好評の社会主義国家運営シムのSteamストアページ、いきなり閉鎖される。「新モードは自分のアイデア」と主張するユーザーとの対立が原因か

デベロッパーの3Divisionは2月10日および16日、『Workers & Resources: Soviet Republic』の公式サイトやSteamストアページが非公開になったことについての説明を公開。この問題の背景には、本作のとあるモードの“アイデア”を巡る権利問題があるという。

デベロッパーの3Divisionは2月10日および16日、『Workers & Resources: Soviet Republic』の公式サイトやSteamストアページが非公開になったことについての説明を公開。あるユーザーからのDMCA(デジタルミレニアム著作権法)通告が原因で、各サイトの運営元が対処をおこなったとされている。背景には本作のとあるモードの“アイデア”を巡る権利問題があるという。

『Workers & Resources: Soviet Republic』は社会主義国家運営シミュレーションゲームだ。舞台はソビエト連邦(以下、ソ連)が存在した時代の、架空の国。この国はソ連と西欧の中間に位置している設定だ。プレイヤーは都市を運営する指導者となり、散在する地下資源を採掘し、工場で加工し、精密機械などを生産。そのために市民を誘致し、住環境を整え、交通網を整備することになる。

本作では、シミュレーションゲームのシステムに社会主義ならではの要素が盛り込まれている。たとえば市民には健康度・幸福度のほか、「政府に対する忠誠度」が設定。忠誠度が高いと労働効率が上がるが、低すぎると労働を放棄して逃げ出すなどのデメリットがある。忠誠度は時間経過で減少し、ラジオやテレビでプロパガンダを流すと回復する。ほかにも、市民に家電や自動車を配給できる、市民から税金を徴収できないなど、社会主義的要素が盛りだくさんだ。


「リアリスティックモード」を巡る争い

今回、そんな本作の公式サイトやSteamストアページなどが突如として非公開となってしまった。開発元3Divisionの発表によると、これらはあるユーザーからのDMCAに基づく通告を受け、各サイト運営元がおこなった措置だとされている。

この事態の発端となったのは、2022年11月の大型アップデートにて本作に実装されたリアリスティックモード(realistic mode)だという。3Divisionが同モードの開発に着手した際、あるユーザーが同モードは自分が考案したアイデアがもとになっていると主張。同ユーザーは弁護士であり、3Divisionに対してそうした旨を通達してきたという。

さらに同ユーザーは3Divisionの返事を待つことなく、次の手に移ったとのこと。YouTubeにて本作の動画を投稿するクリエイターbbaljo氏の投稿作品に対し、著作権を侵害しているとの報告をし始めたそうだ。3Divisionの発表に基づけば、同ユーザーは開発元だけでなく周囲の人間を巻き込んだ行動をおこしたといえる。3Divisionはそうした攻撃的な態度を受けて、同ユーザーの主張を無視することを決断したと述べている。

なお発表では、同ユーザーからの丁寧な問い合わせがあれば、(ほかのガイド記事作成者や貢献者とともに)クレジットに名前を記載する見込みもあったとされている。しかし今回、同ユーザーによるとされるDMCA通告がもとになり、Steamストアページなどが非公開になる結果に至ったそうだ。3Divisionの述べるところによれば、同ユーザーが一方的に行動をおこしたことで話し合いの可能性がなくなったというわけだ。


「新モードは自分のアイデア」との主張と開発元の反論

なお同ユーザーは、先述のリアリスティックモードが、自分の作成した「Cosmonaut Mode」なるSteam上のガイド記事のアイデアに基づいていると主張しているそうだ。本ガイドは、本作の通常モードのシステムで物資を輸入した際などに、“魔法のように都合よく物資がもたらされる”点を指摘。ゲーム設定やプレイ方法によってそうしたシステムを回避する、いわばやり込みプレイをオススメするような内容となっている。ゲームに何らかの要素を追加するModではなく、あくまで通常モードの遊び方の一例を示すガイド記事にすぎない。

そして開発元が実装したリアリスティックモードでは、「Cosmonaut Mode」にて提示されたような“縛り要素”が導入されている。たとえば、物資を直接購入して出現させることなどが不可能に。お金を使って建物を即時建設するシステムなども廃止されている。たしかにリアリスティックモードは、「Cosmonaut Mode」にて紹介されていたような遊び方が、システムとして実装されたモードにもみえる。

しかしながら3Divisionはリアリスティックモードは本作開発当初から構想されていたと主張。ただ複雑なシステムであり、早期アクセスとして配信されている本作に初期実装する要素には選ばれなかったとしている。また配信前には、ハードコアな遊び方をするプレイヤー数についても未知数であったという。


3Divisionは今回の発表において、「Cosmonaut Mode」の項目ひとつひとつを示しながらリアリスティックモードは盗用ではないと反論。同モードの一部システムは、同ガイドからではなく、ユーザーたちが思いついたテクニックや要望から取り入れられていると主張している。またリアリスティックモードには、「Cosmonaut Mode」が紹介する遊び方とは異なる機能も複数存在するとのこと。

さらに3Divisionは、「Cosmonaut Mode」の締めくくりに、ガイド作成に協力した、あるいはアイデアを与えたすべての人々への感謝が述べられている点に言及。そもそも「Cosmonaut Mode」が、ひとりのユーザーのアイデアで作成されているわけではない点を指摘している。

最後に3Divisionは、「Cosmonaut Mode」はプレイ方法の一例を示すガイドに過ぎない点を強調。リアリスティックモード実装に利用できる技術的な解決策やコードなどが含まれず、開発プロセスの助けにはなっていないと述べている。一方で同スタジオは、「Cosmonaut Mode」はユーザーからの人気を博していた点を認めている。同ガイドは、通常モードよりもリアルで挑戦的なモードで遊びたいユーザーの多さを示してくれたとのことだ。


社会主義国家運営シムの今後は

新モードとユーザーのガイド記事を巡って巻き起こったとされる今回の騒動。本作公式サイトやアップデート時のトレイラーが非公開となった点について3Divisionは、「DMCAに基づく報告が自動で受け付けられるため、こうした処置がなされた」との見解を述べている。同スタジオは公式サイトの管理元WixやYouTubeに連絡しており、早急な回答を望んでいるとコメント。またSteamストアページが非公開になる前に、Valveにも連絡をおこなったとのこと。運営元それぞれの判断により、今後本作のSteamストアページや公式サイトが復活する可能性もあるだろう。

『Workers & Resources: Soviet Republic』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中であった(現時点でストアページは非公開)。本作はSteamストアレビューにおいて、2022年12月時点で9376件中92%が好評とする「非常に好評」のステータスを獲得していた。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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