ウクライナ拠点スタジオが、ロシアの侵攻による被害を発信。侵攻開始から約300日、戦禍のなか開発に挑む

『Sherlock Holmes Chapter One』

ウクライナのデベロッパーFrogwaresは12月23日、ロシアによるウクライナ侵攻による被害や実態について、Twitter上に投稿した。投稿されたコメントや写真からは、侵攻開始から300日が経過してもなお続く、現地の苦しい状況がうかがえる。

Frogwaresはウクライナの首都・キーウに拠点を構えるゲーム開発スタジオだ。『Sherlock Holmes Chapter One』を含む「シャーロック・ホームズ」シリーズや、『The Sinking City』などを手がけたことで知られる。2月から続くロシアによるウクライナ侵攻に対し、同社はTwitterを通じて現地の様子を発信し続けてきた。今回の一連のツイートでは、ここ数か月のFrogwaresの様子を伝えている。投稿によれば、ロシア軍の攻撃は夏ごろに比べて厳しくなっているという。10月ごろからミサイルやドローンによる攻撃が激化し、スタッフたちは精神的にもかなり厳しい状況にあるとしている。

ツイートでは、ロシア軍の脅威にさらされるスタッフの様子をつぶさに伝えている。朝起きれば、その日が少しでも平穏であるように祈りながらも、いつ来るか分からない攻撃に備えは欠かさない。攻撃が始まれば家族やペットと共に、地下やバスルームといった安全な場所へと避難する。攻撃は数十分から長くて数時間にも及び、時には永遠に続くように思われることもあるという。

攻撃が落ち着くとニュースのほか、Discordといったコミュニケーションツールをチェックして被害の状況を確認。攻撃による犠牲者の中に、知人が含まれていないかを確認する作業だ。朝からこうした攻撃と安否確認がなされた後には、計画停電によって何時間にもわたる停電が発生するという。ロシア軍がインフラ施設に向けた攻撃を繰り返すなか、寒さが深まるにつれてウクライナ国内の電力消費も上昇。同国営電力会社が計画停電を実施するに至っている(NHK)。インターネットのほか、暖房といったライフラインにも甚大な影響が出ているのだ。生活にも業務にも、大幅な支障が出ていることは想像に難くない。

ツイートの中でFrogwaresは、ロシア軍が民間人を攻撃していることも示唆している。具体的には、ウクライナ軍の勝利が報じられるたびに、ロシア軍による民間人を標的とした報復が実行されることを警戒しているというのだ。こうした状況の中で、Frogwaresはロシア側への批判的な姿勢を貫いている。今年9月には、”実物の榴弾”に書き込むメッセージを募る企画を実施し、その過激さゆえに物議を醸したこともあった(関連記事)。同社は自国への支援を求めるとともに、一連のツイートをこう締めくくっている。「この厳しい時期を共に過ごしてくれた人々へ感謝します。皆さんよいホリデーを、そして2023年にまたお会いしましょう」。

Frogwaresは戦時下にありながら、現在もゲーム開発を継続中だ。直近では、「シャーロック・ホームズ」シリーズのリメイク作『Sherlock Holmes The Awakened』が2023年第1四半期のリリースを予定している。同作はクトゥルフ神話の世界観に、若き日のシャーロック・ホームズが登場するクロスオーバー作品になるという(関連記事)。そのほか、新作ホラーゲーム『Project Palianytsia(仮題)』を開発中であることも明かされている。彼らが語った悲惨な状況が、一日でも早く終結することを願ってやまない。


主にニュースを担当。ビジュアルや世界観にこだわりのあるゲームが好きです。