Steam宇宙船建造ゲーム『Cosmoteer』、28万本も売れていた。とにかく開発をオープンにすることで勝ち取った成功

Steamにて2022年10月より早期アクセス配信中の『Cosmoteer: Starship Architect & Commander』。本作は評価も売れ行きも好調で、今年2月初めの時点で売上28万本を記録したという。

Steamにて2022年10月より早期アクセス配信中の『Cosmoteer: Starship Architect & Commander』(以下、Cosmoteer)。本作はSteamユーザーレビューにて「圧倒的に好評」ステータスを獲得。売れ行きも好調で、今年2月初めの時点で売上28万本を記録したという。GameDiscoverCoは開発者へのインタビューを実施し、本作の成功の理由を訊いている。

『Cosmoteer』は宇宙船建造・運営シムだ。プレイヤーは宇宙を探索しながら海賊船との戦闘ミッションや資源採掘をこなし、自分の船を強化して名声を高めていく。なお戦闘においては、破壊されずに残った敵船のパーツの鹵獲も可能だ。なお本作のあらゆる船内活動は乗組員たちが手作業でおこなう必要がある。そのため、宇宙船の運営には乗組員たちの存在が不可欠。乗組員たちが効率的に活動するためには、船内の動線確保が重要となる。

オンライン要素も用意されており、協力プレイのほかPvPの対戦モードも搭載。また本作はModによる拡張も想定されているとのことで、Steamワークショップを通じてユーザー制作のコンテンツを容易に導入可能。なお本作は日本語には対応していないものの、有志制作の日本語化Modが公開されている。

本作を手がけるのはWalternate Realities。クリエイターのWalt Destler 氏が率いるインディースタジオだ。本作は同スタジオにとって初の作品となる。本作は2022年10月25日に早期アクセス配信開始。Steamユーザーレビューは本稿執筆時点で、約5860件中96%が好評とする「圧倒的に好評」ステータスを獲得。動線確保が重要なマネジメント要素、新たなパーツを獲得して船を強化しながら攻略を進めるゲームサイクルなどが評価を受けている。またSteamの同時接続プレイヤー数は、最大1万3794人を記録(SteamDB)。インディースタジオが初めて打ち出す新規タイトルとしては、かなり高い人気と好評を博しているといえるだろう。


そうした人気を受けてGameDiscoverCoのSimon Carless氏は、Destler氏にインタビューを実施。本作の人気の理由に迫っている。

まずDestler氏が明かしたSteamの統計データによると、本作は今年2月初めの時点で28万本を売り上げているという。単に好評なだけでなく、28万本という驚異的な売上もただき出していたわけだ。さらにプレイ時間の中央値は15時間以上だという。多くのプレイヤーが本作をじっくりと遊びこんでいるわけだ。そしてSteamの返金リクエストによる返金率は5.7%とのことで、GameDiscoverCoは早期アクセス配信タイトルとしてはきわめて低い割合だとしている。さらに同メディアは、今作は100万本売れるだろうと見積もっている。いったいどのような工夫があったのか。

本作の開発がスタートしたのは2011年初頭のこと。当初のタイトルは『Ship Builder』であった。初期のプロトタイプからバージョン0.15.18に至るまで、開発中のバージョンが無料配信されてきた。なおその間Destler氏はアルバイトをしながら生計を立てていたそうだ。

無料配信の開発中のバージョンに対しては、ユーザーからフィードバックやバグ報告など貴重な反応が寄せられてきたという。そうした熱心なコミュニティからの継続的な応援は、長期間の開発のモチベーション維持に不可欠なものであったそうだ。Destler氏は、長期間にわたってオープンな形でコミュニティと共に開発を続けるという選択が大成功であったとコメント。同氏は、そうした開発方針はすべてのゲームに有効ではないかもしれないものの、今後適したゲームを手がける際にはかならず同様の開発方針をとりたいと述べている。


そんな本作のSteamウィッシュリスト登録数は、早期アクセス配信開始時には14万4000件を記録していたとのこと。そして配信初週に本作は7万4000本を売り上げたという。ウィッシュリスト登録数と比して、約50%の販売本数を記録しているわけだ。なおGameDiscoverCoの調べによると、ウィッシュリスト登録数に対する初週売上の平均は約20%とのこと。通例よりも多くのウィッシュリスト登録者が、本作を初週で購入した可能性もあるだろう。また同誌によれば、本作は発売後にも一定数を売り上げ続けているとのこと。

なおDestler氏によると、当初はマーケティング、QA(Quality Assurance・品質保証)、ローカライズなどをパブリッシャーにゆだねる想定があったという。数十社に声をかけたところ、多くのパブリッシャーからオファーがあったとのこと。そのうちのいくつかを真剣に検討したものの、ほかのデベロッパーや業界人のアドバイスを受けてセルフパブリッシングとすることを決定したそうだ。理由としては、本作がパブリッシャーなしでも多くの注目を集めていたことが挙げられている。

一方で発売までの期間には、ゲームのマーケティング・PR会社Vicarious PRによるマーケティングが実施されていたという。そうした成果もあってか、海外メディアPC Gamerに記事が掲載されたり、人気ゲーム系YouTubeチャンネルSplattercatgamingに取り上げられたりと、メディア露出を増やした。またSteam NextフェスやTactiConといったSteamのイベントにも参加。着実に知名度を高めていたといえる。


開発中のバージョンを無料配信するという、オープンな開発方針が長期間とられてきた本作。大きな成功を収めているのはゲームプレイ面での好評だけでなく、早期アクセス配信前にユーザーコミュニティが形成され、注目を集めていた点も関係しているのだろう。またセルフパブリッシングの作品ながら、マーケティング・PR会社も巻き込んで意欲的なマーケティングをおこなったことも、成功の一因といえそうだ。

本作の早期アクセス配信期間は約1年を予定しているとのこと。2022年10月からに配信開始されたため、今年の10月ごろに正式リリースとなる見込みだろう。ただしゲームの内容変更に伴って正式リリース時期は延期となる可能性もあるそうだ。早期アクセス配信中のロードマップも公開されており、PHASE 0とされるQuality of Life(遊びやすさ)改善への取り組みののち、Career Modeのアップデートや宇宙船への変形機構実装など、新要素実装の予定も告知されている。

『Cosmoteer』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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