スクエニ『フォースポークン』に携わった著名ストーリーライター、「自分が関わったのは最初だけ」と語る。今のものは別物

スクウェア・エニックスおよび傘下のLuminous Productionsが手がけた『FORSPOKEN(フォースポークン)』について、本作に“オリジナルコンセプト”担当者として携わった人物が、ある驚きの証言を語っている。

スクウェア・エニックスおよび傘下のLuminous Productionsが手がけた『FORSPOKEN(フォースポークン)』について、本作に“オリジナルコンセプト”担当者として携わった人物が、ある驚きの証言を語っている。本作の物語は、初期にはもっと別のかたちで制作されており、途中で「リブート」されライター陣も入れ替わったのだという。


『フォースポークン』は、『FINAL FANTASY XV』の開発スタッフが中心となって設立されたLuminous Productionsが手がけるアクションRPGだ。主人公は、現代ニューヨークで天涯孤独の人生を送っていた女性、フレイ・ホーランド。彼女はとあるきっかけから意志をもつブレスレットのカフと出会い、美しくも絶望あふれるアーシアという異世界に迷い込む。フレイは元いた世界に戻る方法を探すため、魔法の力を駆使した高速アクションでオープンワールドを駆け巡り戦いを繰り広げることになる。本作では、異世界での冒険を通じてフレイの成長物語が描かれていく。


また本作は国内メーカー発の作品でありながらも、物語は海外ライター陣が手がけている。本作の脚本を主に手がけたのは、俳優としても活躍するTodd Stashwick氏と、海外TVドラマで脚本を手がけるAllison Rymer氏だ。

ほかにも、ストーリー面で名高いゲーム作品などを手がけたクリエイターたちが本作の物語づくりに参加。『アンチャーテッド』シリーズ初期3作品のクリエイティブ・ディレクターやライターを務めたAmy Henning氏および、映画「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」の物語に携わったGary Whitta氏が本作のストーリーに携わったとして名を連ねている。

ところが、Whitta氏の談によれば『フォースポークン』の現在の物語は、Whitta氏が作った物語と「まったく違う」のだという。クリエイターのAlanah Pearce氏によるPodcastトークで、Whitta氏自身が語っている。

*本作に関するトークは動画44分10秒頃から

Whitta氏がスクウェア・エニックスから『フォースポークン』に携わってほしいと打診を受けたのは、いまから5、6年ほど前のことだという。同氏は本作の神話などの世界観設定や、基礎となるストーリーの構築を頼まれたそうだ。やがて同氏は、複数のライター陣を率いての物語づくりに取り組むことになったという。「アーシア」という世界の名前も、この時Whitta氏がつけたそうだ。

しかし、1週間におよぶアイデア出しを終えた数か月後に、スクウェア・エニックス側から「ストーリーを完全にリブートして、別のかたちにしたい」と打ち明けられたという。そのまったく別の物語は、「現実世界の女の子が、ファンタジー世界に吸い込まれる」という筋書きだったそうだ。すなわち、現在の『フォースポークン』の物語である。

Whitta氏によれば、スクウェア・エニックス側は引き続き同じ体制でのストーリー完成を望んでいたという。しかし、その時点でWhitta氏やその時携わっていたライター陣は多忙を極め、新しいストーリーに取り組む余裕がなかったそうだ。Whitta氏は、そのあと前述のAmy Henning氏およびTodd Stashwick氏が制作を引き継いだものの、一定の期間中『フォースポークン』の物語に携わったあとに両名とも離脱したはずだとの認識をコメント。その後は複数名のライターたちが実際の物語を仕上げたという制作の流れを語っている。


Whitta氏の証言が真実であれば、同氏が『フォースポークン』に携わった部分はごくわずかである。Whitta氏自身、「作品の評価がどうなっているかすら知らない」との旨を繰り返し語っており、知っているのは自らが名付けた「アーシア」という名前が残っていることくらいとしている。

また、本作のストーリー関係スタッフとしては、Whitta氏およびHenning氏の両名の実績や知名度が目立つ。そのため、SNS上では「両名が『フォースポークン』のストーリーを手がけた」といった解釈をして語るユーザーも見られ、Whitta氏は困惑や苛立ちを覚えているようだ。同氏は言葉を変えて「ゲームの出来の良し悪しは関係なく、本当にちょっとしか関わっていない」と複数回強調している。ほかのメンバーについての証言はともかく、本作のストーリーはWhitta氏とはあまり関係ないようだ。

なお、『フォースポークン』のクレジット上では、Whitta氏の役割は「original concept」として、Henning氏の役割は「story concept」としてクレジットされている。また、本作のクレジットロールでも両名は、コンセプトを手がけた人物としてライター陣とは別の枠で紹介されており、しっかりと切り分けられている。あくまでもふたりは、ストーリーの本筋やテキストそのものを手がけてはいないと理解できる表記となっているわけだ。本作のストーリーに対してどのような感想をもったとしても、それは「Story & Script」としてクレジットされているTodd Stashwick氏およびAllison Rymer氏の作家性に由来すると思った方がよいだろう。


『フォースポークン』は現在PS5/PC向けに発売中だ。

【UPDATE 2023/2/21 23:05】
記事初版にて、記事タイトルを“スクエニ『フォースポークン』に携わったとされる著名ストーリーライター、「最初に作ったのと全然違う」と困惑。というか別物”としておりましたが、より正しくニュアンスを伝えるために、“スクエニ『フォースポークン』に携わった著名ストーリーライター、「自分が関わったのは最初だけ」と語る。今のものは別物”へと変更しました。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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