ソ連FPS『Atomic Heart』発売、Steamにて好調スタート。課題に取り巻かれる期待の奇怪シューター

パブリッシャーのFocus Entertainment/4Divinity/Beep Japanは2月21日、『Atomic Heart』を発売した。1955年の架空のソビエト連邦を舞台にするアクションRPGだ。

パブリッシャーのFocus Entertainment/4Divinity/Beep Japanは2月21日、『Atomic Heart』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)/Xbox One/Xbox Series X|S。Steamではさっそく数多くの同時接続ユーザー数を記録しており、好調なスタートを見せている。

『Atomic Heart』は、1955年の架空のソビエト連邦を舞台にするアクションRPGだ。本作の世界におけるソビエト連邦では、第二次世界大戦時にロボット工学などの最先端技術が開発されており、幸福な社会や自然豊かな完璧な都市、全自動化された日常生活など、いわば人類が求める理想郷の実現が目前という状況にある。しかし、その裏側には大きな闇が潜んでいるという。

本作にてプレイヤーは、極秘任務を託されたエージェントP-3となり、軍の秘密施設や研究所に潜入する。そこでは、人々を助けるために作られたロボットが反旗を翻し、秘密裏におこなわれた実験により凶悪なミュータントが出現。主人公は試作型パワーグローブや最新鋭の兵器を用いて戦い、またスキルとリソースを組み合わせて、特性が異なる敵に対応するのだ。武器や装備のアップグレード要素も用意されている。レトロフューチャーな世界観や、奇怪でグロテスクなデザインの敵たちが特徴的なタイトルだ。


本作Steam版の同時接続ユーザー数は、発売後約2時間で約1万8000人を記録。その後も同時接続ユーザー数は右肩上がりで、本稿執筆時点でピーク時2万2432人を記録している(SteamDB)。また本作はXbox One/Xbox Series X|S 向けにも発売。Xbox/PC GamePass加入者向けにも提供されており、Steam外のユーザーも多くいることだろう。

本作が発表されたのは2017年7月のこと。その後複数のトレイラー公開を重ねて、奇怪な要素の数々が紹介されてきた。各トレイラーは数多くの再生回数を記録しており、個性的な世界観などが大きく注目を集めていた。また発売直前の2月17日時点ではSteamのウィッシュリストランキングにて『ARK 2』や『Frostpunk 2』といった期待作に並ぶ第10位に位置していた。発表から5年以上を経て、知名度やユーザーの期待値が高まり続けていたのだろう。

発売後には一定の評価を獲得しており、Steamユーザーレビューでは本稿執筆時点で606件中86%が好評の「非常に好評」ステータス。レビュー集積サイトMetacriticではPC版がメタスコア77、Xbox Series X版がメタスコア72を獲得している。独特な世界観がリッチに描き出されるグラフィック面は好評。さらにパワーグローブの超能力と多彩な武器を組み合わせた戦闘や、謎解き要素などのゲームプレイ面も評価を受けている。戦闘面では、『BioShock』シリーズを彷彿させる側面もある(関連記事)。

【UPDATE 2022/2/21 17:24】
『BioShock』シリーズに関する記載を調整

一方でFOV(視野角)を調節できない点や、視点操作の感度が可変となるシステムが設定でオフにできない点など、設定項目の不足については課題点として指摘されている。そのほかPC版は発売時から対応することが発表されていたレイトレーシング機能に非対応であった点も、批判を受けている。


なお不評とするレビューのなかにはゲーム内容に触れず、ウクライナを応援する政治的なメッセージも見られる。本作『Atomic Heart』は、先述のとおり架空のソビエト連邦を舞台にする作品だ。また、開発元のMundfishはキプロス共和国に本拠を置いているが、もともとロシアに所縁があるスタジオである。

Mundfishに対しては、発売前に一部ユーザーから、ロシアのウクライナ侵攻についてどういったスタンスでいるのかを問う声が寄せられていた。一方のMundfish側も、そうした声を受けてか暴力に反対する声明を発表していた(関連記事)。声明において同スタジオはロシアやウクライナおよび軍事侵攻には直接言及しなかったものの、スタジオがグローバルチームである点を強調。また人々に対する暴力に反対し、平和主義を掲げる集団であると述べられた。また政治や宗教についてはコメントしないと表明しており、『Atomic Heart』を世界中のゲーマーに届けることだけに集中していると述べた。

こうした声明に対しても、同スタジオがロシア政府を支持していると断じるコメントが数多く寄せられていた。発売後のSteamユーザーレビューにも、ゲームの感想ではなくそうした政治的なメッセージを投じるユーザーが見られるわけだ。


いずれにせよ、長らく待ち望まれた『Atomic Heart』はいくつか課題点もあるものの、比較的好調なスタートを切ったといえる。なお本作国内Xbox One/Xbox Series X|S版については、不具合として日本語字幕が含まれていないことが伝えられている。現在マイクロソフトと開発チームにより問題の調査・解決に向けた取り組みがおこなわれているとのことだ。

『Atomic Heart』はPC(Steam)/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売中。PS4/PS5向けダウンロード・パッケージ版が4月13日に発売予定だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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