人気中世RPG向けに、“NPCとの会話AI生成”機能をユーザーが開発。自由にテキスト入れるとNPCが自然に答える

Image Credit: Bloc on YouTube

Mount & Blade II: Bannerlord』向けに「NPCと自由に会話できる」機能を開発したユーザーが現れた。ChatGPTが用いられているといい、定型文ではなく入力したテキストに対して世界観に沿った返答が生成。NPCとの自然な会話を楽しめる様子だ。国内ではTwitterユーザーのたばたの雑感(メモ)氏などが紹介している。

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『Mount & Blade II: Bannerlord』は、中世を舞台としたアクションRPG『Mount & Blade』の続編。対応プラットフォームはPCおよびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。プレイヤーはカルラディアと呼ばれる広大な世界で、自由に暮らす。攻城兵器を用いて要塞を攻めたり、権力を求め熾烈な戦いに身を投じたり、さらには犯罪組織を設立したりと、自分なりの生き方を選んでいく。大規模な攻城戦が展開する戦闘のほか、外交や経済、子どもへの領地継承など、さまざまな要素が存在。中世の人生を追体験できるゲームプレイが魅力の作品だ。

Mod制作者のBloc氏は、本作に向けて言語モデルAIを活用した「NPCとの会話機能」を開発しているという。同氏は1月9日に本機能の紹介動画を自身のYouTubeチャンネルに投稿。実際にゲーム内で会話をおこなう様子を確認できる。

本機能ではゲーム内で本来会話が用意されていない、ランダムNPCとの会話が可能になるそうだ。任意のNPCにインタラクトすることで会話が開始。右下のチャット欄にプレイヤーが自由に文章を入力。テキストを入力することで、セリフの生成時間を経てNPCが返答してくれる。相手が何者かを訊くシンプルな問いには、NPCは名前のほか職業や家族構成を返答。鍛冶屋に装備を作るよう頼んだり、息子を仲間にさせてくれと頼んだりといった内容にNPCから自然な答えが返されている。また、そうしたNPCの答えに対するこちらからの受け答えも、問題なく続けられる様子だ。齟齬のない自然な会話が続いている。

また本機能では、派閥や領主、場所、職業や付近のイベントを組み込んだストーリーが即興で自動生成されているとのこと。NPCたちは、それぞれゲーム内の世界観に沿うようなセリフを話すわけだ。さらに彼らの職業によって、口調も変化するという。村人たちとの会話が展開する上記の動画では、プレイヤーに対して「m’lord、milord(閣下)」と敬称が用いられるなど、丁寧な口調のセリフが生成されていることが確認できる。一方で別の動画における町人との会話ではそうした敬称は見られず、NPCによってセリフが変化することが確認できる。

本機能にはカスタムされたストーリー生成エンジン、およびChatGPTが利用されているという。ChatGPTとは、OpenAIが開発している自然言語処理ツール。ユーザーの入力したテキストに対し、AIが事前学習をもとに回答を生成してくれるツールだ。現時点では無料で一般公開されており、研究およびフィードバックの段階にある。本ツールは、同社の手がける言語モデルAI、GPT-3の新モデルGPT-3.5をもとに構築されている。GPT-3.5ではGPT-3と比べ、より複雑な指示の処理や、長い回答の生成が可能になっているとのこと。今回のNPC会話機能での自然なやり取りにも、強化された言語モデルAIの機能が発揮されているのだろう。

なお本機能および動画は、RPG作品における新たな会話システムの可能性を示すためのデモンストレーションとして制作されているとのこと。Bloc氏が今後、本機能をModとして公開するかどうかについては明かされていない。一方で本機能には、今後もさまざまなシステムの実装を想定しているとのこと。AIによる自己保存的思考、論理的記憶能力、取引や交渉システム、NPCの雇用システムなどの追加が検討されているという。そうした機能についても、動画として紹介する見込みだそうだ。

AIを利用したゲーム用の会話システムとしては、過去には『マインクラフト』向けのチャットシステムを導入したユーザーが存在(関連記事)。そちらもOpenAIのGPT-3が利用されており、ユーザーのテキストに応じて返答してくれるシステムとなっていた。ただやり取りは短めの文章にておこなわれており、やや不自然な返答も見られた。

一方で今回の『Mount & Blade II: Bannerlord』向け会話機能には、先述のとおり新モデルとなるGPT-3.5をもとにしたChatGPTが利用されている。長い文章に対しても自然なやり取りが展開されており、言語モデルAIの進化が垣間見える。

Image Credit: Bloc on YouTube


昨今、特にオープンワールドゲームにおいては、雑多なキャラとの会話は簡略化される場合も多い。今回の会話システムのように言語モデルAIがゲーム開発に利用されれば、セリフがほぼないような「その他大勢」だったNPCすべてと会話できるゲームの登場も、夢ではないだろう。自動生成ながら世界観に沿った会話が実現可能な点も、ゲーム世界への没入感を求めるユーザーにとって魅力的な要素となりそうだ。