OpenAIが公開した大規模言語モデル「GPT-4」をゲームエンジンとして用いて、剣と魔法の世界を冒険するチャットベースの “RPG” を作成したユーザーが現れた。「GPT-4」により、チャットを通してAIがまるでゲームマスターのように振る舞い、自由すぎる冒険が展開する点などが注目されている。
OpenAIは3月14日、次世代の大規模言語モデル「GPT-4」を公開した。従来の「GPT-3」と比べ推論能力や回答の簡潔さが飛躍的に向上しており、OpenAIによる公開直後から外部の開発者によって「GPT-4」を用いたサービスが次々と発表されている。
そんな「GPT-4」を用いた“RPG”が国内デザイナーの深津貴之氏により制作された。深津氏は、クリエイティブファームTHE GUILDの代表や、コンテンツ投稿プラットフォームnoteのCXO(体験の最高責任者)などを務める人物だ。同氏は、3月16日に以下のツイートとともにnote記事を投稿。『チャット転生 〜 死んだはずの幼馴染が異世界で勇者になっていた件(体験版)』(以下、チャット転生)を公開した。
『チャット転生』の舞台は、剣と魔法の世界。勇者として転生した幼馴染が魔王を倒せるよう、アドバイスをしていくというストーリーのゲームだ。一般的なゲームと違うのは、プレイヤーがゲーム内の勇者に対してチャットでアドバイスしていくという点。その際「GPT-4」がゲームマスター的な役割を担い、設定に基づいてプレイヤーを導いていく。プレイヤーは、状況に応じて適切な回答を行うことが求められ、勇者となった幼馴染とリアルタイムでチャットをしながら冒険をともにし、ゲームの最終目標である魔王討伐を目指す。つまり『チャット転生』は、リアルなゲームマスターがいなくてもプレイできる一人用のTRPGシナリオといえる。
なおこのゲームではChatGPTにて「GPT-4」を利用するため、ChatGPTの有料版、「ChatGPT Plus」の契約が必要となる。「ChatGPT Plus」契約者であれば、深津氏のnote記事に記載されている数十行のプロンプトを入力するだけでプレイを開始できる。
なお、実際のプロンプトの内容としては、まるで人間に対してルールを説明するかのような文面となっている。「あなたはゲームマスターです」とAIの立場を定義しつつ、「会話終了時にストーリー進捗/危機の高まり/技術革新度/愛情度といった要素を表示する」など一連のルールをきちんと言葉で伝えているわけだ。まるで人間のようにしっかりとその役目を果たす性能の高さは、興味深くも末恐ろしくもあるだろう。
ヒロインが求めてくるのはプロンプト設定もあり現代知識であるものの、魔法と組み合わせるなど、AIと共同していろいろなルールの広がりも目指せることだろう。『チャット転生』の遊び方は自由自在だ。またキャラクターとのリアルタイムなチャットでのやりとりが、ゲームに対する没入感を高める点も特徴だろう。Twitter上にもすでに多くのプレイ・クリア報告が寄せられており、盛り上がりを見せている。「GPT-4」の処理能力に身を委ね、ユーザーたちが思い思いの方法で魔王の打倒を目指している様子が見られる。
なお深津氏は3月15日にもゾンビアポカリプスを生き抜く学園恋愛サバイバルゲーム『ときめき・オブ・ザ・デッド 〜 恋のアポカリプス(体験版)』やクトゥルフ神話サバイバルゲーム『ドキッと☆アーカム大学』を公開していた。深津氏は早くも「GPT-4」を利用したゲームを複数制作しているわけだ。プロンプトを改造すれば、別のゲームに応用できる点も特徴といえる。
このほかにも、海外のTwitterユーザーによって「GPT-4」を用いてポケモンエメラルドをテキストベースでプレイする試みも。テキストベースとなるものの、最初に3匹からポケモンを選ぶ、タイプやレベルやわざなど、ゲームシステムを踏まえたやりとりが進んでいる様子が見られる。「GPT-4」を用いたゲームづくりやゲームの再現は今後ますます加速していくかもしれない。
なおOpenAIはすでに一部の開発者に対し「GPT-4 API」を先行公開している。前のモデルとなる「GPT-3」や「GPT-3.5」においても、ゲーム開発のさまざまな分野に利用できる可能性が示されてきた(関連記事)。公開されたばかりの「GPT-4」を用いたさまざまなサービス開発が怒涛の勢いで進められており、開発者向けの「GPT-4 API」を含めて今後ゲーム業界に大きな影響を与えるかもしれない。
『チャット転生 〜 死んだはずの幼馴染が異世界で勇者になっていた件(体験版)』は、深津氏のnoteにてプロンプトとして公開中。「ChatGPT Plus」契約者であれば、深津氏のnote記事に記載されている数十行のプロンプトを入力するだけでプレイを開始できる。
※ The English version of this article is available here