAドライバの両方またはいずれかのソフトウェアアップデートが原因との見解を示していた。本作にはゲームエンジンとしてUnityが使用されており、当時はレンダリングパイプラインとしてHDRPが採用されていた。チラズアートは、HDRPを採用していることが原因の一端ではないかと見ており、レンダリングパイプラインをHDRPからURPへ切り替えることで、バグを修正できるのではないかと考えていたようだ。

その後の対応として、チラズアートはまず2月6日に『地獄銭湯』の販売を一時停止する。そして、新作『ヒトカラ』の発売後である2月24日に、『地獄銭湯』の販売を再開。同時にリリースされたアップデートv2.00では、レンダリングパイプラインのHDRPからURPへの変更や、ほとんどのクラッシュの修正などがおこなわれており、203号室へ入れない不具合も解消されるはずだった。

実際には、アップデート以降もプレイヤーからのバグ報告は続く。チラズアートは報告を受けて、セーブファイルの削除を推奨したほか、アップデートv2.06にてセーブシステムを変更するなど、さらなる対応をおこなった。しかしながら、バグの原因は突き止められなかったため、3月17日をもって『地獄銭湯』の提供が中止。発表では、「これ以上皆さんに迷惑をかけたくない」とも語られている。


なお筆者の環境で『地獄銭湯』を再インストールして確認したところ、『地獄銭湯』は、たしかに203号室へ入れない状態だった。カギを手渡されるシーンまでは問題なく進行できるものの、その後カギを持った状態で203号室の扉を調べても、室内へ入るための選択肢が表示されなかった。一方で『地獄銭湯』のセーブフォルダを、新旧どちらも削除して改めてゲームを開始すると、203号室へ入るための選択肢が表示され進行可能となった。チラズアートによる案内や、Steamのユーザーによるガイドで紹介されているとおり、セーブファイルの削除によって203号室への入室が可能となったのだろう。『地獄銭湯』をすでに所有していてプレイしたい場合には、セーブファイルの削除によって不具合を回避できるかもしれない。

『地獄銭湯』は、現在Steamにて提供中止となっている。



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Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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