ソニー、「PS版『Call of Duty』だけ終盤バグ入りで発売されたらどうする」と英競争市場庁に意見。マイクロソフトを疑いまくる
イギリスのCMA(競争市場庁)は現地時間3月8日、マイクロソフトによるActivision Blizzard(以下、AB)買収に関する、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)による意見書を一般公開した。その中では、SIEがマイクロソフトへの不信感をあらわにする意見を示している。Windows Centralなどが報じている。
マイクロソフトは昨年1月にABを買収する方針を発表。それ以降、各国・地域の規制当局では承認審査が進められている。各地域の当局がそれぞれの態度を示すなか、イギリスCMAのように買収に懸念を示す機関もあらわれた。「マイクロソフトがABを買収すれば、市場のなかで強力な存在になりすぎるのでは」という考え方だ。
マイクロソフト側はそうした懸念を受け、ABの人気IPであり議論の焦点でもある『Call of Duty』シリーズについて、10年間の提供を任天堂含む各企業と契約。作品を広く供給する姿勢を見せている(関連記事)。一方で、ソニーといった買収に反対する立場の企業は、マイクロソフトおよびABのプラットフォームやタイトルの優位性を強調するような言論を展開。両陣営が真っ向から衝突する様相を呈している。
イギリスCMAは現地時間3月8日、今回の買収に関するSIEによる意見書を一般に公開。事前にCMA側が示した解決案に対する反応としての文章だ。そのなかでは、SIEによるマイクロソフトへの不信感をあらわにする意見が示された(資料PDF)。
SIEは意見書のなかで、CMA側が示した解決案では、マイクロソフトによるいくつかの“戦略”を防ぐことができないと主張。その例として、3種類の懸念をあげている。まず最初は価格について、SIEはマイクロソフトがPlayStation機版でのみ『Call of Duty』シリーズ作品の価格を吊り上げるような戦略を取る可能性があると主張している。
続いてSIEは、マイクロソフトが自社プラットフォーム向け『Call of Duty』作品だけを“贔屓”する可能性があると主張。「もしもXbox機向けの開発にだけ、優秀なエンジニアなど多くのリソースを不平等に割いたらどうする」といった懸念を示し、CMAやSIE側から、開発リソースおよびエンジニアの質・数が各プラットフォーム向けに公正に分配されているか確認するすべがないと主張している。
さらにSIEは、マイクロソフトがPlayStation機向け『Call of Duty』作品だけ、ほかのプラットフォームに比べて劣った内容のままリリースする懸念を表明。具体例として「マイクロソフトが、ゲーム終盤やアップデート後にしか発生しないバグやエラーを含んだまま作品を発売するかもしれない」と疑念をあらわにしている。また、もしそうした問題が発生しても対処は難しく、発生した段階でユーザーたちはPlayStation機に不信感を抱き、作品の購入プラットフォームの第一選択肢から外れてしまうだろうとした。
こうしたSIEの主張はやや疑心暗鬼気味にも見えるものの、あくまでも懸念材料を余すところなく文章化したものと考えられる。こうした指摘が買収にあたり考慮されるべきかどうかも、今後の議論にてしっかり吟味されることだろう。