あるゲーム開発者、“自分の作品”に対し著作権侵害を訴えストアから削除させる。販売元との泥沼トラブルの末
デベロッパーのConradical Gamesは2月17日、自らの作品である『The Outbound Ghost』における著作権侵害を訴えたことを明らかにした。本作の販売元Digeratiとのトラブルが背景にあり、本作の販売を差し止める狙いがあるとのこと。現在、本作のストアページはSteamなどから削除されている。
『The Outbound Ghost』は、幽霊が主人公のRPG。舞台となるゴーストタウンには、この世に未練があり成仏できないでいる個性的な幽霊たちが暮らしており、プレイヤーは彼らに安らぎを与えて冥界に昇るのを手伝う。ターン制バトルにて過去と戦ったり、パズルを解いたり、クラフトにてステータスアップさせたりなどの要素が用意されている。本作は、2022年9月にPC版がリリース。そして同年11月30日にPS4/PS5版が、12月1日にはNintendo Switch版も海外にて配信された。
ただ、そのNintendo Switch版の配信直後にConradical Gamesは声明を発表。コンソール版にパフォーマンス面の問題があること、また販売元Digeratiの主導でおこなわれたコンソール移植に十分に携われず、同スタジオとしては不本意なリリースであったことを明らかにした(関連記事)。
今回Conradical Gamesは新たな声明(以下の映像)を発表し、冒頭でこの件について改めて報告。コンソール版の品質についてパブリッシャーDigeratiから事実と異なる報告がおこなわれ、それを信じてしまったため、上述した事態に至ったとした。また、そうした行為は契約違反であるとも訴え、Digeratiとの契約は打ち切ったとしている。
昨年の声明発表後、パブリッシャーDigeratiは開発元Conradical Gamesを相手取り訴訟を起こしたことを明らかにしている。不当な内容の声明を公にし、『The Outbound Ghost』の売り上げを毀損したことや、一方的な契約破棄の試みなどが理由とのこと(PC Gamer)。
今回の声明にてConradical Gamesは、訴状を引用しながら反論。自らの正当性を訴えた。さらに同スタジオは、本作の売り上げから受け取れるはずのロイヤリティを、いまだ1ドルも受け取っていないと主張。また、パブリッシャーであるDigeratiは第三者に本作をサブライセンスしているにもかかわらず、その事実を報告せず収益を低く見せかけているとも指摘している。
Conradical Gamesは、こうしたDigeratiの一連の行為を受けて、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく著作権侵害の申し立てを、プラットフォームホルダーに対しおこなったとのこと。同スタジオ側としては契約を打ち切っており、Digeratiによる『The Outbound Ghost』の販売は著作権侵害であるという見方である。その結果、現時点でSteamとGOG.comにて本作の販売が停止。ストアページが削除された。
一方のパブリッシャーDigeratiは、海外メディアPC Gamerを通じて、Conradical Gamesに対して強く反論している。同社はすべての収益について報告し、すべてのロイヤリティを期日どおりに支払っていると主張。Conradical Gamesの声明内容を虚偽であると断じ、同スタジオの行為について非常に失望しているとした。また、この問題が早期に解決されることを望むとコメントした。
デベロッパーが自らの作品に対して著作権侵害を訴えるという歪な状況となった本件であるが、Conradical Gamesとしては反訴の代わりとなる法的措置と捉えているそうだ。両者の言い分は真っ向から対立しており、事態は混迷を極める。ただ同スタジオとしても、問題が友好的に解決されることが望ましいとしており、裁判などを通じて歩み寄りがみられるかもしれない。
なお、本稿執筆時点で『The Outbound Ghost』は、PC(Epic Gamesストア)や海外コンソール版は引き続き販売されている。場合によっては、これらのストアでも今後削除されるかもしれない。またDigeratiが不服を申し立てて、ストアページが復活する可能性もあるだろう。