The Game Awards 2022の「フルート男」が大人気に。“アワードあげて”と讃えられる、瞬間笛チェンジパッション奏者
昨日開催された、年に一度のゲームの祭典「The Game Awards 2022」。新たなゲーム情報やアワードの行方に、今年も世界中のゲームファンが注目していた。そんな中とあるオーケストラ奏者、通称「フルート男(Flute guy)」が、多くのゲーマーの熱視線を集めたようだ。
The Game Awards(以下、TGA)は、毎年恒例となるゲームの祭典だ。今年は『DEATH STRANDING』続編や『アーマード・コア』シリーズ新作『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』発表など、多くのゲーム新情報が告知。また、ここ1年間のさまざまなゲーム作品に各部門でアワードが授与された。そしてゲーム・オブ・ザ・イヤーは、フロム・ソフトウェアの『エルデンリング』が受賞(関連記事)。発表の前には、オーケストラによって本年GOTYノミネート作品を振り返る「GOTY 2022」特別メドレーが演奏された。そのなかに、ひときわ異彩を放つ奏者「フルート男」がいたのだ。
フルート男はオーケストラの中央、指揮者のちょうど正面に位置するポジションで演奏している。担当するのは、その通称のとおり管楽器だ。なぜ、この奏者が目立つのか。見た目としても、恰幅の良さとクセのある頭髪でやや目立つ。しかし、もっと大きな理由は、彼の元気いっぱいかつ高い演奏技術を感じさせる“ステージパフォーマンス”だろう。
上述の演奏動画では、まず『Horizon Forbidden West』から演奏が開始。この時点では、フルート男はバスフルートと思しき大きい笛を構えている。よく注視すれば、彼がこの時点から全身を震わせたソウルフルな演奏をしているのがわかる。さらに、ここで彼の驚くべきスキルが発揮される。大きい笛を吹いていたはずのフルート男が、『ゼノブレイド3』へと曲が展開する一瞬の間に、小さな縦笛を手にして吹き鳴らしているのだ。
あまりに唐突に笛が切り替わったため、筆者はまず、動画が編集されている可能性を疑った。しかし、動画は生中継の様子をほぼそのままカットした内容だ。よく似たフルート男が2人いる様子もなさそうだ。つまり、彼は恐るべき早業で笛を取り替えたのである。あまりの早業ゆえに、彼が笛を取り替える瞬間がカメラにほぼ映っておらず、怪現象にも見えてしまうほどだ。また、魂のこもった笛の音は『ゼノブレイド3』にうってつけの音色でもあるだろう。そして、メドレー中盤でフルート男はふたたびバスフルートらしき大きい笛を取り出す。今度はかろうじて交換終わり際の一瞬を、カメラが捉えていた。
メドレーは続けて『プレイグ テイル -レクイエム-』『STRAY』と進行していく。彼はどうやら大小3種類の笛を使い分けているようで、少し目を離した隙に笛が頻繁に切り替わっている。変わらないのは、彼の全身全霊の演奏スタイルだけだ。『エルデンリング』の演奏が終わると、フルート男は力強くガッツポーズ。続く『ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク』からクライマックスにかけては、体全体が楽器になったかのように演奏。パフォーマンスが終わり、観客からの万雷の拍手のなか、オーケストラが起立。フルート男は喜色満面の笑みで大はしゃぎしている。まるで彼自身がGOTYを受賞したかのような、見ているこちらまで嬉しくなる喜びようである。
「フルート男」の際立ったキャラクター性は、TGA に注目していた多くの視聴者たちの心を掴んだようだ。海外SNS上ではフルート男の演奏についてユーザーらが称賛の声を寄せている。たとえば「今年の TGA はフルート男が一番よかった」「フルート男にアワードをやってくれ」といったコメントが見られる。また、前述のTGA公式YouTubeチャンネルによる演奏動画でも、上位コメントの大半がフルート男に言及。さらには、GamesRadar+など複数海外メディアがフルート男について報じるに至った。フルート男は、本年TGAのスターとなったわけだ。
そして注目が集まったことで、フルート男の“正体”も広く知れ渡ることとなった。フルート男の名は、Pedro Eustache。ベテランのフルート奏者である。Eustache氏は、「パイレーツ・オブ・カリビアン」や「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」といった映画の楽曲にも携わった実積をもつ。また同氏は、2017年のTGAなどでもオーケストラ演奏に参加し、情熱的な演奏を見せていた。ベテラン奏者としていつもどおりの情熱的演奏が、今回のTGAでたまたま衆目を集めたわけである。
なお、当のEustache氏も、今回の「フルート男」ブームに気がついたようだ。同氏は本日10日になって、自身のTwitterアカウント上にコメント動画を投稿。ユーザーたちの反響に、心の底から感謝するとメッセージを送っている。こちらは、TGAを手がけるGeoff Keighly氏も「フルート男が喋ったよ!」と反応しつつ取り上げている。
今回はEustache氏がとりわけ脚光を浴びたものの、ほかのオーケストラ演奏者たちも素晴らしい演奏を披露してくれた。今年1年のゲームを振り返る意味で、今一度彼らのGOTYメドレーに耳を傾けてみてほしい。そして、来年にはどのような“GOTYの音色”が奏でられるのか、楽しみにしたい。